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    深山蒼

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    深山蒼

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    『I need you. -交わる夏-』の備忘録
    いつものやつ、今回の内容のネタバレあり、読まなくても問題なし

    季節のからいち3作目の夏の話です。
    季節のからいちは当初、実際の季節に沿って公開または本の頒布をしたい!という動機で始めたのですが、今回はめちゃくちゃ遅れて秋になってしまいました…。
    7月の魂伝が期待以上に大好きなやつで最高になってしまいしばらく原稿をお休みしてたのと、8月は8月で本が間に合わないのにイベントには申し込んでいたのでバタバタしていたのと、9月は9月でいろいろあって…と、振り返ると自分に必要な時間だったのでしょうがなかったです!すみませんでした!
    あと自分は締切だからってガッと急いで頑張っていいものが生み出せるタイプではないので…(内容にもよりますが)、今回はしっかり描きたい背景も多かったのでじっくりやりたい気持ちでした。


    ■表紙
    表紙の絵の下書きは春の原稿の最中か終わってすぐぐらいに浮かんで描いた記憶があります。この絵のイメージは1回でバチッと決まったので、その後特に変更なく採用しました。一応表紙詐欺じゃない中身になっているかと思います。
    表紙の色味は、冬は青、春は桃と来て、夏は黄か緑がいいなと思っていて、秋は橙か黄がいいなと思ったので、4色の取り合わせを考えたときに夏は緑がバランスいいかな…となんとなく考えながら夏のプロットを眺めていたときに、あるシーンと緑がバチっとリンクして、その瞬間にこの表紙は絶対緑だ!!!という絶対的な確信を得ました。その結果が裏表紙です。自分の中のフィーリングに理屈が当てはまったときにこれだ!となりますし、そういう決め方が好きです。あるシーンについては後述で詳しく書きます。
    黄なら眩しい夏の光の印象だったのですが、緑と裏表紙の印象からじっとり暑い夏のイメージでいこうと思い暗めの色味にしました。起承転結の転にあたる話なので、冬春のほわほわ優しい印象からちょっと流れ変わったな?という風にもしたかったです。
    印刷もいい感じのグラデーションと深い緑になっていてよかったです!頬の赤みがしっかり出ていて、冬の表紙は寒さで、夏の表紙は暑さでふたりが赤くなってるのがちゃんとわかるような仕上がりでとても満足です…!
    冬春夏を並べるとカラフルでとっても満足度が高いです…!今年の初めに思い描いたことが叶えられてどんどん完成形に近づいていてわくわくします!


    ■遊び紙
    印刷所で選べる緑の遊び紙が「もえぎ」「若草」で、若草の資料は手元にあったのですがもえぎの色がわからず…資料写真をモニターで見ると全然色が違うのであてにならないんですよね…(実際若草が写真だと実物より色なさすぎだったので)。でもどうやらもえぎは黄よりの緑っぽかったので、表紙の黄~緑の色合いに丁度いいなと信じてもえぎにしました。
    本が届いて実物を見ると思ったより黄が強い緑でしたが、四季の遊び紙4色を並べたときに、緑はこのぐらい黄が強いほうがバランスがいいなと思ったのでよかったです!(冬春夏の遊び紙を並べると3色で既に可愛くて最高になってます)
    表紙は暗かったので、遊び紙で夏の光を感じられて良き…!


    ■ネーム
    これまではプロットからすぐに下書きとコマ割りをデジタル原稿のキャンバス上でやっていたのですが、これがあまりに苦しくやりづらさを感じていたので、今回初めてネームの工程を取り入れる試みをしました。
    ネーム自体は過去に何度かチャレンジしていたのですが、どうやればいいのかいまいちピンと来なくて上手くいっていませんでした。ですが、やりづれ~~~~~と思いながら漫画を描き続けるうち、やりづらさの原因が
    ①絵の出力とコマ割りを同時にやること
    ②キャンバス内で絵の出力をやるのが狭苦しい
    だということに薄々気づき始めたのです。

