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    無理太郎

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    無理太郎

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    現パロ風守護獣ファンタジーの第八話です。このシリーズは恒刃を主として書いてますが、今回はそんなにカップリング色がありませんすいません。丹恒くんが少し景元さんにときめく描写がありますご容赦下さい。

    悔恨「こちらは守護獣の関わる問題を多く取り扱う探偵事務所だとお聞きしました。是非、当社の問題を解決に導いて欲しいのです」
    俺は本日の客人のお茶の用意をしている。前にカフカから教えて貰った、美味い紅茶の淹れ方を思い出しながら客人の依頼の内容を聞いていた。客人の目の前のソファに座っているカフカが応対している。
    「ええ、守護獣の関わる問題なら何でも承るわ。それにしても驚いたわ。そちらの会社の社長さん直々にメールが届いたのだもの」
    今日の客人は、雲騎警備保障というこの国でNo.1の評判と実績を誇る警備会社からの依頼者だった。この探偵事務所でここまで規模の大きい依頼人は初めてだ。忙しい社長の代わりに秘書が来たらしい。
    「ええ。この問題には社長も頭を抱えておりまして…当社の評判にも関わりますので、どうか秘密裏にお願い致します」
    一体どんな大問題が待ち受けているのだろうか。俺は一滴も零さないようにそっと紅茶を運び、慣れない手つきながらも紅茶とお茶菓子を差し出した。
    「…美味しい」
    紅茶を飲んで、重苦しい顔立ちだった秘書の顔が少し綻ぶ。俺は内心ガッツポーズを取った。
    「その社長さんをも困らせる問題というのは?」
    「…当社の屋上に、猫耳を生やした男性らしき幽霊が朝方でも昼間でもお構いなく出てくるんです」
    お茶を差し出した後で良かった。話の内容のあまりにもの衝撃にきっと俺はお茶を落とし、カフカの選んだ来客用のティーセットをまるごと割っていたことだろう。
    「猫耳を生やした男性」
    カフカも思わず聞き返していた。
    「聞き込みをしたところ、恐らく人型の男性、らしき幽霊かと…姿形が透けていたようですから」
    そんなのと守護獣がどう関係あるんだ?俺の心理を読んだように秘書は続けて話す。
    「その猫耳の男性が元々守護獣だったのではないかと言ったのはうちの社長です。その幽霊に会った…幽霊相手に会ったと言ってよいのでしょうか?とにかく社長の守護獣がそう言っていたようなのです。私も最初は耳を疑ったのですが…」
    「…時たま、守護獣が死んだ主の生前の姿をとる、という話は聞いたことあるわね。もしかしたらその守護獣は元々猫だったのかもしれないわ。だから猫耳が生えているのかもね」
    「そういった事例もあるのですか!流石ですね」
    「それか生前、毎日猫耳を付けていた男性だったのか」
    「何方かと言えば、守護獣が化けた姿だと思いたいです」
    俺もそう思う。
    「その守護獣らしき幽霊の何が問題なのかしら、悪さをして困らせてるの?」
    「…その幽霊を見た人間は皆、ほぼ半日深く眠ってしまうのです。朝方でも昼間でも夜勤中でも関係なく。」
    なんだそれ。
    「社長もその幽霊を見た途端、大切な取引先との会議があったにも関わらず寝てしまいその日起きることはありませんでした…元々よく眠る方なのですが、このような事は今迄一度もありませんでした」
    「その会議、大丈夫だったの?」
    「うちの副社長が張り切って社長の代わりを務めた為、大丈夫でした」
