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    おわり

    @owari33_fin

    アズリドとフロリドをぶつけてバチらせて、三人の感情をぐちゃぐちゃにして泣かせたい

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    おわり

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    『それは、終焉という名のミーティア』 リドル視点
    フロリド・アズリド同軸 男性妊娠

    キミは始まりのミーティア 前編(1) 翌日、休日の喧騒とは違う外の騒がしさで目が覚めた。
     あの後、そのまま寝てしまったようで、体の節々が痛む。もう一度寝てしまいたい欲求を振り切って、ボクはどうにか起き上がる事ができた。
     鏡に向かい、マジカルペンを一振りして身だしなみを整え、ボクはハーツラビュルの寮長として、この騒ぎの原因を突き止めにドアの外に出た。
     ハーツラビュル寮は、最上階に一部屋だけある寮長部屋、その下の階に滅多に帰ってこない四年生と三年生の個室。その裏手に別棟として二年生と一年生の部屋がある建物と本館二階の渡り廊下で繋がっている。
     問題が起こっているのは、寮本館一階のエントランスホールだ。
     ボクが部屋を出て廊下を歩いていると、皆がギョッとした顔でボクを見ては、廊下の端に移動した。見世物じゃないぞと眉間にシワを寄せて、一階エントランスホールを見下ろせる階段の踊り場までやってくると、トレイン先生とクルーウェル先生を筆頭に他数名の教師が囲み、皆同じ赤いラインの入った黒い呪いよけローブを纏った集団ともみ合っていた。
    「先生方、何があったんですか? そちらの方々は?」
     ボクがそう声をかけると、明らかに不法侵入をしたであろうの怪しい男たちの目玉が、一斉にボクを見た。
    「ローズハート!? 今すぐ急いで自室に戻りなさい!!」
     トレイン先生の叫ぶ声と共に、先生たちを振り払ったローブの集団は、ボクめがけて一目散に階段を駆け上がった。
     その不気味さに一瞬身体が固まり、初動の防御行動が遅れると、ひときわ背の高い男に口元を押さえられ、背後の壁に押し付けられた。
    「確認しろ……」
     男がそうつぶやくと、他の男がボクの体に向けて、大粒の魔法石が嵌った指輪を付けた手に魔力を込めてかざす。すると身体の中の何かが、ボクの腹の中でグネグネと皮膚の下で動いた。それが呪いでできた擬似子宮だと分かると、とたんに吐き気が込み上げる。
    「ふぐぅ……ッ!!」
     ボコボコと動く腹に気づいた男たちは、ボクの腹部を確認するために強引にシャツをたくし上げ、自分たちの眼前に披露し、おお……! と、男たちから歓喜の声が上がる。
    「なんだこの呪いは……こんなパターンは見たことがない……!!」
     掛けられた魔法の影響で、ボクの身体の中の呪いが光となり皮膚の上に浮かび上がり、男たちはそれを興奮気味にに観察した。ある男はデータを取らなければと、手に持った手帳に呪いの形を書き写し。また別の男は呪いの強さを確認するように、ボクの皮膚を通して自分の魔力を流し込み、反応を見ようとする。浮かび上がった呪いの形に何かを書き足そうとして、失敗した魔力がボクの皮膚の下で爆ぜ、痛みに目の前で火花が散る。
     他人の魔力が体内を掻き混ぜ、血が沸騰しそうなほど暴力的に体の中を掻き回されて、ボクの鼻から血が滴ったり、口元を押さえた男の手にポタポタと赤いシミを作る。
    「血か……これもサンプルに回収しろ」
     試験管にその血をかき集めると一言「少ないな」と男はつぶやき、コートの下から取り出した小型のナイフを取り出し、ボクの皮膚に押し当てた。
     ボクを見る男たちの目は、どう見ても異常だった。このままじっとしていると、怪我なんて生易しいもので済むんだろうか?
    「寮長ッ!」「ローズハート!!」
     焦る寮生の声や、男たちを追い払うために、先生たちが杖を抜き振るう魔法に、ボクを押さえつける男の手が一瞬緩む。その瞬間を見逃さず、ボクは口を覆う男の指を思いきり噛みつき、その指に付いた魔法石を触り詠唱する。
    「[[rb:首を刎ねよ> オフ-ウィズ-ユア-ヘッド]]!!」
     その場にいたローブの集団の首に、ハート型の枷がガシャリと音を立てて嵌る。
     その首の重みと封じられた魔法に、ピタリと動きを止めた男たちはその場に固まって、ボクの【[[rb:首を刎ねよ> オフ-ウィズ-ユア-ヘッド]]】を観察しだした。
     体の中を蠢く魔力から開放されたボクは、壁にもたれかかって手の甲で鼻を拭う。ベッタリと付いた血を見たクルーウェル先生が、咎めるようにハンカチ越しにボクの鼻を押さえた。
    「ローズハート、大丈夫か!?」