    そこで、ネームは原稿のキャンバスからは完全に離れて、紙と鉛筆を用意してやることにしました。自分が絵を出力するときには自由に描ける広めのスペースが必要だと思ったので、紙はA4のコピー用紙。絵を小さく収めなきゃという意識を排除するためにページごとに区切ったり描く場所を決めずに、プロットを見ながら浮かぶ絵やプロットを書いた時点で描くつもりでいた絵を、大きさなどを気にせず好きな場所にひたすら描く。という風にやるとあら不思議!あれだけ苦しかった絵の出力がするするとできてめちゃくちゃ楽しい!
    のってくると漫画内ではこんな風に見せたいというイメージも自然に湧いてきたので、漫画のページに見立てた小さい長方形を端っこに書いて、出力した絵を何処にどう収めるかを考えてみたらこれも楽しい。コマ割りの方はほとんどシルエットだけでざっくりと紙面のバランスを見る感じで描くので手間も感じなくて楽でした。

    漫画の内容には関係ないのですが、今回の一番の収穫はネームができるようになったことです。コマ割り下書きがかなりしんどい作業だったので、ほんと~~~に漫画を描くのが楽しくなり個人的にはかなり革命的でした。
    ちなみに今回の原稿、途中まではいつも通りに描いていて、「ここがつむじ」のシーンからネームの工程を取り入れ始めています。


    ■タイトル
    今回の『交わる夏』の“交わる”は、
    体温が交わる
    思いが交わる
    身体が交わる
    あたりのニュアンスでした。
    体温は、春の時点では四男が言及していた部分で、今回次男からの答え合わせがありました。
    それに伴い、思い、そして身体…という風に、『I nee you.』シリーズ全体のテーマである「気づかないうちに自分たちの立っている場所から少しずつずれていくふたり」がグラデーションのように描けていたらいいなと思います。触れて体温が交わる度に境界が曖昧になっていくふたりです。それは個と個であるふたりの間の境界であり、兄弟の関係と一線を越えた関係の間にある境界…
    既刊『泡沫失恋会議』では「なし崩しは嫌なんだ」と次男は言っていましたが、今回は割となし崩す世界線の次男です。あんな次男やこんな次男も好き…と、私の解釈(好み×見解)がひとつじゃないので何通りも描きたくなり、結果、ノーマルからいちだけで馴れ初めを何回も描いてしまう…。


    ■本文
    夏の話だから絵でも夏感を出したい…ということで、あんまりわからないかもしれないですが日光のあるシーンの影を冬春よりも濃く描きました。(これ気づいてもらえてめっちゃ嬉しかったです!) あとは昼間のシーンでも黒を多めに、春よりふわっとしない感じで…。
    本文の印刷も今回が一番上手くいった気がします。今見た限りでは特にモアレなどのミスもなく…!嬉しい!今回は全ページ試し刷りをちゃんとやって、そのときに細かいミスを発見伝できたのがよかったです。やっぱり試し刷りは…やろう!

    中身については、前回までに比べてふたりの身体の接触が増えています。服の上からではなく肌に直接触れるような…触って相手の形を教えてあげるのってめちゃくちゃえっちじゃないですか?
    あと、四男が外に出るシーンでは背景をしっかり描きたいと思っていたので頑張りました。次男と四男にゆかりのあるコインランドリーと宝くじ公園。
    元々は奥付までで終わる予定だったのですが、さすがにここで終わるのはだめな気がする…!のと、次の秋の話で急にえちえちしくなってしまうな…と思ったのでちょっとだけえっちめなキスシーンを追加しました。奥付ってアニメでいうところのエンディングっぽい位置づけだと思ってるので、奥付のあとに漫画を続けるとCパートっぽい演出になるのが好きです!

