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    hasu_karasu

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    hasu_karasu

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    体調不良大好き!嘔吐大好き!な私が五条悟に嘔吐を手伝ってもらうために書いたキショ夢小説です
    ちなみに私は七海さんの夢女子です。

    ごじょーさんに嘔吐手伝っていただく話 異変が起きたのはここ一週間だ。一日目はなんとなく胃の調子悪かった。二日目三日目は食欲が落ちた。四日目には眠りが浅くなった。五日目は頭が痛み、六日七日となる頃にはもう歩くことすらままならなかった。いろんな薬を試した。頭痛薬に胃痛薬、その他諸々をしらみ潰しに飲んでみたはいいが、どれも効果がなかった。ぼろぼろでどうしようもない私を補助監督が見兼ねて、ほかの人に掛け合ってくれたのか、休みになっていた。明らかに憔悴してますよ。ちゃんと休んでください、と軽い説教つきで硝子さんのもとに押し付けられた。…代わりに任務に出てくださった術師の方に、あとで謝らなければ。そう頭に浮かんだが、原因不明の体調不良に犯される体は、たやすく思考を奪い、残ったのは「楽になりたい」という人間の最も原始的な欲求だけだった。
     療養用の簡易のベッドで目を開く。その前の夜と同様、昨日の夜も、案の定眠れなかった。眠りに落ちそうになる、ある一点を過ぎようとすると、途端に体が眠りを拒み、ベッドの上を転げ回り始める。それを繰り返し、結局、深い眠りに付けないまま朝を迎えた。朝の10時24分。日はすでに登り、閉じられたカーテンから滲む光ですら痛い。開ききらぬ目を滑らせ、擦り切れた精神に鞭打って、重い体をなんとか起き上がらせる。すると、すぐ横の小さなベッドサイドテーブルが視界に映る。不思議なことに、テーブルの上の水差しはいつのまにか十分に満たされていた。夜中に何回か水を飲んだので、半量以上は減っていた筈だ。硝子さんが足してくれたんだろうか。
    「お疲れサマンサ!」
    カーテンを移動させる煩わしい音とともに、今の状態に似つかわしくない軽快な声色が頭を殴りつけた。蛍光灯の光ですら五月蝿いと感じる視界に大きな影がぬっと通る。その影の主は言わずもがな、トレードマークの黒い目隠しをした__五条悟その人だった。
    「あちゃー、顔色わっるいね〜!死にそうじゃん。あ、生きてる?」
    嫌味のようにその長身をぐっと折り曲げて、顔色を伺ってくる。なんとか生きてます、と声を掠れさせながら言うと、そりゃあ良かった。君に死なれちゃ困るからね、と冗談めいた口調で返される。そういえば、忙しい彼がここにいるなんてどういうことだろう。そう聞くと、ちょっとわかったことがあるから伝えに来たんだよね。と近くのパイプ椅子を引っ掴んでがちゃがちゃと音をさせながら座った。
    「実はさ。君と同じタイミングで体調不良に悩んでる術師あと五人くらいいるらしい。症状としては、体の倦怠感、頭痛、食欲不振、消化不良、などなど…。発生期間は一週間でその間に段階的に悪くなるという特徴を持ってる。なんと!君の症状とぴったり一致」
    長い指をくるくると弄びながら彼は戯けたように言う。万年人手不足の呪術界で、術師が仕事ができなくなるのはとんでもなく深刻なことであるはずだ。なのにまるで日常であったの驚きの一コマのような容易い紹介は、胃の腑をより痛ませるのに十分だった。
    「そこまで大人数じゃないし、症状は普通の体調不良と変わらない。でもここまで同時発生するなんて怪しいだろ?それで調べてみたんだけど、なんとまあ、低級呪霊のせいだったんだよね」
