独白 フリント式ライターのヤスリが擦れて火がともる。君待はタバコを咥えたままぼんやりとそれを見ていた。喫煙所は君待以外に誰もおらず、気の抜けた溜息を漏らしても気にかけられる面倒がない。
最近、ぼんやりすることが増えたように思う。あの事件が終わってから魘されてばかりで眠りが浅い。いやに器用な性格のせいで、課の人間に悟られる程の支障はないのだが。
「零課の奴らだったら、バレてるなぁ」
呟きに揺れるタバコにようやく火をつける。吸う本数も以前より増えた。こういう変化に霜原は気付くだろうし(そのくせ何も言ってこないだろうが)禁煙中の国木田は顔をくしゃっと歪めるかもしれない。宗像はやけに察しが良いから、一番に言及してくるかもしれない。そこまで考えて自嘲したところで、喫煙所に上司が入ってきた。
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