永遠に君は「ルイ王子? そんな王子いたか?」
その言葉にルイの表情は抜け落ちた。
「いたかもしれないが俺は知らねぇな」
忙しいからもう行くよ。そう言い残して男は去っていった。
ルイは咄嗟に男を引き留めようと手を伸ばしたが、その手は空を切った。
「帰るぞ」
イーサンの静かな声は自然と衝撃を落ち着かせる。
ルイが死に、死神になってから国に帰るのは初めだったが、まさか国民が自分を覚えていないとは考えもしなかった。
「私は覚えてる」
ぽつりとルイは呟いた。
「私は国民を愛していた。その思いは王になっても変わらないとバラに賭けて――」
「もういい」
「私は」
ルイの瞳から一粒雫が落ちた。
私は。
私は、何だったんだろう?
「誰も覚えてなかったとしても俺は知ってる。ルイがこの国のために命を懸けたこと、この国と民を愛してることを、俺は知ってる。
事実は改変されてもなくなりはしない」
その言葉にルイはハッとしてイーサンを見る。イーサンは少しバツの悪そうな顔をして見せた。
「そうだろう?」
イーサンはルイが苦手ではあったが嫌いではなかった。尊敬していたし良きチームメイトだと思っていた。
イーサンにとってルイはいつもうるさい程の明るさと何処から湧いてきてるのか分からないナルシズムが全てだと思っていた。しかし、そのすべての根底を知らなかった。興味なかったのかもしれない。
「ルイらしくない」
「私らしいとは。君はどう思う?」
言葉とは裏腹にルイはどこか自慢げな顔をして見せた。
「もう取り戻したな」
「イーサン、答えて」
逃がしはしない。想いをを聞かせてほしい。
「そういうところだ。いつまでもくよくよしないところ、自己愛が強いところ、楽観的なところ、そして貪欲なところ」
吐き捨てるようにイーサンは言う。
「君はよく私を知っているね」
ルイが笑った。
「帰ろう! マネージャーが待ってるから」