森閑ああ、彼の白い髪が、長く白い髪が透けていってしまう。白い彼が霧の彼方に透けていく。俺の元から離れていく。
そんなことはさせない。何処にも連れて行かせはしない。
『もう其方を余の元から離さない。』
目覚めると、俺は何かを捕まえるように手を真上に伸ばしていた。さっきの夢は何だったのだろう。応星さんに似た白い長髪の男性が、霧に消えていきそうになっていた。俺はそれを阻止しようとして、彼を掴もうとして、それで…俺じゃない別の誰かの声が脳内に響いた。酷く哀しみに満ちたような、怒りに満ちたような声だった。
身体を起き上がらせると、俺の守護獣である水龍が俺の顔を覗き込んだ。普段は全く反応が無いのに珍しい。ふと、龍の頭を撫でてみる。冷たい。
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