風する馬牛も相及ばず、されど琴瑟相和す1昔々、月に住まう神様が美しい人と出会い子供を授けました。その神様の子供は豊穣の力を与えられ、雄牛でありながら乳を出し、その乳を飲んだ者は死にかけた者さえ生きる活力を得たとさえ言われた。
そうして、人々を助けた神様の子供は豊穣の国の王となったそうな。
牛の獣人の中には、この王と同じ権能を持って生まれる事が偶にあり、その者を人々は「聖なる牛」と呼び血眼になって探すようになった。
「聖なる牛」は、一人しか生まれず、その一人が死ぬまで新たな者が生まれないとされていた。
それ故にカウラヴァ公国では、「聖なる牛」の特徴であるアメジスト色の髪を持つ男子は、誘拐される確率が高く、生まれた場合王宮で保護される事が義務付けられていた。
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