満ちる光のその先へ 「兄さん、次はこのお話読んで…」
何とかベッドの上に起き上がり、“もう限界です”とはっきり顔に書きながらも尚絵本の目次を指さす弟に、カイトは苦笑してみせた。ハルト就寝前の、カイトによる絵本読み聞かせタイム。今夜のハルトは随分と粘る。
「ハルト、もう眠いんだろう。続きは明日読んであげるから今日はもうおやすみ」
「うぅんまだ眠くない、あともうひとつ、もうちょっとだけ…」
「目が閉じているよハルト」
慌てて目を擦るハルトの腕を、カイトは優しく止めた。
「明日、また読んであげるから」
殊更にゆっくり告げる。“明日”をやや強調しながら。
そこに忍ばせた意図を感じ取ったのだろう。ハルトの目から眠気が消え、代わりに明らかな怯えの色が現れた。
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