それでは、良い終末を。【仁玖】 悪夢というやつは、どうにも質が悪い。
これでもかというほど悪趣味な内容でこちらを追い詰める。目を醒まし現実に逃げ帰ったとて、重苦しい気分はなかなか消えない。こちらに選択権などないので最悪だ。夢は所詮現実ではなく、悪夢でさえその例に漏れず、脳の働きのひとつであるのだと分かってはいても。
舎利弗玖苑は、その日の朝も何となく気分が優れなかった。こうも連日連夜悪夢が続くと流石に堪える。寝台の中ではたと目を醒まし、寝返りを打った後に大きく溜息を吐き、心底大儀そうに起き上がる。ベッドのスプリングが僅かに軋み、その肌の上を、冷えた掛布ばかりが滑っていく。
環境が変われば多少は眠れるだろうと思っていたのだが、結局はいつもと一緒だ。場所など関係ない、要は自分自身の問題なのだと、……未だ悪夢の名残が尾を引く中で、鈍く軋むこめかみを揉む。
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