蜂蜜の海に溺れちまえ【加筆修正版】※※支部掲載中の同タイトルの加筆修正版。
※※支部の方もいずれ此方に差し替える予定。
壁一面に嵌め込まれたアクリルガラス。分厚く透明なガラス板越しに魚たちを見つめる横顔は、同性の目から見ても格好良かった。前額から鼻筋、唇から顎先まで、はっきりとした顔立ちのラインには非の打ち所がない。幻想的な青に染まる金色の髪。灰青の瞳。大水槽を照らす明かりが水面からゆらゆらと差し込んで、光の影を端正な顔立ちの男に落とす。
じっと見つめていると、気付いたように男が顔を向けた。
「どうかしたかい?」
「……何でもないです」
見惚れていたとは言えなかった。言ったところで微妙な空気が流れるだけだろう。素直な感想とはいえ、反応に困らせることは本意ではなかった。
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