    そういえば雲騎警備保障のホームページを見たところ、副社長と社長の顔写真とコメントが乗っていた。社長にしては若く見える髪の長い男はまあ普通に見えたが、副社長の方はどう見ても子供に見える桃色の髪の女だった。しかし会社を紹介するホームページに嘘の写真を載せる訳がない。本当にあの少女は副社長なのだろう。
    「気絶させる訳でもなく、ただ眠らせる守護獣の亡霊…その守護獣の元々の能力なのか、その守護獣が何か眠らせることに固執している可能性…まあ行ってみないことには分からないわね、引き受けましょう」
    「ありがとうございます!」
    そしてやっぱり俺と丹恒の二人でその会社に行くことになり、カフカは他の仕事に行ってしまった。あと「だってお化け怖いものー」とか巫山戯たことを抜かしていた。そんな訳が無い。猫耳の男性型守護獣とかそういう内容を抜きにして、あいつにこの世で恐れるもの等存在しない。それは自信を持って断言できる。
    「応星さん、黙ってるけどどうしたんだ?もしかして、幽霊が怖いとか…?」
    「…お前、俺が本気で猫耳の生えた幽霊を怖がると思ってるのか?」
    「いや、幽霊が苦手な人はどんな形でも怖がるものかと思って…此処か。想像してたよりも大きな会社だ。本社だから当たり前なんだが…」
    摩天楼のようにそびえ立つ雲騎警備保障の本社に到着した。既にアポは取っている為、受付で名乗ると訪問者が付けるネームプレートを渡されただけですんなり通してくれた。そうでないと困るのだが。
    猫耳の男性型守護獣の幽霊が出現するという屋上へはエレベーターで一気に辿り着くようだ。何でも屋上緑化を設計しているとかで、社員の憩いの場として人気だったようだ。それが今回の幽霊騒ぎで社員達が寄り付き辛くなったという。
    「…あれ、景元社長じゃないか?ネットで見たような…」
    屋上に入る前の扉付近に、なんとこの会社の社長が居た。俺には望まなくとも他人の守護獣が視えてしまう為、この社長の守護獣も自然と目に入った。威風堂々とした、蒼い瞳の大きな白い獅子だ。
    「驚かせてすまないね、私はこの会社の取締役をしている景元という。ぜひ依頼をさせて貰った君達に直接会いたいと思って…ん?」
    景元社長が俺を見て驚いたような顔をしている。なんだろう。探偵業をやっているわりには柄の悪い奴だと思われたのだろうか。
    「君…応星じゃないか!?私のことを覚えていないかい!?昔、隣に住んでいてよく遊んだんだが…」
    「…応星さんのこと、ご存知なんですか!?」
    俺の身体が一気に強張る。俺の過去を知っている人間にとうとう出逢ってしまった。何が遭ったのか分からない過去。思い出せない、思い出してはいけない理由のある過去のことを。何も言わない俺を見て、景元社長は少し悲しそうな顔をした。
    「…忘れてしまったかな、流石に…何しろお互い本当に子供の頃だったから…君は7歳ぐらいの頃にはもう羅浮から引っ越してしまったからね…」
    「…羅浮?」
    羅浮という地名は聞いたことがある。丹恒の出身地だった筈だ。子供の頃の知り合いだと聞き、少し緊張が解れた。
    「え、応星さんって羅府出身だったのか?通りで名前が羅浮の人間っぽいなとは…」
    「…だったようだな。まさかお前とこちらの社長と俺が同郷だったとはな」
    「?」社長は不思議そうな顔をしている。
    「景元…さん。言い遅れてすまないが…俺にはここ1年以上前の記憶が無い。本来ならそれ程仲が良かったあんたのことも覚えていただろうが…」
    「…え」
    「応星さんは何らかの事情があり記憶喪失になってしまって…自分が子供の頃の記憶も、羅浮から出てからの記憶も無いんです」
    「…そう、だったのか…それは大変な思いをしただろう。記憶喪失…どんなことが遭ったのかは分からないが、君が今此処に居てくれて嬉しいよ。応星。元気で居てくれて、本当に嬉しい」
    景元社長は花の綻ぶような笑顔を見せた。子供の頃の記憶しかないというのに、ひと目見て成長した俺と分かる程には仲が良かったのだろう。こんな朗らかな人を覚えていない事が哀しく、俺にもそんな友達が一人でも居た事を嬉しく思う。
