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    ゆのむら

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    ゆのむら

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    大場誠がタイムリープするお話です。

    #るかまこ
    #影山留加
    #大場誠
    #人間・失格

    一度目「誠……!」
    最後に見た君の顔が笑顔じゃなかったのは残念だったけど、僕はこの選択に後悔はしてない。



    「誠!僕の手を掴め!」
    僕はその手を信じることが出来なかった。彼奴を信じてやることが出来なかった。その間にも狭る死の恐怖に脂汗を滲ませながらも、僕はこの場から逃げる方法が思いつかない。
    父ちゃん、ごめんな。そう思いながら僕は屋上にしがみつく手を離し、そっと目を閉じた_____

    一度目
    ハッと目が覚めると見覚えのある天井。最近やっと慣れてきた家の天井だ。
    何だか悪い夢を見ていた気がする。頬に手を当てると涙が頬を伝っていたのだから相当なのだろう。それにしても変な時間に目覚めてしまったな…と外を見ればまだほんのり薄暗い空が広がっていて。
    「なんで…あん時僕は確かに…」
    不意に出た、自分でも無意識について出た言葉だった。
    今日は何だか訳が分からないな。まぁ、もう目も覚めてしまったし授業の予習でもしていようと適当に教科書を開く。
    ……………嫌な事を思い出したと眉根を寄せた。その視線の先には、マッキーで真っ黒に塗りつぶされたページに破かれたノート。
    そう、この家に越して来たと同時に転入した学校のあいつらにやられたいじめの一環で、最近は生命の危険を感じる程にエスカレートしていってる。こんな事思う僕は既に頭がどうにかなってしまったのかもしれない、でもそれでも、どうしてもアイツらが同じ人間に思えない。醜い、血に飢えた獣に見えて仕方がないんだ。ぶるり、と身体が震え、あの顔を思い出すだけでゾッとする。もう行きたくないと視界がグラグラと揺れて訴えてる。けどもう僕は逃げないって父ちゃんと約束したから、僕を信じてくれる人がいるから、と必死に自分に言い聞かせながら深呼吸をする。使えない教科書を閉じて、代わりにあまり外には持ち歩かない参考書を解くことにした。目に入った問題を解いていくうちに思っていたより集中していたのか気付けば朝食のいい匂いがしてきて。ぐぅ、と僕のお腹も元気に朝の挨拶をしてきたので一旦中断して学校に行く準備を始めると、タイミングよく下から
    「ご飯できたよ〜!」
    と声が聞こえたから適当に返事をし、階段を降りると予想通り美味しそうな朝食。今日は結局いい朝だったなと次第に夢のことも頭から外れていった。自分の朝食の前に座って箸を持っては
    「いっただきまーす!」
    と頬いっぱいに頬張る。そんな僕を父ちゃんはじっと見つめるものだから
    「なに、どうしたん父ちゃん」
    「いやな、…学校……」
    「…父ちゃん、俺もう逃げへんよ。俺学校行くわ!」
    もぐもぐと口を動かし、残りの朝食をかき込めば不安げな2人を安心させるように笑顔でそう告げて、学校へと向かった。


    大丈夫。そう思ってたのに。学校へ向かう足取りは重い。分かってはいても中々辛いもんやな、とどこか他人事のように思いながらも教室に入ると今日はなんだかいつもと様子が違う。血走っている、まるで殺してやる、って言われてるみたいだ。

