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    Yuki_one_12

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    Yuki_one_12

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    とゃが⭐️がすきだと勘違いする🥞の話

    彰冬女体化初対面の人間から「分かりにくい」と言われる表情を緩ませて、白く陶磁器のような肌をほんのりとピンクに染めていつもよりも上機嫌に、饒舌に話す相棒。それはまるで昔姉の部屋で勝手に読んだ漫画に出てくる少女たちのように愛らしく、目が離せなくなる。
    オレは冬の夜空のように澄んだ声が他のどんな音よりも好きだ。初めて会った時から惚れ込んでいるのだから、きっとこれだけは惚れた欲目ではないという自信がある。出来ることなら一生隣で聞きたい、そう望むほどの声は珍しい上機嫌で少し上ずっていてキーの高い歌を歌ってるようで聞き心地が良い。
    けれど、オレは今ほど耳が聞こえなくなればいいと思うことは無いだろう。歌えなくなくなるのは困る。けれど今だけ、今だけはと大して信じていない神様に願ってしまう。

    「それで司先輩が.....彰人?どうしたんだ?」
    上機嫌にこの前司センパイと出かけたことを話していた冬弥の話が止まった。やばい顔に出ていたのかもしれない。
    「いや、気にすんな。それでセンパイがどうしたって?」
    咄嗟になんでもないフリをして話の続きをするように促す。自分で自分の首を絞めてる様はあまりにも無様だ。けれど苦しさよりも冬弥に悟られることを恐れるオレはどうしようもなく冬弥のことが好きで、隣にしがみつきたいと願っているのであろう。
    「私ばかり話してしまってすまない.....」
    「良いんだよ。お前はもうちょっと普段から喋った方がいい。」
    「これでも前よりは喋るようになったと思うのだが...話の続きだな。それで------」
    眉を少し下げて申し訳なさそうな顔をする冬弥。とてもいじらしくて愛らしい。それと同時に再び胸の中にドロドロとした物が溢れてくる。今すぐ耳を塞いでしまいたい。耳が聞こえなくなくなればいい。そうしたら、可憐な冬弥の顔を真っ直ぐ見つめることが出来るのだから。