    「…と、君も羅浮出身だと言っていたね。応星とも親しいようだ。名前は?」
    「丹恒といいます」
    「良い名だ。丹恒くん。どうか応星のことを宜しく頼むよ。今回の厄介な件の事もね」
    景元社長はふわりと柔らかに丹恒に微笑みかける。丹恒は少し照れた素振りを見せた。ん?どうして照れた?こいつはどんな美人に声をかけられても動じない奴なのに珍しい。
    「社長、そろそろお時間です」
    どこからともなく、探偵事務所にやってきたあの秘書が声をかけてきた。
    「ああ、君達ともっと話していたかったのだが…こんな所で立ち話も良くないね。それではまた。私にはあの守護獣の幽霊、どうもそんなに悪い子には思えないんだが…専門家に任せるよ。どうか気を付けて」
    社長は手を振り、この場から去った。なんだか春の陽だまりのような暖かさがあった、本当に魅力的な人間だと思った。
    「…応星さんに少し似てて、その…綺麗な人だったな」
    綺麗だったのには同意見だが、全然似ていない。どうしたんだこいつは。俺に似ていた所といえば、声がまあまあ低くて、背丈が高い所と長髪で片目が隠れている所ぐらいか。年齢もまあ同じぐらいだろう。………
    「…丹恒。お前もしかして、このぐらいの年齢で長髪で長身の男が好みなのか?」
    「そ、そんな単純な理由ではなくて、ええと、その…ま、まあ、そんな事は良いだろう。早く事件を解決しよう」
    そんな事ってお前から言い出したんだろ。丹恒はぎこちない動きで屋上へ続く扉を開けた。明るい日差しが入り込んでくる。
    「気を引き締めろ。その守護獣を見てしまっただけで眠りに落ちる可能性があるからな」
    お互い守護獣を出して臨戦態勢になる。景元は悪い奴には見えなかったと言っていたが、何しろこちらが一方的に眠らされては元も子もない。せめて会話ができると良いんだが。
    見てはいけないのなら、見なければ良い。俺と丹恒は持ってきていたゴーグルをかけ視界を遮断し、守護獣から伝わる感覚のみで屋上を歩いた。なんとも原始的な作戦だし、守護獣の幽霊がこちらを視認しただけで眠らされてしまうのでは意味が無い。眠らされてしまう前に攻撃を仕掛ける他ない。
    それにしても、ビルの上だと忘れてしまいそうになる程広い屋上だ。緑と花の匂いがする。小鳥の鳴き声。風のそよぐ音。その中に一つ、生き物ではない異質な気配がした。己が視認するより先に俺の狼と丹恒の龍が襲いかかる。
    「ままま待って下さいにゃああ!!!!」
    …成人男性の声でにゃああと聞こえた。驚きのあまり咄嗟にゴーグル越しに声のした方向を見てしまった。しくじった!あっち側の油断させる為の作戦かもしれないのに。
    「…応星さん、どうやら警戒を解いても良さそうだぞ」
    見ると、身体の透けた、スーツを着た成人男性がしゃがみこんでぷるぷると震えていた。猫耳はしょげて、強張った茶色い尻尾が身体に巻き付いている。しかしこれも作戦かもしれない。試しに守護獣の狼の手でちょん、と肩を叩いてみる。
    「にゃっーーー!!勘弁して下さいにゃ!!」
    演技ではなさそうだ。今度はこの巫山戯すぎた語尾が気になって仕方がない。俺と丹恒はゴーグルを外す。
    「ね、眠らせないから…攻撃しないで下さいにゃ…僕は戦闘向きではないんですにゃ…こんな大きな狼と…蛇みたいなの…無理ですにゃ…」
    「分かった。攻撃しない。害は加えないからその巫山戯た喋り方はどうにかならないか」
    「どうにも出来ないですにゃ。あるじはいつも敬語で話す人で、僕はにゃあとしか鳴けなかった守護獣ですにゃ。あるじの姿をとってから、こういう話し方になったんですにゃ」
    猫耳の生えた男性型の守護獣はちらりと上目遣いで此方を見る。涙目で相当怯えているようだ。丹恒の龍が特に恐ろしいらしく、龍と目が合った途端「…」と固まってしまった。丹恒が龍を遠ざけると、守護獣は何とか立ち上がった。