     コクリと頷くと、トレイン先生や他の先生方が、フードの男たちからボクを隠す様に立った。男たちは今もボクのユニーク魔法を解析しようとしているが、その中の一人、ボクの口を押さえつけていた男が、その輪から外れて、壁に寄りかかったボクを見た。
    「いやはや……子供のようにはしゃいでしまい申し訳ない。私は、呪石研究機関『anathema』アナテマの所長をしております、ダーハム・グレイソンと申します」
     フードを取り、胸元に手を当てて礼をする男は、薄く青色がかった灰色の、キツくウェーブがかかった前髪を長く垂らし、眼球が白く濁った目をしている。
    「そのグレイソン殿は、何用があって我が校の生徒にこのような振る舞いをするのか? 既にこの場に魔法執行官を呼ばれて当然の事をしていることぐらい、貴殿もおわかりだろう?」
    「そうは言っておいでですが、我が研究機関は貴方がたナイトレイブンカレッジに呪石を提供するかわりに、その上で生まれた〝結果全て〟を返却、提供する契約を結んでいるのはご存知のはずでは?」
    「呪石に呪われた生徒もその内に入ると?」と、トレイン先生がグレイソンの発言に、忌々しげに奥歯を噛んだ。
    「ええ、勿論。しかし私共も、そこの……たしか、ローズハート君、でしたか? 彼に対して破格の保証をしましょう。素材提供に五億マドル、もちろん彼の交尾相手もこちらで用意しましょう。君は少しの間麻酔で眠っているだけでいい、あとはこちらが全て済ませましょう」
     悪い話ではないだろうと、グレイソンはボクを見た。
     ボクから生まれる子供を素材扱いしていることや、交尾相手という言葉からも、グレイソンからはボクや生まれた子を人間として扱う気がないことが伺える。
     ボクはクルーウェル先生の手をやんわりと解く、まだ鼻血は止まっていないのか、ぽたぽたと胸元に垂れてきているのが分かる。
     フーフーと噛み締めた歯の間から怒りで息が漏れた。ボクが治める寮内で、こんな奴らの無礼な振る舞いを断じて赦すつもりはない。ボクは、規則とプライドで以て、この違反者を排除しなければならない。
    「ボクは……お前たちのような人間にモルモットにされる趣味はない……今すぐハーツラビュルから出ていかなければ、本当に首を刎ねる。これは脅しじゃない、警告だ」
     マジカルペンをグレイソンに突きつけると、男の目がギョロギョロとボクを舐めるように見回し、そして「いいでしょう」と笑顔を浮かべる。
    「今日は、ローズハート君の呪いの形や、面白いユニーク魔法を見れただけでも良しとしましょう。勿論、お気持ちが変わればいつでも我が『anathema』にご連絡ください、すぐに迎えのものをよこしましょう」
     グレイソンたちアナテマの人間が、大人しく寮を出ていくが、トレイン先生たちは警戒し、学園を出るまで確かめると追うように出ていった。
     彼らの姿が見えなくなって、ボクは脚の力が抜けてその場に座り込んだ。他人の魔力が暴力的に体の中を掻き回す不快さを思い出して吐き気がする、それでも寮生が見ている前だと、どうにか二日前の様に無様に意識を失うことだけは避けれた。
     サイエンス部の活動から急いで帰ってきてくれたトレイに後のことを任せ、ボクはクルーウェル先生に学園の保健室に連れて行かれた。休日の校内は部活動以外で人とすれ違うことがなく、鼻血に汚れた姿を見られる事がなく胸をなでおろした。
     先生は、保健室の薬品棚から鼻血止めの魔法薬を取り出し、ボクの鼻の付け根に掛け、汚れをキレイに拭き取った。その間 anathema への愚痴を少し漏らし、奴らが最初にボクに行なった行為をすぐに止められなかった事を謝罪した。
    「『anathema』はどうやって学園に侵入したんですか?」
    「今日は、先日の呪石加工の授業で出来た結果を引き渡す予定だった……だが、いつものように応接間に通そうとした職員を数で押し、強引に鏡舎の鏡に入り込んだ」
     本当に全て、イデア先輩の言った通りになっている。この短期間でボクに掛かった呪いの存在を突き止めたことも、あのような強引な手段に簡単に出れたところも……
     このままボクが覚悟を決めず時間だけを浪費していれば、いずれボクだけの問題で済まない事が起こるかも知れない。
    「早く呪いを昇華しないと、みんなに迷惑がかかってしまう……」
     とつりと呟いた言葉に、クルーウェル先生が昨日のトレイと似た表情を浮かべる。彼らのこの表情を見る度、土で汚れた指先をハンカチで拭ってくれたお母様を思い出し、同時にあのきれいなハンカチを泥で汚した自分の愚かさと今が重なった。あの時は真っ白いハンカチを汚しただけだが、今はどうだ……考えると頭が痛く熱を持っている、身体が急激に冷えボクは身震いし、ぼんやりと霞む目の前に意識が保てなくなった。
     とうとう椅子の上で上半身を支えることすらできなくなり、目の前が真っ暗になった——



