新刊進捗私を撫でる手は、優しい。
うつらうつらと陽だまりの中にあって、薄く目を開け、眩しさにすぐまた閉じる。
最近の中では一番上手に撫でてくれる、この男の手が好きだった。
今、住む家は決まっていないけれど、どこかの家でご飯をもらい、少し接待してやり、また好きなところに散歩に行く。そしてどこかの家でおやつをもらい、少し接待してやり、また次のところへ。
接待するといっても、撫でられるのは誰でもいいわけじゃない。構われ過ぎず、弱すぎず、強すぎず、いい塩梅の。柔らかい手も、硬い手もたくさんあった中で、最近のお気に入りは、この男のところだった。
色々な家に顔を出す私のことを、みな好きなように呼ぶので色々な名前があるけれど、この男は私のことを呼ばなかった。
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