涼を求めて 暑い日々が続き、学生アイドル達も夏休みに入り、昼間でも賑わうようになった星奏館の中庭に、見慣れない物が設置された。
「これはなんだ英智」
額に流れる汗を拭い、メガネを直しながら敬人は尋ねた。
「ああ、これはね、素麺流しというんだよ」
「素麺流しとは、もっと真っ直ぐなものではなかったか、割った竹を使っていたような」
目の前の装置は、ドーナツ型になっており、外側を水が流れ、溢れたものは内側へ流れていっている。
「さっそくやってみようか」
「素麺茹で上がったっすよー、お出汁もすごくいいのがとれたっす」
大量の素麺と共に現れたのはニキ、茨、そしてゆうた。
「君もどうだい」
「えっちゃんのお誘いなら、もらおうかな」
涼しい木陰で寝ていた凛月も合流。
そして賑やかに流し素麺大会が始まった。
「冷たくておいしいっす、いくらでもいける」
「これはこれは、回っているので無駄がなくて良いですね」
「蓮巳先輩食べないんですか」
皆が楽しく素麺を食べているなか、食が進まない、いや進められないメンバーが1人。
敬人は、素麺を捕まえてもあげようとすると流されてしまい掴めない。
「英智、これはなかなか難しいな」
少しずつつまんですすっているのをクスリを笑って告げた。
「これは流れを僕にあわせてあるからね」
つまり左利きなら容易につかめる方向になっているので、右利きの敬人には苦戦していまうのだ。
思えば他は左利きばかり。
「全く度し難い」
「はいどうぞ」
凛月が、大量に麺を入れてくれた。それはもう大量に。
「お前は加減というものを知らないのか」
「えーいっぱい食べなよ」
「わかった、ありがとう」
くるくる回る素麺流しは流れを逆に変えることもできたので、夏のレジャーとして重宝されたとか。