     * * *

     呪石に操られたフロイドに犯されたあの日から、一週間ほど経った。
     あれからボクは、疲労からの高熱で泥のように眠り、少しの間目が覚めてもトレイが作ってくれた少量の食事すら取ることを身体が拒み受け付けず、三日目には自室で点滴を打たれることとなった。
     毎日のように、トレイやケイトがボクの部屋にやってきては甲斐甲斐しく世話を焼いてくれることが申し訳なくて「すまない、ありがとう」とお礼を言う度に、二人が複雑な表情を浮かべた。
     最初は警戒していたが、二人はボクに掛かったこの呪いに影響されない様だ。大切な友人をこんな事に巻き込まずに済んだと、その事実にボクは胸をなでおろした。
     この呪いにどのような法則があるのかは分からないが、呪いには影響を受ける者と受けない者がいた。それは、ボクに好意を持っている持っていないは関係なく、影響を受けたものは皆等しく、フロイドのように瞳が赤みを帯びる。それも日に日に数を増して、深夜ボクの部屋の前をウロウロと歩く気配が多くなっている。トレイやケイトが目を光らせていてくれることもあって、誰も強引に部屋に入ろうとはしないが、彼らの欲と拒絶だけは、じわりと精神に伝わり吐き気がした。自分がそのような対象になることも、彼らに望まぬ欲を持たせてしまったのも、原因は全てボクにある。
     しかしその気配も、フロイドと強く繋がった感覚に掻き消されることのほうが多い。
     ハーツラビュル寮とオクタヴィネル寮。鏡舎の鏡を使わなければ簡単に行き来することの出来ない場所にあるにも関わらず、彼の感情が呪いを通して手に取るように分かる。
     今のフロイドからは、後悔と同じ分だけ未だボクを妊娠させなければと強く考えているのが伝わってくる。
     この呪いの強さに、フロイドがボクへ向けてくれていた気持ちのどこまでが呪いのせいなのか分からなくなってしまった。もし全てが呪いのせいで、呪いが解けてしまったら、あのふにゃりと溶けるように笑う彼の瞳が、ボクに向けられた事すら呪いの影響だったのなら? それこそ、こんな呪いに巻き込んだことを嫌悪し、許さないと悪意を向けられたら……
     こうやってずっと考えても答えも出口もない堂々巡りしてしまう。そしてこの数日間、一向に解決へと物事が進むこと無く、考えることを恐怖したボクは、熱にうなされながら、このまま死ねばお母様を怒らせる事もなく、フロイドをこの呪いから開放し、命を得てすぐに殺さなければならない不幸な子供を作ること無く、みんなが幸せになれるのでは……とまで考えていた。
     けれど、どれだけ心が死を望んでも、心の奥底で生きたいと願う本能がボクを生かす。
     極限までくると決まって喉が渇く、死という一線だけは超えさせないと、呪いがじわりと身体の中で動くのが分かった。
     あぁ、なんて酷い……と自分を責めるボクの頬を、誰かがひたりと、少し冷たい体温で触れる。その気持ちのいい手のひらに頬を擦り付け、喉が渇いたと口を開ければ、レモンの味がするぬるい水が口の中に流し込まれた。おいしくて、足りないと舌を伸ばして絡めれば、また水を飲ませてもらえた。それを三度繰り返し、やっと意識が浮上すると、ボクの目の前に海が見える。ボクを映す海がゆっくりと離れると、それが心配気にボクを見るアズールの瞳の色だということに気付かされた。
    「あ……ず、る……」
    「大丈夫ですかリドルさん……水、まだ飲みますか?」
     小さく頷くと、彼はペットボトルの水を一口含み、ボクの唇に重ねて、またぬるい水を口移しで流し込む。もういいよありがとうとお礼を言うと、彼はやっとボクからその身を離した。
     水を取り込んでやっとはっきりした意識に、自分で水を飲めない状態だったから、アズールが仕方なく口移しで水を飲ませてくれたと分かっていても、今の行為すら呪いの影響だったらと考えると体がこわばる。
    「トレイさんから聞きました、熱で食事が喉に通らないと……駄目ですよ、少しは食べないと」
     なぜだか彼の言葉に、死のうとしている自分を責められているようで言葉が出ない。
    「トレイやケイトに頼まれて、ボクに食事を取らせに来たのかい? それとも、オクタヴィネルの寮長として、寮生の罪を肩代わりしに来たの? …‥フロイドの事はボクのせいだ、キミが気にする事ない」
