はくはくとくりかえし。 慣れというのは恐ろしいもので、何かがずっと飲みこみ切れない感覚も、胸が重く詰まった時に飲む頓服も、もう当たり前になってしまった。「死ぬな」という呪いの言葉が頭の中を支配するのも、今ではただの日常で。全てがモーニングルーティンよろしく己をぐるりと塗りつぶしている。このまま全て、当たり前になってしまうのだろうか。まだ軟化しない罪悪感の棘のような痛みも、いつかは痛くなくなるのだろうか。なくなって、しまうのだろうか。いつもと同じ帰路を歩きながら、君待はぼんやりと考える。
君待は常に恐れていた。当人は恐れを言語化できず、ただ傷のように痛むだけだったが、恐れは瘡蓋を作ってはくれないし、いつまでも深くて熱い。自分は一体、何に痛みを感じているんだっけ。広すぎる傷口の痛みは、確かな出所を曖昧にした。
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