むかしむかし 五百年前まで、この大陸は「テイワット」と呼ばれていたそうだ。巨龍が空を飛び、魔物がそこらを歩き、人々は「元素力」と呼ばれる力を操った。まるで魔法のようなその力は、今となっては伝説のような、御伽噺のような扱いを受けている。
「だーかーら、そんなのただの作り話だって」
目の前に座るこの男は、真剣に歴史書を読み漁る俺を咎めるように言った。
「人が自由に火を出したり、氷を出したりするなんて、普通に考えて有り得ないでしょ」
「でも、確かに記録は残っているんだ」
俺がなぜこれほどテイワットの歴史にこだわるのか。その理由は、幼い頃に読んだ、ある絵本にある。
その絵本の舞台はとある村で、とある英雄について語っていた。英雄は、神から授かった炎の力で悪者を倒し、民を守った。
6270