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    るいち

    @rui_60

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    るいち

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    花吐き病の🐹の杏こは

    エピソード事に分けて長めのお話書こうとしてたやつ。終わらなそうなのでここに投げます
    冒頭かなりギクシャクしてます…

    誰かに続き頼みたいです((

    #プロセカ
    puroseka
    #杏こは
    ankoha

    無題*プロローグ*


    「実は今日、告白されたんだ」

    え、と零れた声は静かな図書室の空気にあっという間に呑み込まれて行った。
    ずっと彼女の声が耳に入りながらも動き続けていた筆は、この一言でいとも簡単に止まってしまい、そのままゆっくりと彼女の方を振り向く。目の前にあるのは少し悲しそうに見つめる蜂蜜色の瞳。それが窓から差し込む光をゆらゆらと反射しながら、ただ、私のことを見つめていた。

    意味が分からずに、さっき聞いた言葉を頭の中で何度も往復する。告白されたんだ、その意味を咀嚼するように何度も繰り返すと、次第に私の眉間にシワがより始めた。

    「告、白?」

    「そうなんだ、同じクラスの男の子。そんなに仲良いとか思ってなかったんだけどなぁ」

    そのまま少しつまらなそうに視線を逸らし、指の先で髪の毛をクルクルと弄り始める。
    私はそれに促されるように、その綺麗にウェーブのかかった髪の毛を眺めてしまっていた。
    緩やかなうねりは乱れることなく揃っており、艶ハリのある黒髪は下にいくにつれて深い藍色へ変わっている。そして髪の毛のあちらこちらに散りばめられた星の宝石は、彼女の髪の毛をまるで宇宙のように煌めかせていた。

    「そうなの?でもすごいよ。告白されるなんて」

    「そうかもしれないけど、そんな急に好きですと言われても反応に困っちゃうよ」

    「そうかもね」

    苦しくなる胸をそっと撫でて、なんとか心を落ち着けようと試みるも、早く鳴る鼓動はそう簡単に鎮まることはなかった。

    杏ちゃんはおかしい。
    好きと言われて困ってしまう?どうして。
    いつも貴方の口から出てくる好きをたくさん受け取っている私はどうなってしまうのだろう。

    「まあ…」

    好きという言葉に勝手に反応してしまう心が。彼女と出会った頃は何ともなかったのに、大好きなんて言葉を与えられても、平然と笑顔で受け取ることができていたはずだったのに。

    私の"好き"はいつからか違うものになっていた。

    「もちろん、フッたんだけどね」

    「……え、いいの?」

    「うん。私その子に興味なんてなかったし、それに」

    それにー、と、突然言葉を詰まらせ視線を泳がせる。上手く言葉が出てこないのか、口を抑えながら喉の奥で唸っている彼女が妙に面白く映ってしまい、思わず笑いが零れてしまった。

    「おかしいの、杏ちゃん。何か言いづらいことでもあるの?」

    「い、いいやー。別に、今は恋愛より勉強しないとだなとか、思っちゃったりして!」

    決まったと言わんばかりに、得意げな表情を浮かべる。本当に何を言い淀んでいたかまでは分からなかったが、どうやら彼女なりの良い言い訳が浮かんだようだった。

    それに、彼女の手の下に敷かれたノートに目をやる。
    ずっと気づいていたのだが、彼女は腕で上手い具合にノートの一部を見えないように隠していた。
    そのノートに手を伸ばし引っ張り上げようとすると、彼女は「あっ」だの「だめっ」と声をだし、必死に抵抗しようとする。

    その手をギュッと掴み、ノートを取り上げた。

    何が描いてあるのかなと、じっくりページの隅々まで目を走らせる。
    そこに描いてあったのは。

    「これ…私?」

    「う、うん。そう、こはね」

    まん丸な顔をして、これは頬を膨らませているのだろうか。小さな体に、小さな手脚、それにいつも被っている帽子から突き破って飛び出ていたものは。

    「耳?」

    「そう、耳生えてるの。かわいいでしょ?」

    こはねってハムスターみたいだからといい、しれっと私の手からノートを奪った。

    隅っこに描かれたのは、私によく似たハムスター。それ以外にあったものは、書きかけの数式と白い空間だけだった。
    私が勉強している時にボーッと外を見つめて、ずっと何を考えていたのか想像できないが、少なくとも来週に待ち構えている期末テストの事など彼女にとっては努力の対象にすらなっていないようだ。

