私はハッピーエンドを望んでる【もう君以外考えられない。例え君が僕を突き放そうとも、僕は君以外を愛せない。だから、どうかこの手を取ってくれないか】
「けれども姫は、それを受け入れない・・・・・・か」
「どうしたんだい、寧々。浮かない顔だね」
「類。浮かないっていうか、複雑な気持ちっていうか」
「ああ、まさか司がこんな恋愛ものを脚本する日がくるなんて・・・・・・!というところかな?」
「類が司って呼び捨てにしてると変な感じ」
「寧々、僕をからかうのはよしてくれ」
話し合いの結果、次なるステップアップに繋げるために恋愛ものに関するショーにしようという話になった。皆で今まで見てきた作品の中でどんな恋愛が繰り広げられていたかを発言していく。題材がいつもと違う・・・・・・それが例え恋愛の話とはいえ、最高のショーにしたいという気持ちは変わらない。恥ずかしがって事が進まない、なんてことは何より避けたかった。かといって、多少の気恥しさが拭えないのはどうしようもない・・・・・・ごめん、皆。ある程度、話がまとまり方向性も決まったところで司が一度脚本を書き上げてくることになった。読んでみて、演じてみて違和感があったり、展開を変えた方が良いと感じたら脚本に変更を加えるという話だった。だけど、蓋を開けてみたらどうだろう。びっくりした・・・・・・という言葉で片付けていいのかわからない。それほど私は驚いた。まさか、司が。こんな脚本を書くなんて。甘く、切ない、胸が締め付けられるような痛み。
「私たちが知らないだけで、司の中には未知なる司がいるんじゃないかって思っちゃうね」
「人が自分以外の誰かのことを完全に把握するのは無理に等しいことだよ。でも、それも含めて司くんは司くんだよ」
「そうだね」
紆余曲折を経るものの、この物語はハッピーエンドで終わる。それが司が司である何よりの証だった。
「まださ、脚本はこれで決まりってわけじゃないし配役もちゃんと決まってないけど。私、このお話のお姫様はえむがぴったりだと思うんだ」
「おや、どうしてそう思ったんだい?」
「物語には少なからず、書き手の気持ちが含まれてると思うから」
私がそう言うと類は目をぱちくりとさせた後、ふふっと笑った。おもしろがっている笑いじゃなくて、しあわせを願う気持ちが見て取れる。ふとネネロボに視線を送ると、ある一点を見つめていた。視線の先をたどると、この炎天下の中、ステージの端に足をぶら下げて座る司の背中にべったりくっついているえむと、暑そうにしながらもお腹に回っているえむの手を引き剥がそうともせず、ペットボトルの水をごくごくと飲んでいる司の姿が目に入った。何あれ、見ているだけで暑いし、熱い。
「早く休憩時間終わらないかな」
「おや。まだ休憩していたいって顔をしているよ?ああ、ごめん。まだあのふたりを見ていたんぐぐぐ」
「うるさい、それ以上言ったら口塞ぐから」
「(もう塞いでるじゃないか・・・・・・僕の幼馴染は素直じゃないねえ、まったく)」
ねえ、司。物語の中だけじゃなくて、現実でもハッピーエンドにしなさいよ。ああ、でも。紆余曲折はいらないから。目の前に壁があれば叩き割って真っ直ぐにお姫様の元に向かうのもいいと思う。もしひとりで壁を叩き割れなかったら、私たちを頼ってほしい・・・・・・なんて、素直に言えないけど。
おしまい