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    おわり

    @owari33_fin

    アズリドとフロリドをぶつけてバチらせて、三人の感情をぐちゃぐちゃにして泣かせたい

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    ミーティア3️⃣ Az-17 『洗礼』

     家の二階、子供部屋と僕の書斎の内装や家具を選び終え、次はリドルと僕の寝室だ。リドルと寝室が別だと、夫婦なのにと疑われるかもしれない。だから、ベッドは二つに分けたとしても、部屋は一緒にすることにした。リドルにはまだ話していないが、流石に理解してくれるだろうと、そう思うことにした。
     壁紙は寝室ということもあって、灰がかった薄紫色にした。ベッドは……リドルと言えば赤だが、壁紙の色に合わせるならグレーが合う。それにあのビルの中、リドルの部屋のベッドシーツは真っ白だった。ハーツラビュルのあの色に特別リドルがこだわっていないのなら、僕の好きにしてしまってもいいだろう。ただ、天蓋はいるだろうか? と、そこは考えてしまう。
     もし、もしもだ。この先リドルが僕に身体を許してくれるような展開になった時、もし何かの手違いで子供たちに見られるようなことがあったら、リドルは絶対に一生僕に身体を許してくれない気がする。そう思ってしまうほど、リドルの子供たちの溺愛っぷりは、その目に入れても痛くないほどに甘々だった。
     その事を考えながら、いつものカフェでコーヒーを飲んでいると、珍しくラギーさん一人で店を訪れた。
    「アズールくん、やっぱここだと思ったんすよ〜」
     王宮務めでこの国の第二王子の侍従として働いて長いのに、未だこうやって砕けた喋り方をするラギーさんが、ニコニコ笑いながらやってきて、目の前のソファーに座り手早く砕いたナッツの掛かったチョコレートドーナツとカフェオレを店員に注文する。
    「今日はお休みですか?」
    「いやいや、今日も普通に仕事中だったんすけど、ここに来たらちょ〜〜っとばかし休憩していかないと損でしょ?」
     シシシと笑うラギーさんは、さっそく目の前に置かれたドーナツに向かって「いたっだきまーす!」と手を合わせてかじりつき、ものの数秒で食べ終えると足りなかったのか追加でドーナツを頼んだ。こうやって、体系を気にせず食べれるなんて、羨ましくて気持ちが萎えた。こちらは、リドルや子供たちとの再会が近づくにつれ、体型維持に必死だというのに。
     眉間に自然と皺が寄っていると、ラギーさんが「そうそう、アズールくん。新しい家の住所、レオナさんが確認してこいって」と思い出したように、チョコレートの付いた指をペロリと舐め、口にする。
    「レオナさんが? 一体どうして住所を?」
    「例の結婚祝いっすよ」
     なるほど、と理解はしたが。一体レオナはどんな結婚祝いを送りつける気なんだろう? 気になってラギーさんに確認したら、「これっすよ」と見せられたのは、大柄な男が三人寝ても大丈夫なサイズのベッドだった。
    「はぁ!? ベッド!??」
     慌てる僕に、ラギーさんがシシシと笑う。
    「良かったっすねぇアズールくん、このサイズなら奥さんとどんなことしても、絶対に落ちたりしないっすよ」
     そりゃ、小柄なリドルと平均的な僕の体格ならこの上で何をしようが〝ナニ〟をしようが落ちたりはしなさそうだが……とそこまで考えて、この三年と少しの間に知ったレオナ直通のスマートフォンの番号に電話をかける。
     一〇コール目、もうすぐ留守番サービスに繋がれそうなタイミングでレオナが電話に出た。
    「よぉ、タコ。どうした?」
    「どうしたじゃないですよ!! あのベッドはなんなんです!!?」
    「あぁ良いベッドだろ? 王家御用達を掲げる店の最高級品だ、あれなら口うるさい坊っちゃんも気にいるだろう? まぁ、後はお前の頑張り次第だろうがな」
     一体、僕の何の頑張り次第だと、この男のこうやって知って人を苛立たせる意地の悪い性格に向けて舌打ちすれば、笑い飛ばすレオナの声が聞こえる。
    「とにかく、あれは熨斗をつけて返品します」と言おうとすれば、「忙しいからもう切るぞ」と、話の途中なのに、無慈悲に電話は切られ、レオナの声が途切れた。
    「シシシ、アズールくん、大人しく受け取るしかないっすよ」
    「そのようですね」
     僕は疲れた顔のまま、スマートフォンをソファーに投げ、背もたれに身を沈めた。


     * * *

     リフォームも全て終了し、家具の配置も全て完了した。リドルたちには、たまたまパーティーで知り合った豪華客船のオーナーに恩を売って出来た繋がりを利用し、この街までのクルーズ旅行とちょっとしたサプライズも用意し、チケットと新居の鍵を渡した。
     僕の方も、思いつく限り全ての仕事の引き継ぎも終わらせ、仲間に送別会を開いてもらい、今度は奥さんと子供の四人で観光に来いよ。そんで、来た時は顔をちらっとでも見せに来いよと、何人にも痛いぐらい背中をバシバシと叩かれ、僕のこれからの未来を激励された。

     そうやって見送られた僕は今、リドルたちと住む家の前、玄関で巨大なクマのヌイグルミを持ちながら、バクバクとうるさい心臓を押さえ、何度も行ったイメージトレーニングを再度やり直す。
     アズール・アーシェングロット、覚悟を決めろ!
     大丈夫。子供たちにプレゼントも買ったし、この後、皆で食べる料理も、人気のあるリストランテでテイクアウトした。きっと皆喜んでくれるはずだ。
     意を決して、インターフォンを押すと。数分も経たない内に、記憶の中のあの中性的なリドルの高い声がスピーカー越しに聞こえた。
     これからが、僕の本当の正念場だ! 絶対に、僕はリドルの望む子供たちの父親になるんだ!!
     そう決意したと同時、ゆっくりと玄関のドアが開いき、そして僕は、子供たちの底なしの体力とテンションの洗礼を受けたのだった。
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