    「いいえ、僕自身がリドルさんに会いたくてここに来ました。お二人からは、リドルさんが熱でほとんど食事を取れていないことしか聞いていません」
     アズールが僕に会いたい? なぜ?
     訝しむボクの目の前に、アズールがフードポットを見せた。
    「すりおろした林檎を米粉で煮ました、これなら今のあなたでも食べられるでしょう?」
     木製のスプーンに一匙掬われたそれを口元に運ばれ、どうぞと言われて口を開ける。すりおろされまだ温かくとろりとした林檎が嫌悪無く喉を滑り落ちて胃に入っていく、酷くボクを甘やかす味に涙が出そうになった。
    「どうして、ボクの世話を焼いてくれるの? 後から対価を求められても困るのだけど……」
    「これは未来への投資なので、対価は求めません」
    「それはそれで怖いんだけど……」
     ボクが眉間に皺を寄せれば、ボクの手を取ったアズールが、いつものように手のひらを取ってキスをしてきた。
    「それ、やめてくれないかい」
     眉間に皺が寄るボクを見て、アズールは「これだけは譲れません」と握ったボクの指をするりと撫でる。
    「身籠るなら、僕との子にしませんか?」
     その返答に驚いて固まるボクに、アズールはボクの目を真っ直ぐ見つめた。いつもの胡散臭い表情が鳴りを潜めた彼は、年相応の表情で、なんだか言葉に詰まる。
    「キミは……産まれてくる自分の子を殺すことに、抵抗はないの?」
    「そうですね、きっとよく知らない子供より、高熱にうなされ、食事も取れない、日に日に精神的に参っていくあなたの今の方が心配だ。このままだと本当に死んでしまいますよ?」
     アズールは、ボクのお母様にすべてを話して、知らない男を用意してもらい抱かれるぐらいなら、お母様の知らない間に自分と子を作って流して、これを悪夢か怪我で済まして忘れてしまえばいいと僕に言う。しかも、対価はボクとの行為でいいという始末だ。
    「だから、僕にしませんか?」
     彼の優しい声音で紡がれる言葉は、今の弱っているボクには効果的面だ。対価はボクの身体を抱くだけでいいなんて、ボクの価値を高く見積もるアズールは、まるで自分の手を取るまで引くつもりはないと、じっくりとボクの言葉を待つ。
     一瞬、こんな思いを続けるならいっその事と、彼の手を取りかけたが、ボクの気持ちがすんでのところで手を引っ込めた。
    「アズール……ボクは、たぶん……フロイドのことが……」
     言いかけた言葉を遮るように、アズールが「知っています」とボクに言った。
    「な……んで」
    「どうして知ってるのか……ですか? 僕がリドルさんを好きだと自覚したのが、リドルさんがフロイドに気持ちがあるとお見受けした瞬間だったので」
     あのバカを好きになるなんて、リドルさんは見る目がないとアズール胡散臭く笑う。
    「あいつとの子供を身籠ったら、堕胎するのが辛いから悩んでいたんですか?」
     その言葉に、ボクは首を振る。
    「それだけじゃないよ……もし、フロイドがボクに寄せてくれた好意が全て呪いのせいだったら……そう考えたら彼に会うのも、本当のことを話すのも、呪いが溶けてしまうのも怖い……ンッ!!?」
     アズールの薄い唇がボクの唇に重なった。じんわりと伝わる彼の体温に、眉間に皺が寄る。舌を絡めるようなキスではない。だた合わさっただけのキスがやけに息苦しい。
    「そうやって悩んでも、あなたが妊娠しなければこの呪いは解けませんよ」
     そんな事は分かってる……これが今考えられる一番の最善だとしても、キミが一番傷つくんじゃないのかという言葉は、口をついてでなかった。
    「キミは、それでいいの?」
    「ええ、リドルさんを助けた上に、手の届かないあなたを抱くことも出来るんだ、十分対価をいただくことになります」
     ボクは、最後にもう一度考えて、彼の提案に頷いた。
    「……分かった、その提案をのむよ」
    「ありがとうございます。では、いつにしましょうか?」
    「今、といったら?」
     時間が経てばきっと尻込みしてしまう。だったらいっそ、今勢いで最後まで終わらせて欲しい……
     ボクがそう言うと、アズールは少し考えて「いいですよ」と一言、ボクをベッドに押し倒した。
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    おわり

