【夢見る君と綴る詩】没ネタ③（だと思う）わからない。
えむは自身の胸にそっと手を当てた。
とくとくとくとく。
目を閉じて手のひらに感じる鼓動に耳を傾ける。
はやい。はやいのはわかる。
でも、わからない。
ふっ、と目を開けて目の前の人物に問いかける。

「とくとく、って早くて、でもそれだけじゃなくて。ふにゅふにゅって、ふわふわってする。それに、ちょっとツキツキ痛くて、でもふんにゅーって痛みじゃないの。ねえ、司くん。これが」

これが、司くんのいう『恋の音』なの？



漫画でいうならカッ！という効果音が表記されそうだな。それぐらい暑い。天馬司はそんなことを思いながら額の汗を指先でつつっと拭う。頭上に突き刺さる強烈な熱を浴びた頭はまるで熱したフライパンのようで、頭で香ばしい目玉焼きができそうだ。じとりと空を見上げると、夏だ！！！と空が叫んでいるようだった。7月でも8月でもない。まだ6月だというのに何故こんなにも暑いのか。6月といえば梅雨の時期だ。雨が降り続けるのも気が滅入るが、こうも暑いと体力が奪われて精神がじりじり削られる。一年中過ごしやすい気候ならいいのにと思わずにいられない。吐き出すため息も熱くて、司はげっそりした。春には春の、夏には夏の良さがある。6月なら雨を降らし続けるべきじゃないか。司はあまりの暑さに思考回路がショートしてきていた。咲希が食べたいと行っていた新発売のコンビニ限定お菓子をこっそり買っていこうと思っていたが、日を改めれば良かった、もしくは日がもう少し落ちてから家を出ればよかったと後悔し始めていた。だがしかし、今から家に戻るよりコンビニに向かう方が近い。それに愛する妹の喜ぶ顔が見たい。ここで引き返してなるものか、と司はふんっと鼻息を荒くして右足にぐっと力を込めて駆け出そうとした･･････が。

「つーかーさーくーん！！」
「どわああああ！！！！」

背中からどーん！と飛びつかれて、司は駆け出しに失敗した。右足に力を込めていた為、アスファルトを体の前面でスノーボードのようにずさあああっと滑っていくことがなくて良かった、と司はばくばくと逸る心臓を必死に落ち着かせようとする。はっ、はっと息が途切れ、背中に感じる慣れ親しんだ熱に、ふるふると体を震わせる。振り向くことなく、司はその人物の名前を腹の底からぐわっと叫んだ。

「えむ！！！！」
「はーい！！！！」
「やっぱりお前か！！！！」
「えへへ～！お散歩してたら司くんがいたから嬉しくなっちゃって！会いにきちゃった！」
「普通に声を掛ければいいだろう！」
「司くんなんだか、ぎゅーんしょぼーんだらりーんてしてたからあたしの元気を分けてあげようかと思って！大丈夫？今日、おひさまサンサンぴかぴかーってしてるからねっちゅーしょーになってない？」

背中にべったりとくっつくえむに暑いから離れろ、というのも気が引ける。行動は突飛だが、えむなりにオレの体調を気にかけてくれたんだと司はえむの熱を受け入れ続ける。お腹周りにあるえむの手を引っ張りながら、司はコンビニに向かってとろとろと歩き始めた。他愛もない会話をしながら辿り着いたコンビニ。お目当ては新商品のここのコンビニ限定のお菓子だ。


✱✱✱
めっちゃ中途半端ですがここでおしまいです。
お話を書くのって難しいねえ└( 'ω')┘ムキッ