    それとも、また別に、考え事をしていたか。

    嫌な感覚が脳内を埋めつくそうとする。鈍痛が胸に響く。
    私は徐に口を開いた。

    「杏ちゃんは、もしかして後悔してるんじゃないの」

    「へ?」

    素っ頓狂な声をだし、体を揺らす。

    「だからせっかく告白されたのに、それを、断るのは」

    「ああ、それね、全然気にしてないよ。私が言いたいように言ったらね、直ぐに帰ったから」

    当たり前だと言うように返し、まるで気を使うようにこちらの顔を覗きこまれた。
    視界に入る彼女の顔に、またも心臓が跳ね上がると同時に、笑顔を取り繕う。

    彼女は平然な顔をしているのに、私の方がずっと焦っていた。
    いつだって私より前を歩き、太陽のように私のことを照らしていてくれていた彼女に少しの陰りが生まれてしまったような気がする。
    彼女の周りにはたくさんの人がいる、その活躍を、実力を賞賛し、応援する人がいる。
    それはもちろん、私以外にも彼女が好きな人はたくさんいた。

    私はその中の一人。

    たった一人なんだって、その時気づいた。

    「……?こはね」

    重たくなった頭を垂らしながら、椅子を後ろに引くと鈍い音が図書室に響き渡る。
    「ごめん、ちょっとお手洗い行ってくるね」とか細い声で告げると、彼女の声も聞かないままその場を離れてしまった。

    最低なことをした。
    それには気づいていたけど、それ以上に胸からせり上がる異物が今にも飛び出してしまいそうだったから。

    「……ぅ、……っ、!…」

    洗面所からは水の流れる音が途切れることなく続いている。
    手を洗面台に置きながら、だらしなく口を開閉すると、喉の奥からはただ苦しい息が吐かれるだけ。それに早く楽になろうと喉の奥に指を入れ込む。
    しかしそれでも嗚咽だけが漏れてしまい、どうしようもない吐き気に涙だけが溢れていた。

    私の好きが途方も無く彷徨う。
    まるで彼女を見失ったかのように焦燥感に支配されてゆく。
    分かっていたはずなのに、彼女が他人の海に呑み込まれた時、私声って届くのかな。

    彼女にとって私はどんな存在だったっけ。

    「あれ?」

    固く閉ざしていた目を開くと、ふわりと、香が舞った。

    「アスター、どこから入ってきたんだろう」

    花弁を指で摘んで立ちがると、風が吹き辺りを通り抜けた。洗面台を見ると幾つかの花が転がり落ちていて、どれも桃色のアスター。
    流れっぱなしにしていた水を閉めると、そこでふと、あることに気づく。

    (もう全然、苦しくない)

    思い詰めていた悩みも、胸を締め付けていた違和感も、ほんの一瞬の間に消えて無くなっている。
    不思議に感じながも、苦しみから開放されたことを特に疑問に思うことはなかった。

    しかし入ってくる時になかったはずの花は、まるで現実のものとでも言うように、消えることなく辺りに散らばっていた。




    *EP.1 金平糖の夢*

    ──

    いつからここにいたんだっけ。
    違う、私はずっと此処にいたんだ。

    太陽もない真っ暗な世界の筈なのに、窓の外から漏れる月明かりは、視界が効く程度に辺りを照らしてくれていた。
    でも月の光は太陽の光を反射しているものらしい。月自体は光らなくても、太陽の光があればこんなに綺麗に輝く。

    「こはね、こっち見て」

    窓の外から見える世界は星空、と形容していいのか悩むくらいに星が近い。

    ここはさっき居た図書室のはずなのに、今は誰も居ない、目の前の彼女以外は。
    外だってもっとたくさんのビル群に囲まれていて、空なんてこれっぽっちしか、見えなかった筈なのに。

    数多の金平糖のような星に、怖いくらいに近づいた惑星。見たことないくらいに綺麗な尾を引いたほうき星が私の目の前まで迫り、横を駆け抜けて行った。

    それに驚き、ずっと握られていた手に力を込める。すると、それに嬉しそうに指先を絡め、頭の上から笑い声が聞こえた。

    「こっち見て」

    燦然と輝く幾つもの星明かり、その中から大きく光る二つの明かりを見つけた。
    それは他の星ではなく、ただ私のことを捉えている。

    「杏ちゃん?」

    「やっと見てくれた」

    じっと、大きな双眸は他でもない私だけを見てくれている。

    「杏ちゃん…私」

    「うん?」

    「ずっとこうしていたかったんだ。好きな人に見つめられたり、こうやって手握ってくれたり」

    恥ずかしくなって手から汗が滲んでくるが、彼女はお構い無しに手を握る。愛おしそうに私の手を撫でて、そのままゆっくり唇を動かす。

    好きだよ、と呟いた瞬間、私の唇に触れるか触れないかくらいのキスが落とされた。
    それに驚いて私はその唇に指先をなぞらせる。
    甘いリップを、何度も何度も頭の中で再生する。