    オレは冬弥のことが好きだ。具体的にいつから好きだったかなんか分からない。初めて会った時はあの綺麗な歌声に惹かれて声をかけた。けれども今思うと初めからあの美しい外見にも惹かれていたのでは無いかとも考えてしまう。クールな見た目に反して内面は少し天然で、純粋なところ。初めは固く閉ざされた心が開かれて、オレだけにふわりとした微笑みを見せてくれて、オレだけがそれを知ってるなんて傲慢なことを考えていた。それがどうしようもなく特別で独占欲すら勝手に抱いていたと思う。俺は冬弥と同じ高校に進学して、クラスこそ違うものの一緒に活動し、ほとんどの時間を共有していた。これからも冬弥の中の1番はオレでいつかそういうことになるのもいいかもしれない、そう漠然と考えていた。
    だが、その考えは高校入学後に打ち砕かれることになった。
    あいつの事は存在は知っていた。冬弥が尊敬する先輩を紹介したいと言って変人ワンツーの元へ連れてこられた時は軽く引いた。
    心酔という言葉はこの為にあるのかと言うくらい、あの変人ワンツーの声のでかい方を褒めて、今まで見た事ないくらいキラキラとした瞳で見つめる冬弥を見た瞬間、オレは失恋したと悟った。
    本人に自覚はないが、所謂幼なじみ。オレといる時はまっすぐ名前を呼んでくれた冬弥があいつを前にするとキラキラとした目で雛鳥のようにアイツの名前を呼ぶ。それで、アイツしか知らない昔の話をする。冬弥にとってアイツは恩人で、オレと出会うことが出来たのはアイツのおかげ。その事実はとても感謝している。けれど、子供のような純粋な目を向けて、アイツのそばに駆け寄る冬弥を見る度に何度もっと早く出会っていればと思ったか。
    幸い先輩が冬弥にそういう気があるとは思えず、冬弥の片想いである可能性が高いところが救いではあった。だが、冬弥の心はオレへ向いていない、その事実は変わらない。あわよくば振られてしまえばいい。そうしたら冬弥はオレを相棒以上に好きになってくれるかもしれない、けど、冬弥に傷ついてほしくなかった。だからオレはただ見守り、冬弥の話を聞くことしか出来なかった。
    「ーーーと、彰人?」
    冬弥が不思議そうにオレの顔を覗き込んできている事に気づく。心配してる顔がとても可愛いな。
    「今度の日曜日、司先輩が買い物に一緒に行こうと誘ってくれたんだ」
    そうはにかむ冬弥にオレは「そうか、良かったな」なんて思ってもないことを言う。つまり冬弥は先輩にデートに誘われたと。今度の日曜日のオフは俺が誘おうと思ってたのになんて負け犬みたいなことを考えてしまう。
    「司先輩はご多忙だから誘ってくれてとても嬉しいんだ」
    「そうか、楽しんでこいよ」
    司先輩にその気はないだろうが、冬弥からしたらデートだ。出来ることなら知りたくは無かった。終われ、早くこの話が終わってしまえと強く願っているオレの顔はどんな顔をしているのだろうか。
    「それで」
    「良かったら彰人も一緒にどうだろうか?」
    「は?」
    せっかくのデートだろ、なんでオレを誘うんだという言葉が喉から出そうになりもう一度飲み込む。
    「冬弥、先輩がオレにも来いって言ってるのか?」
    「えっ、とそう言うことではないのだが....」
    形のいい眉を下げてごにょごにょと語尾を濁しほんのりと頬を染める冬弥はまさに恥じらう恋する乙女で、もしやと考えが浮かぶ。
    冬弥は先輩と2人きりでいるのが恥ずかしいから?いや、そういうタイプか?とにかく冬弥が何を考えているのか分からない。
    「彰人!美味しいパンケーキのお店にも行くぞ!」
    「どうしたんだ急に」
    「凄く、美味しいらしい」
    期待するような目で俺を見つめてくる冬弥。あからさますぎて下手くそだが、これは暁山が俺を誘う時に使ってくる手段だ。暁山、余計なことを教えやがって。
    「行く予定のお店は美味しいパンケーキが多いらしい。だから、私のとはんぶんこしよう。」
    甘いものがさほど過ぎではない冬弥の口からはんぶんこという言葉が出たのがあまりにも可愛くて、必死になってオレを誘ってくる姿は俺のことが好きなのではないかと自惚れてしまいそうになる。
    正直、行きたくない。けれど、冬弥とパンケーキをはんぶんこ、悪くねえな。それにオレが居ればその日に万が一付き合うなんて事も起きなさそうだと頭の中で算段を立てる。
    「仕方ねえな、行ってやるよ」
    「本当か!ありがとう彰人!」
    キラキラと効果音がつきそうなほど目を輝かして喜ぶ姿は本当に可愛くて、めちゃくちゃ期待してしまう。期待して後で落ち込むことを考えると胸が痛い。
    そういえば、と思い初めに疑問に思っていたことを思い出す。
    「冬弥がパンケーキを食べに行きたいって言ったのか?」
    「違うぞ?」
    「じゃあ、先輩がか...甘いもの、そんなに好きだったのか、意外だな」
    「?先輩は甘いものは好きだが好んで食べに行くほどでは無いぞ?」