    「…これで話せるな?如何して人間を眠らせてきたのか、如何してこんな所に居るのか教えてくれ」
    「…にゃ」
    猫耳の守護獣は横にあったベンチに座り、ぽつぽつと話し始めた。
    「…僕のあるじは、働き過ぎで死んでしまったんですにゃ」
    「…まさかこの会社にいたのか!?」
    「いえ、お隣のビルの会社で働いていましたにゃ。でもあるじが働き過ぎで死んでから、その会社は潰れましたにゃ。僕には詳しい事は分からなかったけど、色々悪い事をしてた会社だったみたいですにゃ」
    良かった。いや人が死んでいるから良くはないのだが。雲騎警備保障がもれなくとんでもないブラック企業だと知らされる所だった。その隣のビルの会社は社員の過労死を出してから、芋づる式に悪事が露呈したのだろう。
    「僕はあるじが死んでもなんでかこの世界をうろうろしてましたにゃ。あるじは働き盛りだからといって会社の言うとおりに寝ずに働いてましたにゃ。きっとあるじが死んだのは寝てなかったからだと思いましたにゃ。だから、会社でいっぱい働いてるひとが死なないように、寝かせることが残された僕の使命だと思って、働いてるひとがいっぱいいるこのビルに来ましたにゃ。そして、ひとを見ると眠れ眠れとお祈りするようにしてましたにゃ。すると僕を見たひとはみんな眠るようになっていきましたにゃ」
    「元々眠らせる能力を持っていた訳では無かったのか。お前にはよほど此の世に未練があったと見える。それは主のように過労死した人間をこれ以上増やしたくなかったことなんだな。」
    自分の龍を遠ーーーくに遠ざけた丹恒が男性の姿をした守護獣に話しかける。
    「…にゃあ。でも、今更こんな能力を持っても遅過ぎますにゃ。いちばん寝て欲しかったあるじはもういないのに…あるじがいた頃に、この能力を僕が持ってれば…しかも、あるじの姿で、どうやらひとにいっぱい迷惑かけてたみたいですにゃ…ごめんなさいにゃ…」
    猫耳の守護獣は泣きそうな声をあげる。この守護獣の主は相当優しい人物だったのだろう。でないと守護獣もこうはならない。
    「お前は善意で人間を眠らせていたのだろう?それ自体は罪じゃない。主が亡くなったのもお前のせいでは決してない。責める者など誰もいない。お前の主もきっとそうだ。」
    「優しいお言葉、ありがとうございますにゃ…でも、僕は…後悔のきもちでいっぱいで、いっぱいで、いっぱいで…いっぱい悪いものを呼んでしまったみたいなんですにゃ…ごめんなさい、ごめんなさい…」
    「悪いもの?」
    途端に、俺の狼と丹恒の龍が空に向かって激しく唸りだす。高い空から、来る。青空の中におぞましい何か、悪意と怨恨に満ちた、蠢く黒い塊が。
    「…あれは…」
    本能が警鐘を鳴らす。あれに近付いてはいけない。関わってはいけない。しかし『あれ』側から此方へ寄ってくる。『あれ』の声のようなものが聴こえてくる。男女の区別もつかない、人間とも思えない声が。
    「たすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけて」
    黒くて蠢くものは、とうとうこのビルにやってきた。猫耳の守護獣の真上に辿り着くと、その守護獣を取り囲むように黒い靄を伸ばした。いや、靄ではない。真っ黒な、犬の腕、猫の腕、様々な獣の腕、人間の腕のような蠢く何かを伸ばしている。
    「そいつに触れるな!!」
    丹恒の龍が靄に飛びかかる。だが、飛びかかった黒い靄は分散しただけだった。俺の狼が噛み付いても、またもや分散するだけだ。散り散りになった靄からは相変わらず耳障りな声がする。
    「くるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしい」