    …なぁ、どうしてそんな目で僕を見るん………
    確かに気には食わないかもだけど、そこまで恨まれるようなことをした覚えもないのだ。
    しかもいつもは教室で虐めてくる武藤達も何故か僕を屋上まで連れてって……何や、なんかこんな事前にもあったような………
    そう思っているうちにも彼奴らは僕を睨みながら何かを準備して……注射器??
    「そんなもんどうするつもりだ……!!」
    僕の叫びは聞こえないかのように武藤はいつの間にかそこにいる留加に注射器を渡す。
    「うさぎ殺しも全部、君が始めたことじゃないか」
    ______そうだった。武藤の言葉を聞いた瞬間に今朝感じた違和感を僕は全て思い出した。昨日、同じ時間、同じ場所で僕は確かに死んだんだ。差し迫る生命の危機に早まる鼓動とは裏腹に冷静にこの状況を俯瞰する自分も居ることに気づく。
    やはり2回目だからだろうか。しかもどうやらこのことに気づいてるのは僕だけらしい。そんなことばかり考えているといつの間にか注射器を持った留加がやはり目の前にいる。でも留加はここで僕に何故か注射器をさせないのだ。
    「……だめだ…っ、僕には………!」
    ほら。あんだけいじめておきながらもまるで自分が被害者のようにふるまうんだな、とため息をつきながらも僕がとる行動は昨日と変わらない。彼奴らに殺されるなら、と屋上の隅に走り出し、ズルズルと滑り落ちる。そんな僕にやはり昨日と同じように留加は手を差し伸べてきた。昨日よりも幾分余裕がある僕は、僕を殺そうとしている留加がどんな顔をしているか見てやろうと見上げて………首を傾げた。
    留加の顔は、自分が殺してやろうという憎悪ではなかった。むしろ必死に僕を助けようとする、今まで見てきた顔の中で1番年相応らしい、純粋で素直な少年の顔をしていた。
    「誠!僕の手を掴め!」
    そう昨日と全く同じように必死に手を伸ばす留加に、僕はつい手を伸ばしてしまい________掴んだ。


    留加が心底ホッとしたような顔を浮かべると同時にドン、と留加の身体が揺れて。その上半身が浮いたと思えば、そのまま此方に落ちてきた。留加は驚いた顔をしたと思えば顔を歪め、腕を引き僕を抱き寄せる。これじゃあまるで心中じゃないか、なんて心の中で呆れて笑いながらあぁ、やっぱり僕は死ぬのか、と悟る。
    それでもやっぱり痛いのは嫌だなぁ、と目を瞑ると耳元で
    「誠。僕は君を愛しているよ。」
    留加の声がした。
    え、と慌てて留加の方を見詰めるとその顔は優しく微笑んでいて。
    「るか」
    僕が名前を呼ぶと一瞬目を見開き、けれど満足した顔を浮かべた瞬間、僕らは地面に叩きつけられた。


    目が覚めると、見知らぬ白い天井が広がっていた。
    「……こ、こは……」
    「誠!!!!!」
    「父ちゃん……??」
    涙を浮かべた父ちゃんは僕と目が合ったと思えば苦しい程にぎゅうぎゅうと抱き締めてきた。
    「ぐぇっ、ちょ、苦しいよ父ちゃん!」
    「ごめんなぁ、ごめんなぁ」
    父ちゃんは僕の声がきこえないのか僕を絞め殺すかってくらい強く抱きしめる。父ちゃん、今度こそ本当に死んじゃうよ。

    その後、少し落ち着いた後に聞いた話によると、どうやら僕は留加がクッションになって打撲とかの怪我ですんだらしい。
    …………留加は、なんであんなことしたんだろう。しかも最後に言った言葉の意味が分からない。聞こうにも、もう留加は居ない。1日、病院から退院するまでずっと考えたけど分からないままや。父ちゃんはあんまりその事を考えるなって言うけれど、僕を庇って死んだ留加の事がどうしても気になる。僕は昔から1回気になったらどうしても気になってしまう性分やし、こういうんそのままにしといたら良くないって思うから、父ちゃん、堪忍な。
    真夜中、日が変わって少しした時に病院を抜け出し、もう3度目になる学校の屋上に忍び込むと、昨日留加と僕が、基一昨日僕が落ちた角の上に立つ。
    何も証拠はないけど、僕の勘はここを飛び降りろって言ってる気がするんだ。ゆっくりと空へと踏み出せば内蔵が浮く感覚に3度目になっても慣れないな、と小さく口に出す。
    次目が覚めたら1番初めに留加の顔が見たいや。
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