    じゃあなんでパンケーキを食いにくことになってるんだよ。


    約束の日、重い足取りで集合場所に行くと先に冬弥だけが来ていた。真面目な冬弥のことだから恐らく15分前には到着しているであろうと思いオレもそのくらいで来たが先を越されてしまった。早いなと言うと少し恥ずかしそうに「30分も前に来てしまったんだ」と言う冬弥の顔は、言われてみれば少し寝不足の時と同じ顔をしていて、センパイと会うことがそんなに楽しみすぎて寝れなかったのかと、余計なことを考えてしまう。
    オレが一方的に冬弥想いを寄せてるとはいえ、相棒同士で普段一緒に行動しているから他愛のない会話で刻々と時間はすぎていく。集合時刻5分前、このままアイツが来なければいいなんてことを考えていると、冬弥のスマホから電子音が鳴った。
    「彰人、司先輩が15分ほど遅れて来られるらしい」
    「は?まじかよ」
    「財布を忘れて家に取りに帰ったらしい。全力で走って来るから、待ってろと連絡が来た」
    司センパイが遅刻、これは好都合だ。
    このままあいつが来る前に冬弥を連れ出してしまおう。どうせセンパイが来るまで20分程時間があるのだから。あとで焦らず歩いてきてくださいとでも連絡をしよう。
    「センパイ来るまで20分くらいあるから、それまでどこかで茶でも「とーーやちゃーん!!ごめんね!!!!!!」」
    「咲希さん、おはようございます」
    「うん!おはよう!ごめんね、お兄ちゃんおっちょこちょいだから、財布忘れてきちゃったみたいで....」
    突然現れてオレのデートの誘いを遮った金髪ツインテールの女。財布を忘れてきた、お兄ちゃん、ということはもしや。
    「あっ、貴方が彰人くん?私、天馬咲希って言います!いつもお兄ちゃんがお世話になってます。今日は私が無理を言って来てもらってありがとうございます!よろしくね」
    「どうも、東雲彰人です。こちらこそよろしく」
    あいつの妹にしては、案外礼儀正しくて、まともだな、いや、あいつも礼儀正しくない訳ではなくただただ変人なだけだ。天馬妹が無理を言ってきてもらった?だから冬弥がオレを強引に誘ったのかとわかって露骨に落ち込む。小声で「どういう事だ」と冬弥に耳打ちするとバツが悪そうに「咲希さんがどうしても私の相棒の彰人に会いたいというから...」と言う。なぜ司センパイの妹がわざわざオレに会いたいなんて思うのか。あれか、お前の兄貴と冬弥は既に家族公認の仲だから俺が邪魔とでも言いたいのか。考えれば考えるほど悪い方向に進んでしまい苛立ちは積み重なっていく。そんなオレを他所に女子2人は親しげに談笑している。
    「とーやちゃん!今日もかっこいいね!もしかしてこの服、彰人くんに選んでもらったんしない?」
    「咲希さんも素敵ですよ。そうなんです。彰人に選んでもらって...彰人はセレクトショップでアルバイトもしていてお洒落だから、いつも服を買いに行く時は彰人と一緒なんです」
    「えっほんと!?!彰人くん!!」
    「あ、はい。そうですけど…」
    はにかみながら言う冬弥と無駄にキラキラした目で見つめてくる天馬妹にむず痒さを感じる。天馬妹に言われて初めてまともに冬弥見れていなかったことに気づいた。冬弥はいつもの格好だな。当たり前すぎて気づかなかった。センパイに会うならもう少しストリート寄りじゃない服を着てくると思っていたから、いつも通りにオレが選んだ服を着てる冬弥を見て優越感が沸きあがる。
    「彰人くん、とーちゃんのこと見つめ過ぎだよ〜」
    天馬妹ににやにやした顔で言われて今度は見すぎてしまっていたことに気づく。言われて初めて見られていることを意識したのか、みるみるうちに涼し気な冬弥の表情が少しだけ色づいていく。
    「今日は彰人に前言われたみたいに服を合わせてみたんだ。もしかしておかしかったのだろうか...?」
    「かわ...いや、似合ってる。すごいいい」
    思わず本心を言ってしまいそうになることをグッと堪えて、取り繕う様は本当に情けなさを感じる。ほんのりと頬を染めておずおずと聞いてくる冬弥が凄く良くて、このまま見つめあっていたいが、何か言いたげな目でこっちを見てくる天馬妹の視線がとてもムズムズする。悔しいが司センパイが来ることを願っている自分がいることを昨日の自分は笑うだろう。
    「オーーーーーイ!!!!!!」
    「げっ」
    バカでかい声が急に聞こえてきて、驚きのあまり失礼な声が出てしまった。あれだけ来て欲しいと思っていたのに失礼だ、と思い声の方向に視線を向けるとそこには、満面の笑みで高笑いしながら手を振り、全速力で走ってくる司センパイがいた。
    「もーー!おにーちゃん!!そんな大声出して走ってこないでよっ!」
    「司先輩!おはようございます」
    実の妹でもちょっと怒っているのに、なぜ冬弥は笑顔で挨拶してるんだと言いたくなる。
    「咲希!冬弥!!待たせてすまない!!!!
    おおっ!!!彰人も来てくれたのか!!!!!嬉しいぞ!!!」
    まだ10mは離れているはずなのに既にうるさい上に自分の名前も大声で叫ばれるのはキツい。
    前言撤回だ、来るな。
    どうやって他人のフリをしようか、そもそも来るんじゃなかったとまだ集合すらままならないのに考えてしまう。己の変わり身の速さに呆れながら台風みたいなセンパイが直撃するのを大人しく待つことにした。