    春の話で次男に「ハグは合法(意訳)」と言ってもらえた四男でしたが、そもそも四男は合法か違法かという以前に、次男に対して必要だと強請るよりも与える方向で愛情表現がしたいと思っている、というのが今回の話の四男目線の本筋でした。(1ページ目)
    ヒピポのあれを見たとき、四男って愛情表現のときには相手が気に入りそうなものを贈りたいんだなぁと思って…同じ花でも花束じゃなくてあの子に似せた花冠にする、そういうところが好きです。次男なら自分がいいと思うもの=薔薇の花を贈りそうだなって思います。

    で、そんな“与えたい”四男がどうして“必要”だと言ってこの物語を始めてしまったのか…については冬にも一瞬描写がありましたが、今回さらに詳しい理由が描かれています。
    四男は自分の手では幸せにできると思っていないから、猫でも次男でも大事なものを手に入れたいと簡単には思えないし、誰のものにもならない相手を傍で見ていられたらそれで満足だったのですが、次男がフラワーのものになった実感を持った瞬間に初めて「無理だ」と思ってしまったのです。それは好きな人であると同時に、兄である次男も同時に失いかねないという危機感も重なったんだと思います。四男にとって(自分の日常からの)家族の喪失は、失恋よりも一大事だったのではないかと思います。兄弟の関係に留まっていれば許されるという免罪符に依存していた四男なら尚更…。

    とはいえ四男は次男にグイグイ来られると咄嗟にストップをかけたり、与える愛がいいことを思い出して次男の「撫でてほしい」を実行したりしましたが、次男の欲求が「…いいか?」に移った時点で、次男の欲求とブレーキを踏んでいた四男の欲求が交わってしまいました。
    次男が欲しがってくれるなら、差し出さない選択肢が四男にはないのです。


    以下、細かい好きポイントなど…


    ・ちょうど漫画を描き始めた頃に魂伝の予告カットが上がっていて、例のクセつよ寝癖を取り入れたい!と思って描きました。あまりに誇張するとギャグ成分が強くなるので次男の寝癖はほどほどに… 映画は公開前だったので、寝癖を取り入れるにあたり、先行上映組に「あの寝癖に深い意味や経緯があるのかどうか」をお尋ねしたりしました。その節はありがとうございました。

    ・「必要なかったな」のコマは、部屋や影を暗くして夏の日光が強いように見せたかったシーンです。

    ・「なんでもするって言ったら何してほしい?」は冬の話からの引用。

    ・自販機の飲み物ラインナップ、右のふたつは対価が足りなくて押せないし押してはいけないと思っている欲求。【キスして】【セックス】です。ギリギリ読めるか読めないかぐらいで文字を隠したので、言い当ててくださった方がいて嬉しかったです。

    ・「ゴミ入れてるだけ」のコイン投入口に入ってる小物は、猫じゃらし、葉っぱ、煮干し、枝、四男が折った折り紙のねこちゃん。

    ・「形を教えてあげる」って輪郭を触るのってめっちゃえっちじゃないですか?

    ・次男は四男に「必要」とされて以来四男と一緒にいることが増えたので、ねこちゃんのゴロゴロの意味を知っています。

    ・「生首だぞ」「いいよ生首で」の会話が好きです。そこだけ聞くと意味の分からない、ふたりだけに通じる会話、みたいなもの。
    溶けてる四男に「形を教えてあげる」と言ってまだ頭と顔しか触ってないから、ここで終わったら生首になっちゃうぞ、ということなんですが、それってつまり全身触る気で…

    ・「くちびる」えっちすぎませんか?
    形を教える目的とはいえ唇を触れる相手って結構アレだと思うんですが、そのことに気づいてない二人です。

    ・今回むつごちゃんを全員描けたのが嬉しかったです。
    四男は五男に次男への気持ちについては話してないのですが、野生の勘が働く五男っていいですよね。

    ・松野家頑張って描きました…!!!!

    ・準備号の時点ではセミの鳴き声を『ジワジワ』と書いてたんですが、なんと関東ではミンミンゼミが圧倒的優勢らしいという重要な情報を教えて頂いたので慌ててミンミンに変更しました…!!!こっちではジワジワが圧倒的多数なので、ミンミンは「蝉の鳴き声といえば…」で形骸化してるだけなんだと思っていました。危なかったです。その節はありがとうございました、大変助かりました。

    ・コインランドリー頑張りました…!!!

