正直者には程遠い 今度の奴も帰ってこなかったらしい。
最初の奴は金と銀を手に入れたんだろう?
一体何が違うんだか。
恐ろしい。恐ろしい。
物置の陰にてコソコソと囁かれる男たちの会話に、聞き耳を立てる少年が一人。
「もし。そのお話、私にも教えてもらえませんか?」
男たちは目を見合わせて、それから何やら気まずそうに頭を掻いたり、腕を組んだりした。
「別に話してやってもいいけど。『試したい』なら勧めないぜ」
「あぁ。もし兄さんにこれで何かあっても、って、ンッ? もしかして魔王討伐の旅をしてるっていう勇者様じゃあ……」
男たちは少年を上から下までジッと見つめた。昨日この村に勇者一行が辿り着いたという話はすでに村中が知っているが、実際に会ったのは村長とごく僅か数人だけ。屈強な戦士、可憐な女僧侶、高齢の魔法使い、そしてなかなか美形の少年勇者だという噂だけが広まっていた。
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