ジャイアニズム・フレンドジャイアニズム・フレンド
抜けるような青空を、春一番が吹きすさぶ。校舎からグラウンドへ続く道に並んでいる満開の桜は、春の強風に弄ばれるように散り散りに飛んでいき、土のグラウンドを疎らにピンクに染めていた。舞い散る花弁が部室に入りこまないよう気を付けながら、多田は男臭い部室のドアを閉めた。
正午を迎えた今は午前の練習を一通り終え、ちょうど一時間の昼休憩だ。体は温まり、しっとりと汗ばんではいるものの、疲労を感じるほどではない。春休みの2、3年だけの部活は、慣れ親しんだメンバーと気安い、くだけた雰囲気が流れ、いまいち締まりが無かった。ただ今は大会前の追い込む時期ではないので、こういう休息が大事なんだよな、と多田は訳知り顔で一人頷く。今日は、監督が法事で休みで、部内のエースがいないのも理由の一つかもしれない。多田がタオルを投げ込んだロッカーの隣は、現在ぽっかりと空いていた。
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