ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第二部⑲話「森へ……」 天気の良い日だった。
森の木々をそよ風が揺らし、若葉は陽光に透けて金緑に輝いている。朝露をのせた木苺はまるで宝石のように美しい。下生えには春の花々が咲き乱れ、美しい蝶や陽気な蜂が飛び回っていた。
ピクニック日和だな、とディアヴァルは思った。これから起きることを考えると、それはとても皮肉なことに感じた。
彼は森の木々を飛び移りながら、地上を歩く二人の人間を観察していた。
森の中を楽しげに歩いてゆく少女は、簡素な遊び着を着たスノーホワイト姫だ。その後ろからハントマンがついて行く。姫の楽しそうな様子と裏腹に、ハントマンの表情は暗く翳っている。きっと、心の中ではこれからやらねばならないことを思い浮かべているのだろう。
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