はっきり言って、不快だった。
変に馴れ馴れしいし距離が近いしでとにかく鬱陶しい。
「話しかけるな」
そう言ったのに図々しく詰め寄る。煩い声で煽り散らかしてるくせにツノが丸出しなのは本当に馬鹿だと思った。
本当に馬鹿だ、そう心で蔑んだ。
俺は親父を殺すことだけを考えて生きてきた。あの時、俺の人生からすべてを奪った男。俺の人生をひっくり返した男。許せなかった。なぜ、鬼というだけで母と姉は殺されなければならなかったのか。アイツに人の心なんてなかった。本当の鬼は、アイツだ。
アイツを殺す。殺された母と姉の雪辱を晴らす。そのために俺は強くなる。
羅刹に入ったのは強くなるための過程でしかない。一刻も早く俺は戦場に出てアイツを殺す必要があった。だから隣で喚く馬鹿が煩わしくて仕方なかった。どうせこんなやつは大した理由もなくここに立っているのだろう。だから四季が言った目的をくだらないと罵った。
1911