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    pandatunamogu

    降新文をポイポイします

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    しんどいセフレ降新の続き

    ##降新
    ##セフレ

    キミのココロ、ボクのキズ-2-           2.

     何だか様子がおかしかった降谷を目の当たりにしてからひと月が過ぎても、ふた月が過ぎても、パッタリと彼から呼び出しの連絡が入らなくなった。
     今までもさほど頻繁とは言いがたかったが、それでもこんなに間が空くことはなかっただけに、新一の心にボツボツとした黒い不安のシミが拡がっていた。
     向こうから連絡が入らないのであればこちらからメッセージを送るばいいのではないかと思うかもしれないが、降谷とこのような関係になってから、一度も新一の方から連絡を入れたことがないため、なかなか勇気が出ないと言うのが本音だった。別段、降谷から『君からは連絡してくるな』と言われている訳では無い。ないのだが、それでも何となく普段の彼の態度から、気安くメッセージなどを送って許されるような関係では無いのだろうなと悟っていた。だからこそ、新一から連絡を入れることは、まだ一度もないのだ。

     日に日に心の黒いシミが拡大していく中、捜査一課からの要請を受けて現場に出向いた新一は、四時間ほどで事件を解決した帰り、どうせなら外で軽く夕飯を済ませてから帰ろうと思い立ち、フラリと立ち寄った居酒屋のカウンターの奥で、意外な人物を見かけてしまい、少しだけ息を飲んで、心臓がキュ、と縮んだような錯覚を覚えた。
     カウンターの一番奥には、新一もよく見知った風見が座り、その隣には────二ヶ月も連絡を寄越してこない男の背中が見えた。そうしてその隣には、新一も何度か顔を合わせたことがある、風見よりも後に降谷の部下になった緑下という男。
     長身の風見や降谷と並ぶと、ずいぶん小柄に思える。体格も先の二人に比べれば華奢で、どちらかと言うと新一と近しいものがある。新一ほど造形が整っている訳では無いが、どちらかと言うと童顔で可愛らしい顔立ちをしており、笑うと小動物のような愛くるしさがあることを覚えていた。
     もし気づかれてしまったら、とドキドキと胸を高鳴らせながら彼らの背後を通り過ぎても、三人に気づかれることは無かったが、ちょうど通りすぎる際に緑下が降谷に話し掛けている声が耳に入った。屈託のない覇気のある声だ。

    「ええ!? 降谷さん恋人いないんですか!? 仕事柄ですか?」
    「いや。別にそういう訳じゃないんだが……あまりモテるタイプでも報われる質でもないんでな」

     まるで上司と部下の緊張感がない、いっさいの壁を取払ったようなその会話と態度に、新一はそそくさと彼らから一番離れたテーブル席に座り、深く俯いて胸にどす黒く拡がっていく暗澹たる感情に耐えていた。

    ────なんだよ……。俺には二ヶ月も音沙汰なしで……よほど忙しくして家にも帰れない日々が続いてンのかと思ってたら……ワイワイ居酒屋で飲み食いする時間、あるんじゃねぇか。

     別に、自分は彼にとっての特別な存在なんかでは無いけれど。それでも、とチラリと今一度カウンターに目を向ければ、新一には見せたことも無いような笑みを浮かべ、ずいぶんと気を許したように緑下と話す降谷の横顔を目の当たりにしてしまい、呼吸を忘れる。

     胸が、苦しい。
     奥までまるで鉛を飲み込んだように重く、うまく呼吸ができない。
     もう視界になど入れたくないのに、それなのに気になってしまい、また視線を向けてしまう。

    「いや、絶対謙遜でしょう! こんなに顔よし声よしスタイルよしで、オマケにエリートキャリアで色気もあるとなったら、周りが放っときませんって。何なら自分、降谷さんならOKですもん!」

     どくん、と。滑稽な程に、鼓膜にまで響くほどに鼓動が跳ね、喉が干上がっていく。
     そう、よくある掛け合いだ。
     新一自身、その手の台詞を言われることは少なくない。その多くは本気などではなく、あくまでも冗談だ。同性から見てもOKだしたくなるくらいいい男だとの賛辞に過ぎないことも、頭ではわかっている。そこに特別な意味など含まれてはいないと、そう思っているのに────嫌な感情が、ズクズクと胸を蝕んでいく。
     どうしても降谷の反応が気になって、やめておけばいいのにそちらに目を向け────まるでトドメを刺された気分だった。

    ────っなん、で……。何でそんな……マンザラでもなさそうな顔して笑うんだよ……。俺には笑顔なんて見せてくれたことも無いくせに……。なんでそんな風に優しげに笑うんだよ…………っ、……なぁ、降谷さん。俺は…………俺は…………。

    「……っ、くそ……」

    ────アンタにとっての俺って…………いったい何?

     嗚呼。目の前が面白いほど────真っ暗だ。

     あの日、どうにもおかしかった降谷の様子に、正直にいえば期待してしまっていた自分が心底愚かしいと、新一は頭を抱えて項垂れたくなった。あの時降谷が浮かべていた表情がまるで、新一に恋焦がれているように見え、想えども報われぬ焦燥とやり切れなさに揺らぐ瞳は確かに痛いほど覚えのあるもので。いつも抱かれて帰った直後に自宅の洗面台の鏡に映る己の顔に酷似していたからこそ、期待をしてしまったのだ。

    ────もしかして降谷さんも俺のこと…………なぁんてな。アホかよ俺は。

     チラチラと視界の端に写してしまう降谷と緑下の楽しげなやり取りを確認するたび、自分には見せたことも無いような穏やかな表情や微笑みを見せつけられる度、虚しさだけが募っていく。
     結局その日、新一はその居酒屋で何を注文して飲み食いしたのか覚えていないほど、終始打ちひしがれていた。

     居酒屋の一件から一週間後、久しぶりに降谷からメッセージが入った。二ヶ月間も放置したことには一切触れず、【今夜の予定は】という味も素っ気も愛想すらもない端的なものだった。

    「……は。可愛くて若い部下には極上の微笑みと穏やかな眼差しと優しく明るい受け答えで? 俺にはセックスできるか出来ねぇかの確認だけってか? はは……ウケる」

     ズクリ、ズクリ、ズクリ。自分で口にした言葉で自身の傷をさらに抉り、無気力に事務所のデスクチェアに沈み込む。無意識に了解のスタンプを押しかけた親指が、ピタリと止まる。
     このままいつも通り『了解』のスタンプなり答えを送れば、またいつもの虚無の繰り返しだ。どれだけ新一が望んでも、あの緑下に向けるような穏やかで優しい態度は自分のものにはならない。風見に対する時ともまた違う、甘さと優しさを綯い交ぜにしたようなあの微笑みに、あの眼差しに、名を付けるとするならば────……

    「……まさか……降谷さんが片想いしてる相手って……」

     カチ、と。頭の裏側の奥の方で、なにかのピースがはまる残酷な音が響いた。
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