【ゼン蛍】抱き枕と欲情 目を覚ますと、外は陽が傾き始めていて少し赤らんでいた。彼の腕の中、視線を上げると彼は私が起きたことにも気付いていないかのように本を読み進めている。小さくあくびをして出来るだけ邪魔をしないように指を組んだ両手を前に伸ばせば、私を支えていた右手が私を支え直す。
アルハイゼンの家で本を読むとき、彼は何故か私を足の間に座らせたがる。何故そうなったのか、きっかけはもう覚えていない。それでも最初の方は遠慮をしたし、拒否の姿勢を見せたこともある。けれど何だかんだと気付けば彼の足の間にいて、それが何度も続けば抵抗する方が馬鹿らしくなるもので。
背中を預ける形でいたのも、今では少しでもお互いが本を読みやすいように横抱きの形になった。慣れるとその体温の心地良さに気付けば寝てしまうことも多くなり、彼のゆっくり上下する胸が更に眠気を誘い、今日も彼の腕の中で眠る始末。
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