鐘の鳴る前に起きるーーー軍人時代に染み付いた癖は一介の私立探偵となった今でも変わらない。体にかかった毛布をめくって周りを見渡すと、カーテンが薄明るく光っているのを見つけた。
「……」
光の漏れるカーテンを開けようと思い立ち、やめる。隣で静かに寝ている居候は随分と日差しに弱いから、陽光で焼くような起こし方をするのは気が引けた。
「ほら、起きろ」
かわりに軽く揺すってやる。彼は少しだけ身じろいだあと、すぐに寝息をたてはじめた。