ランダルにとって眠りは、ある種お手軽な死の代替品だった。
眠るように死ぬことが人間のトレンドであることは知っていたし、いずれ自分もそうやって死んでみるのも悪くないと考える方法の内の一つだ。
ただ、結局棺桶の蓋を開けに来たルーサーによって毎日朝はもたらされるし、楽しい夢の中の経験も、目を開いた瞬間に昨晩飲んだ水の味ほどに思い出し難いものになってしまって、そうなるともうランダルは「まあいいか」と興味をなくしてしまう。それよりも両隣の棺桶で眠るペットたちに目覚めの挨拶をすることの方が彼にとって重要なルーティンだった。
「おはよう! わたしの愛するペットたち~」
今日も賢く棺桶に納まって眠っているペットたちの頬に無遠慮にキスをして、ついでに少し噛み付いてみたりもする。甘噛みのつもりだったが、鋭い歯がどちらかの皮膚を裂いてしまったみたいで、ほんのり口の中に広がる鉄の味に今日はラッキーな朝だとランダルはニヤニヤと舌なめずりをした。
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