ソルメル ―――― ふと思い出した。もう何十年も昔になる、おれにかけられた不老不死と、もうひとつの呪いのことだ。
「つまるところ、未来への一方通行のタイムスリップだな!」
そう意気揚々と語る無二の友ことメルクリウスはおれに死のプロセスについて説明した。
「ソル、不老不死の貴様にとって死の定義とはなんだ?」
「そりゃ、心臓が止まって身体が生命活動を止めたら死だろうさ」
ま、おれは心臓が体外に出ても死ぬことは無いが。
「まあ概ねその通りだな。今も昔も変わらず心肺が停止したらあとは一方通行。血液の循環は停止し、あとは身体が朽ちてゆくのみ。子供でも知る自然の摂理だな」
メルクリウスはいつものように大仰な手振りを加えながら語る。
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