Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    omoti_321

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 15

    omoti_321

    ☆quiet follow

    司えむ小説オンリーアンソロジー【夢見る君と綴る詩】収録の没ネタのひとつです

    没ネタ①同様に、収録内容と似通った部分があります。こちらは加筆修正なしです。

    【夢見る君と綴る詩】没ネタ②夜になると空にたくさんのお星さまがきらきらぴかぴか輝くんだ。夜だけ見れるお星さまのショーが始まるの。ショウタイム!寧々ちゃん星の隣のお星さまがネネロボちゃん星、すぐ隣には類くん星がいるの。類くん星の近くにはいつもとーってもぴかぴかーって輝くお星さまがいるんだ。あのお星さまは司くん。類ーっ!っておっきな声で叫びながらも全力で類くんの演出に応えてる司くん。みんなのきらきらなショーを見て周りのお星さま・・・・・・お客さんは笑顔になってるんだよ。それを見て寧々ちゃん星もネネロボちゃん星も類くん星も笑顔になるの。司くん星も笑ってて、あたしは胸の辺りがぽかぽかーってあったかくなるんだあ。そうして素敵なショーを見終わったらぱちぱち〜って拍手をして、おやすみなさいするんだ。

    「ふむ。星を見てショーをしているなんて思ったことがないな」
    「わたしもないかも。えむの感受性って豊かだよね。類はどう?」
    「そもそも星を意識して見ることがなかったからね。星になっても僕達は一緒にショーをしてお客さんに笑顔になってもらえてるようで何よりだよ」
    「うん!」
    「ところでえむ。えむ星は誰の一番近くにいるんだ?」

    司くんの目があたしの目と合った瞬間、どくりと心臓が高鳴った。喉につかえた唾を音を鳴らして飲み込む。何か言わなきゃ。そう思って口を開いたとき、すうっと吸い込んだ空気がひんやりと冷たかった。



    気が付くとあたしの目の前は真っ暗だった。いつの間に目を閉じたんだっけ。あ、違う。身体の重さをじんわり感じる。そういえば、さっきまでは身体の重さを感じなくてふわふわーってしてたかも。口に手を当てて、ふわあってあくびをひとつ零しながらゆっくり目を開ける。ぱちりぱちりと瞬きをする度に、あくびをしたことで浮かんだ涙がほっぺたをゆるゆる流れていく。冷たいなぁ。そう思いながらぼんやりと天井を見つめる。寝起きでぽやぽやした意識の中で夢の内容を最初から思い出そうとしてみて、あれってなった。

    「星・・・・・・が、なんだっけ?」

    星の話をしてたっていうことは覚えてるのに。内容をうまく思い出せない。流れた涙を右手の甲でこしこしと拭いながら、むむむーって集中してみてもやっぱり思い出せなかった。ころんって横になるとカーテンの隙間から漏れてる光が見えた。その光はふんわりとあったかさを感じて、外に出なくても今日の天気を教えてくれる。

    「おはようー」

    腕の中にいるぬいぐるみを抱きしめながら、部屋の中にいるぬいぐるみや天井からぶら下がっている鳥や雲の皆に挨拶をした。たい焼きの絵が書かれた枕にもぽんぽんして、挨拶する。返事が聞こえてくることはないけど、心を通じておはようって言ってくれてる気がする。挨拶って笑顔の魔法だ。腕を頭の上までぐぐって伸ばして、ふはぁって息を吐いた。ぬくぬくの布団にくるまったままもぞもぞ頭を動かして枕元に置いてある時計を見ると、いつもより少し早い時間を針が差していた。ちょっと早いけど遅刻するよりいいもんね!準備しちゃおう!抱きしめていたぬいぐるみを枕の上に置いて、とうっ!と声を上げてぬくぬくの布団から勢いよく抜け出した。カーテンをシャッと開けたら眩しくて、窓越しに感じるお日様のぬくもりにぽかぽかした。こんなにいい天気だし今ならお日様の味がわかるかも!そう思って口から思いっきり息を吸い込んでも、お日様の味はしなかった。ちょっと残念、しょぼぼぼぼん。