    呪霊。そう聞いて、頭が急激に冷えていくのを感じた。これでも自分は呪術師の一介であり、呪霊に対し対抗手段を持たない非術師のために働いている。にもかかわらず、呪霊、よりにもよって低級に当てられ、為すすべなくベッドでこうやって寝込んでしまっている。
    「…君のような術師が”この程度“の低級にやられるなんて、本当に残念だよ」
    ぱきり。彼が遊んでいた手の骨が鳴る。さっきまで弾んでいたような声が、一気に温度を失い、鼓膜を震わす。覚悟していた言葉とはいえ、実際言われるとどうにも響くものがある。やるせなさに、手に力を込めると、当たり前のように皮膚に爪が沈んだ。決して長くはない沈黙がひどく重い。しかし彼は、重苦しさを強引に破り捨てるように口元を緩めて、ひらひらと手を振った。
    「…なーんて言いたかったところだけど、今回は事情が違う。この低級は特殊でね。ウイルスみたいに人の中に入って、その宿主の中で育ってしまうんだ。最初は呪霊と言うにも微妙な分、気づかないまま体に入っちゃうんだろうね。見ようによっては等級はあげてもいいくらいだけど、観測の限り酷い風邪以上の症状にはならないだろうから、それほど心配の必要はないよ」
    一気に空気が緩む。幸い、仕方ないと言えば、仕方のないことらしかった。しかし、まだ歯痒さは残ったままだ。それで、と彼は話を続ける。
    「どうやらその呪霊は宿主の中で育つと、胃の中に滞留しちゃうんだよね。だから治すには、まあ、簡単。吐き出すしかない」
    今まで散々薬を飲んだり、食べるものを工夫していたのに、吐き出すだけで治る。存外に大雑把で単純な解決方法に、拍子抜けした。しかし治し方が分かった今、やることは一つだ。トイレにでも行って、自分でなんとか吐き出してしまおうと、立ち上がろうとすると彼に止められた。
    「何しようとしてんの?」
    彼はきょとんとした声で問う。何って、言われた通り全部吐こうと思って、と言うと、
    「一人でやるのはキツイだろうから、僕が手伝うよ」
    と当たり前のように返される。手伝うって何を、と反応する余暇も与えられないまま、彼は私の手を引っ張り、自分にもたれかけさせた。触れられた手から滲む体温は存外に低く、まとまらない思考を少しばかり冷静にしてくれる気がした。彼が何を手伝うのかやっと気づき、自分でやりますから、と彼を離れようとすると、彼の支えがなくなった途端、一気に力が抜けてしまい、体のバランスを崩す。用意していたかのように彼の腕が伸び、もう一度自分を引き寄せた。
    「ほーら言わんこっちゃない。ヘタなことしないで僕に任せりゃいーの」
    先程より強く抱えられ、ゆったりとした足取りで手洗い場の前へと連れてこられる。ちょっと待ってね、と彼はハンドソープを多めにとって、泡立てて爪の間まで丁寧に洗う。石鹸特有の香料の匂いが、鼻に突き刺すように香った。泡を流し、手から滴る水滴を簡単に払い、誘導する様に自分の手を縁につかせ、力を抜いてね、と体を前に倒される。後ろから大きな手がぬっと伸びてきて、白い指先が自分の唇のあわいに這わされた。隙間をなぞるように動く指に、どうすればいいかわからずに視線を彷徨わせていると、
    「咥えて」
