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    おわり

    @owari33_fin

    アズリドとフロリドをぶつけてバチらせて、三人の感情をぐちゃぐちゃにして泣かせたい

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    キミは始まりのミーティア 後編 4

     それから一ヶ月程経ったある日、昼食は外で取ろうとアズールの提案に、四人で出かけることになった。
     アズールが気になっていたファミリータイプのレストランは、気のいい夫婦が切り盛りするこじんまりとした良い店だった。
     アスターとサミュエルが騒いで、真っ白なテーブルクロスをソースで汚しても嫌な顔ひとつしない夫婦は「サービスだよ」と二人にデザートのプリンを出してくれた。
    「かあさん、これおいしい! 食べて!!」
     サミュエルがボクの口にプリンを乗せたスプーンを持てきて、それを見たアスターが「ズルいサミー! かあさん、ぼくのも食べて!」と同じ様にプリンの乗ったスプーンをボクに近づけた。
    「いいよ、それは君たちがもらったんだから、自分で全部食べていいんだよ」と言うボクと、「ふたりとも、他の人に迷惑になる、少し静かにしなさい」と小さな声で叱るアズール。
     最近ではボクが怒っても二人には大して効き目がないのに、アズールが叱れば、すぐに言う事を聞くようになってしまった。
     二人は「はーい」といい子に、ボクの目の前に向けたスプーンの上のプリンを、大人しく自分で食べて、本当に嬉しそうに頬を緩ませている。こんな二人が見れるなら、今度家でプリンを作ってみてもいいかもしれない。
     二人が笑顔で食事をする姿に「そこまで美味しそうに食べてくれるなんて、作り甲斐があるねぇ」と、食後のサービスだと夫婦がボクたちに紅茶を出してくれた。
    「ここいらじゃあんまり見ない顔ね」
    「少し離れた郊外に住んできるので。今日は、会社の知人から『良いレストランがある』と勧められて来てみたんですが、本当にどの料理も美味しかった」
     アズールが、昔と違い胡散臭い笑顔のその胡散臭さを消した、好青年に見える笑顔でそう言えば、店主は嬉しそうに顔を緩ませた。
    「嬉しいこと言ってくれるねぇ、良かったらまた食べ気に来てくれよ」
    「ええ、全メニュー制覇しにお伺いしますよ」
     待ってるよと言う店主夫婦に見送られ外に出ると、アズールが「このあと、映画でも見ますか?」と聞いてきた。その言葉に待ってましたと言わんばかりにアスターとサミュエルは、パッと顔を明るくした。
    「見たい!」「ぼくも!!」
    「何が見たい?」アズールが尋ねれば二人は、シュシュシュと腕を動かす。
    「ぼく、わー! って戦うかっこいいやつ!!」
    「おれも! かっこいいのが! ばーってして、がーってするやつがいい!!」
    「はは、リデルもそれでいいですか?」
    「あぁ、みんなが見たいのでいいよ」
     本名のリドルと同じぐらい、今では呼ばれ慣れてしまった名で呼ばれ、いいよと返せば、ボクは手に持っていたカバンがない事を思い出す。
    「どうしたんです?」
    「どうしよう、さっきの店に忘れたのかも」
    「なら僕がとってきます」
    「いや、いいよ。キミは子供たちとこの先のカフェで待っていて、すぐに戻るから」と、ボクは来た道を引き返して先ほどの店に戻れば、婦人が見つけて、すぐ戻ってくるだろうと保管していてくれた。
     手渡された鞄の中には、黒に銀の印刷でロゴが入った包装紙に包まれた、アズールへのプレゼントが無事に入っていた。荷物を確認して、お礼を言ったボクは、足早にアズールたちの待つカフェに向かった。
     四人で暮らすようになってちょうど半年。記念日などではないけれど、ボクからアズールに何かプレゼントを渡したいと思っていた。
     家族のために頑張ってくれているアズールに、仕事で使えそうなネクタイを選ぶ。綺麗な黒とグレーの生地に紫の糸の入ったそれは、彼が以前その身にまとっていた寮服を思わせるデザインだ。
     プレゼントを捜している時に偶然そのネクタイを見つけて、きっと似合うだろうと選んだのだが、気に入ってくれるだろうか?
     渡した時の彼の反応を想像して、なぜか胸がむずがゆく、頬が緩みそうだ。
     休日の観光地は人通りが多い。人波をかき分けてたどり着いた先、カフェのテラス席に座るアズールたちが見えた。
    「ごめん、待たせたね」と、小走りに走り彼らの元に向かう、そのボクの腕を誰かが掴んだ。