    この黒い塊はこの守護獣を連れて行こうとしている。それだけは阻止しないと、こいつもこの黒い塊に取り込まれてしまう。如何したらいい。俺達だけで如何したらこの守護獣を護ることができる。丹恒の龍の水の攻撃も効果が無い。この場にあいつさえ居れば…
    「はぁ~疲れた、間に合って良かったわ~」
    背後から聞き慣れた、間延びした女の声がした。すると、分散した黒い靄が光る糸に絡め囚われる。そうして出来た光る巨大な蜘蛛の巣に、巨大な蜘蛛が王のように鎮座していた。蜘蛛は巣に囚われても尚蠢いて奇声を発する黒い靄を、むしゃむしゃと喰らい始めた。喰われた黒い靄からは耳をつんざく悲鳴のようなものが聞こえた。しかし蜘蛛が靄を喰らい終わった後には、悲鳴も聞こえなくなった。
    「もう大丈夫だ」
    俺は猫耳の守護獣に声をかけた。守護獣はぼおっと空を見上げ、泣いている。
    「…あるじ…」
    俺が涙を拭おうと手を伸ばした先には、もう守護獣はいなかった。成仏したらしい。どうか主と再会できることを、此方としては祈るしかない。
    「…ありがとうございます。驚きました。カフカさん、今のは…」
    消えた守護獣に手を合わせていた丹恒が口を開いた。
    「丹恒くんにはまだ見せたことなかったわね。さっきのが私が探偵事務所を続ける理由よ」
    「来るなら来ると言え」
    「元々来るつもりは無かったのよ〜?今回のは悪意の無さそうな子だったし。こっちの依頼が終わってまあ顔でも出してみようかなと思ってこの会社に来たら、美味しそうな匂いがしたから慌てて来たのよ」
    「美味しそう?あの黒い塊みたいなのが、ですか?」
    「私の『この子』にとってはね。」
    カフカは自分の守護獣である蜘蛛を隣に添えて語る。
    「『この子』は守護獣を狩るのが大好きなの。でも、人間を護る守護獣を狩るなんてとんでもないでしょ?でも主を喪って悪さをしたり、ああいう悪い塊になった守護獣だったもの達は狩っても問題ない。それで探偵事務所を開いて、わざわざ危ない依頼を請け負って狩りをさせて頂いてるわけ」
    「それで、たまに守護獣ハンターとか言ってたのか…俺の龍の攻撃も効かなかったのに、凄いですね」
    「あれって攻撃しようとか消そうとか思うより、『食べよう』とする意思が大事なのよ。丹恒くんも刃ちゃんも今度あれに遭遇したら『喰ってやろう』と思ってかかると案外もぐもぐいけちゃうわよ」
    「…喰う…ですか…あれを…」
    俺と丹恒は青ざめる。
    「あんなもの喰いたくない。みんな貴様ほど悪食じゃないんだぞ。身体の何処かを悪くしそうだ」
    「じゃあもう私の身体悪い所ばっかりになっちゃうじゃないの〜。それに食べてるのはあくまでも守護獣が、なんだから」
    「…あの守護獣だった者達は、やはりあいつを連れて行こうとしていたのか」
    「でしょうね。あの守護獣だった者達って、主を喪って深い後悔をした守護獣や恨みを持った守護獣を引き入れては大きくなっていくみたいなのよね。そしてあの悪い塊になった者達は、必ず生きている人間にも守護獣にも悪影響をもたらすわ」
    「殆どの守護獣は主が死ぬと消滅するのに、ああやって稀に生き残ってしまう守護獣が居るのは何故でしょう…」
    丹恒の疑問に、カフカは肩をすくめる。
    「それも謎なのよねえ。守護獣についてはほんとに分からないことだらけ。ただ、自分が産まれてからずっと一緒に過ごしてきた守護獣を独り遺して逝きたくはないものね」
    俺は自分の守護獣をそっと撫でた。俺が逝った後、お前は如何なるのだろうか。お前には哀しい思いも寂しい思いもしてほしくはない。守護獣に俺の心境が伝わったのか、撫でている俺の手をまるで安心させるかのように舌でぺろりと舐めた。
    こうして雲騎警備保障からの依頼は完了した。後日、俺達は社長直々にお礼を言われ、ついでに俺の幼少期の頃の話まで土産に貰ったのだった。
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