いつか届く 「お手紙です」
使用人から手渡された時、シリルは義父からだと思った、先日の学園祭に足を運んでいただいたお礼を手紙にしたためて送ったばかりである。
その返事にしては少し早いなとは思ったが特に考えもなく「ありがとう」とだけ口にして受け取る。
だが、封筒は見慣れたハイオーンの紋章入りのものではなく、紙質もありふれた、街の雑貨屋で買えるような安価なものであった。
「?」
怪訝に思い、宛名に目をやったシリルの身体はそのままピシリと固まった。
シリルへ
丁寧だが小さくて頼りなげなその文字は確かに母のものであった。
机に向かい、ゆっくりと椅子に腰を下ろし、大きく息を吸い込んで静かに吐き、細かく震える指で慎重に封を開ける。
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