    PAST今現在、恋愛感情なんか微塵もないアズリドとフロリドの未来の子供がやってきてなんやかんやのクソ冒頭
    並行世界チャイルド それは、授業中の出来事だった。
     グラウンドの上。辺りが急に暗くなり、さらに大きな穴が空いた。雷鳴轟かせる穴。その口から吐き出された二つの塊が、このとんでもない事件の発端になるとは、この時はまだ誰も知る由もなかった。

     * * *

     授業中、慌てたゴーストがリドルを教室まで呼びに来た。緊急だと言われ、急いで学園長室まで向かうと、その扉の前でアズールとフロイドと出会った。
     苦手な同級生と、胡散臭い同級生兼同じ寮長である二人を見て、リドルは自然と眉を顰めた。
    「あー! 金魚ちゃんだぁ〜!! なになに、金魚ちゃんもマンタせんせぇに呼ばれたの?」
    「僕たちも先ほど緊急の知らせを受けて来たんです」
     この組み合わせなら自分ではなくジェイドが呼ばれるべきなのでは? とリドルは思った。どう考えても、二人と一緒に呼ばれた理由が分からない。こんな所で立っていても仕方ない、コンコンとドアをノックすれば、学園長室からバタバタと走り回る音が聞こえた。中からは、やめなさい! と言う声や、甲高い子供の声と泣き喚く声が聞こえた。
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