ぼくが知ることは出来ない味空っぽになった小さな正方形の箱、鉄骨に寄りかかって遠くを見つめるカイトさん。ほんのり頬が赤く、指先には茶色い欠片が付いている。
「……れん」
「う、うん。ぼくだよ」
いつもより舌っ足らずで、ふわふわと名前を呼ぶ。多分用があるから呼んだとかではなく、唯ここにぼくがいるから、言ってみただけなのだろう。
「えっと……チョコレート、だよね貰ったの」
「酒がはいってるチョコだったから、全部もらった」
「そっか……」
お酒入りならメイコさんの方が食べられそうだが、きっとそれを言ったら今のカイトさんはしょんぼりしてしまうだろう。
ふわふわしたままのカイトさんは眠そうに瞬きを繰り返し、コテンと横になった。
「眠いの」
「ん……」
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