    ・宝くじ公園と橋も頑張りました…!!!!

    ・四男が橋の上で鯉を見てるシーン、とてもお気に入りです。
    ここが裏表紙と表紙の緑の答え合わせになります。このシーンはプロット時点で絶対印象的なシーンとして入れたいと思っていたので、いい感じに仕上がって嬉しかったです。
    鯉が群がって餌を求めている姿に自分の姿を重ねてる四男です。ベタですが、鯉=恋で。あと蝉の鳴き声も求愛…。

    ・四男が寝てる次男を見つめるのとお布団をかけてあげるやつが大好物なので、過去に何回も描いてますがまた描きました。
    そのとき大抵次男は起きている。

    ・「教えて?オレの形」えっちすぎませんか?

    ・次男が何の気なしに言った「猫撫でるみたいにしてほしい」で、四男は自分がどんな風に次男を愛したかったのかを思い出します。
    四男は次男を正しく(※四男比)愛したい気持ちと、理屈抜きで次男に触れたくて触れられたい欲求の狭間で結構ゆらゆらしてます。それこそ冬の段階では束の間一緒にいてくれるだけで幸せだったし満足できていたけど、身体が触れる度に蓋をしたい欲求が湧き上がってきていて、またフラワーのときのように急に誰かのものになってしまう恐れも抱いていて…だけど自分のものだと首輪をつけることはできない。

    ・カラ松ねこちゃんが可愛く描けて嬉しい。
    首輪は遠くに置いて、ただ抱きしめるだけの愛し方ができればいい四男。
    『手の届く範囲の幸福』は、次男が家族として兄として毎日自分の隣で眠ってくれる幸福です。

    ・四男の手がひんやり、次男の手がぽかぽかなのは春の話から続いています。
    「混ざり合って同じ温度になる」も、春の話で四男が同じように思っていました。思いが交わる。

    ・「…毎日、好きなんだ」
    次男、非常に曖昧な言い方をしていてずるいな!のシーンです。
    毎日「必要」の意味で手を握るその行為が好きなのか、それとも…というのは、四男の「猫みたいに、撫でる」のあとの次男の表情が答えです。
    四男にできるのは、次男が「してほしい」と言ったことだけ。それが自分にできる唯一の愛情表現だと思っているから。

    ・抱きしめるシーンから「…いいか?」のシーン、全部最高にしたくて頑張りました。

    ・「…いいか?」ってえっちすぎませんか?めちゃくちゃ好きです。
    次男は、春の話のラストの四男の「兄弟でハグはおかしい」という発言を受けて、これは曖昧にしておかないといけないやつだと悟っています。だからずっと肝心なことを言わないのです。

    ・「わからなくなる」で終わる予定でしたが、もう少し余韻がほしいと思ってモノローグを入れました。いい感じの長さとリズムで過不足なく伝わる表現をいろいろ考えました。
    「同じときに自分と同じ幸せを感じてくれていたらいいのに」と願うことは、「あなたのことが好き」と同義だと思うのです。

    ・四男がめっちゃ上向いてキスに応えてるの可愛い…餌を与えられてる雛鳥みたいで。四男にとっては餌を貪る鯉かもしれないけど。

    ・もうキスマーク残してる次男。えっち。

    ・電気屋のエアコンや扇風機で涼んでいた4人の帰宅。追い出されたらしいです。
    まさかのここで表紙絵回収です。

    ・↓↓は……わかるな?
    涼しいところも……わかるな?

    ・ここで終わるのも大概アレなのではと思わなくもないですが!
    奥付前で終わるよりも秋へのつながりがスムーズになったのでよかったかなと思います!

    秋の話は遂にR18です!!!!!まだプロットのみでネームもこれからですが、いい感じに描けたらいいな~…!と思います。(11/4現在は下書きやってます。)プロットではめっちゃえっち~だと思っているのでなるべくえっちに描けるように頑張ります。
    ここまで読んでくださった方ありがとうございます!
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