    フェニックスワンダーランドは、前に比べてたくさんのお客さんがきてくれるようになった。司くんは前も平日にしては賑わっていたって言ってたけど、それでも目に見えて分かる変化にほっぺたをふんわり緩ませてた。司くん達のお陰でおじいちゃんの想いでできたセカイが消えないで、こうして息をしていること。それを喜んでくれることが嬉しくてたまらない。今の姿はフェニックスワンダーランドに関わるみんなの気持ちがひとつになったものだって思ってる。誰かひとり欠けてもきっとだめだった。記憶をとんとんって遡っていくと、見えてきたお星さま。きらきら輝く、その人は。

    「司くん」
    「何か題材が浮かんだのか?ならば、どんどん発言してくれ!」
    「あ、えへへー。ごめんね。まだ考え中。司くんが浮かんだから名前呼んじゃたー」
    「えむの中では配役まで決まってそうだよね」
    「題材から考えるか、登場人物から考えるか、はたまた演じる役者を見て考えるか。どんなショーにするかのアイデア出しの方法は色々あるからね」

    今やっているショーも、もうすぐ終わりに近づいてる。次にやるショーは何にしようか、練習の休憩時間に誰からともなくふわっと話が出た。みんなの顔がきらきらしてて、次のショーのことを考えてることがなんだか嬉しくなった。みんなの気持ちは一緒。お客さんを笑顔にしたいって気持ちでぶわわわぁって溢れてる。しあわせだなあって思ってると、司くんとぱっちんて目が合った。司くんは自分の顎に指をぽてりと添えて、そういえば、と何かを思い出すようにゆっくりと話しだした。そんな司くんから紡がれた言葉に、あたしは首をこてんと傾げた。

    「星の世界の話?」
    「ああ、そうだ。前にえむが言っていただろう?」

    星の世界のショーもしてみたい。言ったような気もするけど、いつ言ったのかはっきり覚えてない。司くんと初めて会った日から指折り数えら
    れるぐらいの月日が過ぎた。どの指の時の話だっけ。あたしの言葉を覚えてくれていた司くんにどきどきって心臓が早く行進してる。なんでだろう。嬉しいって気持ちでいっぱいになって、ほっぺたがぽわわ~んて熱くなってきた、気がする。気がする、だけ、かな。

    「まあ、そういうのって言った本人より言われた方が覚えてたりするしね。わたしはやってみたいな」
    「ふむ。えむくんの記憶力はいいのに、自分のことに関しては鈍くなるのかな。星の世界の話か・・・・・・うん。僕もやってみたいなぁ」
    「ひっ。ニヤニヤした笑顔で俺を見るな!類の演出には未来のスターたるこのオレが1200000%で応えるが!!それで、えむはどうだ?」
    「え、と。やりたい、けど。いいの?いつもみたいにちゃんと話し合って決め」
    「異議は」
    「「「なし(デス)」」」
    「ほえっ、ネネロボちゃんまで~!!」

    ネネロボちゃんの声があたしの後ろから聞こえてびっくりした。さっきまで小鳥とお喋りしてたのに。いつの間に戻ってきてたんだろう。

    「イマデス」
    「わぁ、心を読まれた!?ネネロボちゃんすごいね!!」
    「流石にそんな機能あるわけないでしょ・・・・・・え、ないよね?」
    「ふふっ、どうかな?」
    「うちはどうやら、とんでもない錬金術師を仲間にしてしまったようだな」

    瞬きしても消えないみんなの笑顔、1秒経っても2秒経っても聞こえ続けるみんなの笑い声。ぽかぽかするこの感覚は、お風呂みたい。ぬくぬくして気持ちよくて、お風呂から上がったあともあたたかさでほわほわしてしあわせな気持ちになるあの感じ。

    「こら、えむ」
    「ふにゅ。な、なあに、つかさくん」

    司くんの指があたしのおでこをツンってつついて、ハッとした。あれ、司くん。なんだか、もやもやーって顔してる。ついさっきまで、にこにこーってしてたのに。

    「しあわせな顔してるのはいいが、お前は・・・・・・えむだってワンダーランズ×ショウタイムの仲間だろう。お客さんに楽しんでもらって、お客さんの笑顔を見て笑顔になる側じゃないのか?」
    「うん、そうだよ?」
    「それならば、今の話はちゃんと聞いていたか?」
    「星の世界のショーをやろう!って話してた!」
    「その後の話は?」

    ぐ、と言葉に詰まった。ぽかぽかの気持ちに浸ってて、お話に参加してなかった。お客さんに見せる段階じゃなくてもショーの話。あたしの大好きなショーにちゃんと向き合ってなかった。司くんのにこにこを奪っちゃったのは、あたしだ。

