ㅤこぽこぽと。青と赤の泡沫が私を呼んでいる。
ㅤ最近不思議な夢を見る。頭が時計の私のいったいどの部分で夢を見ているのだろうという疑問はあったが。
ㅤ夢見るそこは淡く煌めく海の底。温度を感じない海水に全身を浸しながら、私は大きな影に包まれている。鏡ダンジョンや鏡鉄道で邂逅する首の無い魚(いやあれは魚なんだろうか、手指とか、腹部の袋の中の何かとか。幻想体に普通の道理を期待するのは無駄なんだろうけど)、断首魚と呼ばれている生き物が、私を大きな手でそうっと掬い上げ、頬擦りでもするように生々しい断面を寄せてくる。人間に愛玩される小動物はこんな気持ちなんだろうか。
ㅤ夢に見る魚の大きさは一定しない。私より少し大きいくらいの体長なこともあれば、私を掌で包んでしまえるくらい巨大なこともある。しかし大きさがどうであれ、それは何故か私に対し敵意を向けることはない。比較的小さい時には全身でうりうりと懐かれ、今見ている夢のように巨大な時には大事そうに抱えられる。今までまみえてきた経験からすると、囚人たちをそうしてきたように私なんてぺちゃんこにされそうなものなんだけど。
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