    そうだ、私はこれが欲しかったんだ。
    乙女心をときめかせ、目の前の彼女に近寄ると、周りの星々も私の心に共鳴するように輝いた。
    クルクルと、二人の世界を中心に星々が廻り、きれいな公道を描く。

    「ねえ、もっと欲しい」

    「そんなに?」

    「うん。折角二人だけの世界なんだから」

    すると、ぴったりと口先が密着した。
    あまりの顔の近さに、反射的に後ずさりしてしまうも、後ろに回された手は私のことを逃がさんとばかりに近づけようとする。
    少し唇が離れ息を整えた後、すぐさま口を塞がれ、その柔らかさを堪能するように口先を動かし食む。

    「ふ……、ん、ん……」

    そのままなされるがままに身を預けると、いつの間にか背中に何かがぶつかった。本棚まで攻めより、ぐいと、体を近づけると彼女の髪の毛が首元にかかる。
    近い、近いと思いつつ薄く目を開くと、ぱっちり、視線が交わる。
    どうやら彼女はキスしてる間もずっと目を開いているようで、固く目を瞑った私を鼻で笑ったのが聞こえた。

    楽しくなってきたのか、更に私に攻めより、胸と脚が擦れ合うのが分かる。

    「ん……っ」

    すり、と柔らかい太腿のが私の股下に入れこまれると、そのまま上下に動き始めた。何も生えていない薄い内ももを、彼女の太ももは慣れた脚付きで、確実に擦り上げていく。
    それにむず痒くなり、脚に力が入らなくなってしまうと、少しずつ体制が崩れてしまう。

    「はぁ、杏ちゃ」

    「……!こはね、大丈夫」

    ゆっくり沈む腰が、彼女の膝で受け止められる。太ももに触れる彼女の熱が私のところへ伝わり、下腹部が熱を持ちながら蕩け始めた。
    恐る恐る手を伸ばすと、彼女は首を傾けて、手のひらに頬擦りする。辺りを旋回する星が、美しく彼女の表情を照らし、頬を赤く染めた。

    もっと近くで見ていたい、彼女を隣に感じたい、二人だけの世界は永遠に続いていればいい。

    周りの星(ひと)なんて目にも留めないで、私だけに夢中になってくれたらいいのに。

    ──!

    すると突然、頭の中で音が反響し、驚いたまま彼女から体を離した。
    手に残る熱を握りしめたまま、まだこの世界に溺れていたいと願うが、頭に響く声は徐々に鮮明になっていくのを感じた。
    これは、誰。誰かが私を呼んでいる。

    「──!」

    視界の中心から溢れ出した白に眩惑され、私達の世界はあっという間に光に包まれていった。

    ✩★☆

    「こはねちゃん」

    微睡みの世界から引きずり出してくれた声は、聞き馴染みのあるあの子の声。頭を上げるといつもの可愛らしく跳ねた髪の毛が視界に入った。
    彼女が頭を傾けるとまるでうさぎの耳のように毛先が可愛らしく揺らぐ。

    「どうしたの?もう授業終わってるよ」

    「え」

    状況をうまく理解出来ないまま、教室にかかる時計を見る。授業終わりの鐘はとっくに鳴り終わり、周りの生徒たちはあっという間にノートを片付け、友達との会話に花を咲かせていた。
    ふと、先程見ていた世界を思い出し、窓の外を見つめる。
    そこにはいつも通り、青い空を覆い隠すように並ぶ建物、濃く葉を色めかせた木々が風に揺れながら繁茂していた。同時に脳内に反響するのは夏の煩い蝉の声。

    「もう、そんな時間なの?」

    「うん。授業も終わったのに、こはねちゃん、ずっとペンを握りしめたまま起きないからどうしようかと思ったよ」

    そう言われて右手を見ると、無意識のうちにペンを握り続けていたようだった。いつから記憶がないのか覚えていないが、どうやら授業中に惰眠をしてしまっていたらしい。

    「私、なんで寝ちゃってたんだろう」

    それに、あんな夢、学校で見ていたなんて恥ずかしくて誰にも知られたくない。
    そう思うと、自然と頬が紅潮し始める。

    「……!」

    「あれ!どうしたの、頬赤くなってるよ。もしかして熱?具合悪いの」

    「あ、いや、そういう訳じゃ…」

    こういう時、どうやって顔を隠せばいいんだろう。
    なんとか相手の話を逸らそうと、クルクル思考を巡らせる。
    すると突拍子もなく腹の虫が鳴いてしまい、あまりの恥ずかしさに脳がショート寸前までいってしまった。
    あ、あ、と情けない声を漏らす私に、彼女はやさしく微笑みかける。

    「お昼だし、ご飯食べよっか」

    「う……うん」

    彼女が席を外した瞬間、大きなため息をついた。
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