    「ごめんなさい」
    「ねえ、えむ。空に星がひとつしか見えなかったらどう思う?」

    俯いたあたしの隣にきた寧々ちゃんは膝を深く曲げて、下から覗き込むようにあたしを見た。その声はまるで、子守唄を聞かせるお母さんみたいにふわふわと心地よくてやさしかった。

    「きれいだなあって思う。でも、ちょっとさみしいなって感じもする。ひとつでもぴかぴか輝いてるけど、ふたつなら笑い合いながらショーをしてるって思うし、みっつならもっとわんだほいだし」
    「ショー、か。星を見てショーをしているなんて思ったことがないな」
    「うん、わたしもないかも。えむの感受性って本当に豊かだよね。ねえ、類はどう?」
    「そもそも星を意識して見ることがなかったからね。えむくん。仮に僕達が夜空に輝く星だとして、星の僕達が周りの星・・・・・・お客さん達に笑顔になってもらおうとショーをしていたとしよう。その時、えむくんはどこにいるかな?」

    あれ、なんか。前にもこんな話をしたような気がする。気のせい、かな。あたしはどこにいるって。笑顔のみんなを見ている、そのあたしはどこから見ているんだろう。あたしは。

    「遠くから、とか言うんじゃないだろうな」

    司くんの声が胸に響いて、ちょっぴり痛かった。見透かされちゃったから。

    「バカえむ。オレという未来のスターを見つけてくれたお前が、遠くにいてどうする。遠くにいる人にもわかる様に輝きを放ってこそのスターだと思うが、えむにはオレの一番近くで見ていてほしいんだ。笑い合いながら、な」

    「司くん」

    司くんの大きな手にするりと両手を包まれて、あたしの心臓がぴょんって跳ねた。司くんの手、あったかいなあ。

    「えむ星は、司くん星の一番隣にいてもいいの?」
    「いてほしいってお願いしているのはこっちなんだが、ってどわあああ!?」
    「司くん!!司くん!!」

    両手を包まれたまま、あたしは司くんの胸に突撃して頭をぐりぐりと押し付けた。嬉しいって気持ちが止まらない。しゅわしゅわの炭酸がぱちぱち弾けるみたいに、鳴り止まない嬉しいの音。あたし、多分不安だったんだ。みんながめきめき成長していくのに、あたしだけが変わらないこと。みんなのいいところが伸びていくのを見るのは嬉しいのに、あたしだけが立ち止まってるように感じてたこと。あたし、バカだ。バカえむだ。今のあたしでも受け止めてくれて、仲間だよって言って受け入れてくれるって知ってたのに。知ってた筈、だったのになぁ。急に成長することは出来ないってわかってるのに、また不安になってたみたい。司くんの手があたしから離れて、あたしのことをぎゅうって抱きしめて背中をぽんぽんしてくれた。司くんの心臓の音が聞こえる。とくとくって、なんだか早歩きしてるみたい。あたしも司くんをぎゅうって抱きしめたら、もっと早くなった。あたしの心臓と一緒のメロディだ。不意に、聞き慣れたアラームの音が響き渡った。

    「おや、12時55分になってしまったようだね」
    「アト五フンデレンシュウサイカイデスネ」
    「え、あ。もうそんな時間なんだ」
    「顔が司くん並みに赤いじゃないか、寧々。大丈夫かい?」
    「だって司のあの言葉、どう考えても告は」
    「それを飛び越えてプロポーズにも聞こえる様な台詞だったね」
    「もう、恥ずかしいからやめてよ、類!!」

    類くん達の明るい声は司くんの腕の中でも聞こえた。耳をぎゅーって塞いでないから当たり前だけど、お話の内容にぽやぽやしちゃった。あたしには、プロポーズよりもなによりも司くんの顔が赤いことが嬉しかった。だって、あたしの顔も絶対に赤いから。司くんと一緒なことが嬉しい。大好きでいっぱいになると、こんな風になるんだね。


    ✱✱✱
    〜( 'ω' )〜てところまで書いたものの、自分の中で前半が特に仄暗さを感じて没にしました。付け加えて着地点も見えなかったのでやむなく没に。せっかく書いたので供養します。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖🌠💖🌟🍬💞💞💞💞👍
    Let's send reactions!
    Replies from the creator