    「金魚ちゃんッ……!!」

     この五年、決して忘れることのない声が、彼しか呼ばないあだ名でボクを呼ぶ。
     振り返ると、まだ甘さの残っていた柔らかな頬をシャープにした、昔より男らしさが際立つ顔つきのフロイドが、必死の形相でボクの腕を掴んでいる。
    「フロイド……!?」
     どうして、こんな老人のような真っ白な髪と、女性の服装をしていても、この大勢の人混みの中、ボクに気づき追いかけてきたのか……
     驚愕と、彼に知られてしまう恐怖、そして再会への歓喜が心の中でない混ぜになる。フロイドに掴まれた腕から先が、未だみっともなく過去に縋りつこうとするのか、腕をどうしても振り払えない。感情の波がいっぺんに押し寄せ、一瞬、ボクの心がその場を離れそうになった事に気づいたアズールが、今に引き戻すように、後ろからボクの身体を抱きしめた。
     フロイドの目線が、ボクを抱きしめるアズールの腕をたどり、顔を見て挑発的に口角を上げる。そしてその目線がアスターと、続いてサミュエルを見た瞬間大きく見開かれた。
     俯いて、ガシガシと乱暴に頭を掻いたフロイドは、息を一つ付く。次に向けられた顔に、記憶の中のあの怒りに塗りつぶされ笑むフロイドが、嬉しそうにヘラリと笑う懐かしい表情に書き換えられていく。
    「金魚ちゃ……じゃねーな、今は白メダカちゃんかぁ、久しぶりぃ……ついでにアズールも久しぶり」
     懐かしい話し方の最後、あはっと笑って手を振った。
     その瞬間、子供たちの前なのに、例の鑑賞業の名でからかわれた事に一瞬で腹が立って「だからそのふざけたあだ名で呼ぶんじゃないよ!」と、ボクは背後から抱きしめるアズールや、ずっと手首を掴んだままのフロイドの手を振り払い、無意識に言い返してしまった。
     しまったと、思ったときにはもう遅い。
     ボクはこれでも、子供達の前では二人にとって〝正しい母親〟であろうと努力してきたつもりだった。それなのに、子供たちの前でとんだ醜態を晒してしまったと慌てるボクを、フロイドが懐かしさのこもった表情で、くしゃりと顔を歪め、どうしてだか愛しいと……そう感じるような表情で、アズールや子供たちの目の前で、ボクの唇に、重ねるだけのキスをした——
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    おわり

    PAST今現在、恋愛感情なんか微塵もないアズリドとフロリドの未来の子供がやってきてなんやかんやのクソ冒頭
    並行世界チャイルド それは、授業中の出来事だった。
     グラウンドの上。辺りが急に暗くなり、さらに大きな穴が空いた。雷鳴轟かせる穴。その口から吐き出された二つの塊が、このとんでもない事件の発端になるとは、この時はまだ誰も知る由もなかった。

     * * *

     授業中、慌てたゴーストがリドルを教室まで呼びに来た。緊急だと言われ、急いで学園長室まで向かうと、その扉の前でアズールとフロイドと出会った。
     苦手な同級生と、胡散臭い同級生兼同じ寮長である二人を見て、リドルは自然と眉を顰めた。
    「あー! 金魚ちゃんだぁ〜!! なになに、金魚ちゃんもマンタせんせぇに呼ばれたの?」
    「僕たちも先ほど緊急の知らせを受けて来たんです」
     この組み合わせなら自分ではなくジェイドが呼ばれるべきなのでは? とリドルは思った。どう考えても、二人と一緒に呼ばれた理由が分からない。こんな所で立っていても仕方ない、コンコンとドアをノックすれば、学園長室からバタバタと走り回る音が聞こえた。中からは、やめなさい! と言う声や、甲高い子供の声と泣き喚く声が聞こえた。
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