    「いやーー!!すまない!!俺としたことが、まさか財布を忘れるとは!!!」
    近くで聞くと更にうるさい。
    周囲がさっきからジロジロとこっちを見ている視線にはきっとセンパイは気づいていないのだろう。
    「気にしないでください。忘れ物は誰にだってある事ですから。」
    そんなセンパイに優しくフォローする冬弥を見るとなんでオレじゃなくてアイツがいいんだと、オレだったらと僻んでしまう。
    「彰人もわざわざ来てくれたのにすまないな。今日は来てくれてありがとう!」
    横目で冬弥を見ているといきなりセンパイに話かけられてビクリと肩が揺れる。
    「まあ、別にいいですけど....」
    ぎこちない返事を返すと、「ありがとう!」とまたでかい声で言われ周囲の視線が一気に集まる。こんなに視線を浴びるのはステージの上だけにしてくれ。
    「お兄ちゃん、2人とも優しくてよかったね」
    「そうだな。咲希も先に行かせてしまってすまないな。」
    「いいの、いいの!」
    そんな兄妹の会話を微笑ましいと言わんばかりの表情で見守る冬弥は見とれるくらい綺麗なのに、言いようの無い鋭い痛みがオレの胸を刺した。
    「彰人、冬弥、待たせてしまったな。目的の場所に行こうじゃないか!」
    「そうですね、あまり公共の場で立ち止まるのも迷惑になってしまいますから。」
    冬弥の言葉に全くだ!と答えるセンパイに自覚があったのかと失礼ながら感心した。そういえばパンケーキ以外の目的の場所を聞いていなかったなと思い冬弥にコソッと「これからどこに行くんだ?」と聞いたらセンパイと一緒にショッピングモールでお買い物をして最近話題になっていたパンケーキに行ってsnsで話題の夕日が綺麗に見える「ばえすぽっと」とやらに行くらしいと言っていた。明らかにデートルートのような予定だ。どっちから行きたいと言ったか知らないが、本来ならセンパイと冬弥の二人で行くべきではないのかと勘ぐってしまう。そんなこと、俺としては全くもって不本意でしかないけれど。

    4人というのは実にキリがよく、反対に全員で会話することは歩きながらという点においては非常に難しく、結果的に2人と2人に別れるのが定番の人数だ。だからこそ、道中はセンパイと話すのも、その妹と話すのも関係正常気まずさを感じざる得ないと思い当たり前のように冬弥と話そうと思っていた。
    が。
    「ねえねえ!彰人くん!普段とーやちゃんとどんなお話をしてるの?」
    「どんなって、音楽の話だよ」
    なぜ。
    「そっかー!やっぱり相棒だし、他にも一緒にチーム組んでるって言ってたもんね!」
    「まあな。」
    なぜ、天馬妹と二人で会話することになってしまったのだろうか。

    続きます!!!
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