    と容赦なく彼の声が降ってくる。自分の状況をいまいち処理できないまま、おずおずと口を開き、彼の人差し指と中指を中に迎え入れた。指先と舌が擦れあうのがくすぐったく身をよじると、すかさず彼の空いた手が体を固定する。彼の指を噛んではならないと、出来るだけ気をつけようと決心した瞬間、口内で指が動き始める。硬口蓋をそろそろとなぞられ、背筋にぞわりとした感覚が走る。指先が奥歯の内側の歯茎を掠め、いよいよ舌の根本まで指が差し迫った。喉に指が近づくほど、異物感はどんどん強まる。奥の咽頭を二本の指で押されると、吐き気が一気に押し寄せる。う、う、と決して聴き心地がいいとは言えない声が声帯から発せられ、瞳の表面に液体が張って、視界がぼやけた。頭の奥が熱くなる。喉の奥を掻き回すように動く指が気持ち悪い。時々咳き込みそうになるが、すかさず彼の指に阻止される。軟口蓋にごつごつとした関節が不規則に当たる。唾液特有の粘ついた音が耳にぎこちなく響く。いやいやと首を振って、拘束された体をできる限り使ってやめてほしいと伝えても彼は指の動きをやめてくれない。すると、耳元に彼の吐息がかかる。



    「いやいやしない、ほら」
    ぐっ、と最後に強く咽頭を一押しされると、食道に何かが迫り上がってくる感覚に襲われた。たまらずに体をさらに前に倒して、縁についていた手に力がこもる。びちゃびちゃと音を立てて、口から吐瀉物が溢れ出た。酸特有のぴりついた匂いが広がる。喉が蠕動する。胃が空っぽでもう吐くものがないのに、上肢を嘔吐感が断続的に襲う。ようやっと、自分の体液で濡れててらてらと光る彼の指先が、糸を引きなが口から離れた。口元からは唾液が垂れ、冷えて気持ちが悪い。まだ粘液やら何やらで粘着く喉の隙間を中途半端に空気が通り、ひゅう、ひゅう、と音を立てる。その上、出したものに胃液が含まれているせいなのか、喉が痺れるように痛んだ。
    「あったよ」
    と軽い声が上から降ってくる。なんとか上を見上げると、ぼやけた視界に彼の指先と、黒いビー玉サイズのような何かを確認した。かすかに、呪力を肌に感じる。
    「問題の呪霊だ。ちゃんと出てきたからひとまず安心」
    ぱちん、と音を立てて、黒いそれが霧散する。手を洗って簡単に処理を済ませると、彼は自身が座っていたパイプ椅子に自分を座らせた。周辺に置いてあったタオルを掴み、軽く濡らして体液まみれの口周りを拭いてくれる。それくらい自分でできます、と抗議の声を挙げようとしたが、抵抗する気力も起きず椅子にぐったりと座り込み、彼の介抱をされるがままに受けることしかできなかった。
    「…はは、ひどい顔。こんなにクマ作って」
    まだ湿り気を帯びた指先が目の縁をなぞる。薄暗い視界に白い爪先が映り、反射的に目を強く瞑ってしまう。暗闇の中で感じたのは、しずかに肌に突き立てられた爪の、鋭い痛み。恐る恐る目を開けて、彼の顔を覗く。口元が弧を描いているとはいえ、顔が持つパーツの中で最も雄弁な目元は黒い布によって隠されているため、正確な感情は表情から読み取ることはできない。ただ、ひそかに憤怒のいろが滲んでいるのは、痛いほどに肌で感じ取っていた。
    「もうあんなつまんない奴にはやられないでね。ま、役得といっちゃ、役得だったけどさあ」
    なんとも言えないその文言は、微かに自分の中に違和感を覚えさせた。なにか言おうと、脊髄からの指令が来たが、そもそも何も言うことがない、何を言えばいいかわからない上に、不吉な塊が声帯につっかかって発声がうまくいかない。なにか。なにか。そう逡巡しているうちに、彼は発言の機会をいとも容易く取り上げる。
    __硝子には僕から報告しとくよ。あとで誰かに消化のいいものを適当に届けさせるから、ちゃんと食べてね。いつもの調子で。軽やかに、朗らかに、捨て去るように言葉を投げて、
    「体調には気をつけなきゃ、ダメだよ」
    あとはそれだけ。僕はもう仕事行くから。彼はそそくさと部屋から去って行ってしまった。呆然としてその背中を見送ると、ふと、先程より体がずっと軽くなっているのを感じた。吐き出せば、治る。その言葉は、当然だがほんとうだったようだ。
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