別に、私は七瀬さんに好かれようとも思っていない。折角アイドルをやるのなら、成功すればいいなと思っているだけで。IDOLiSH7が誰かの力になるといいな、と。
だから、私が、私はどうだっていいのに。
赤色のペンライトが輝く。美しい色。明るく、眩しい。下に、影ができる。
七瀬さんが皆さんに元気を与える。そうするごとに、何かが擦り減っていく。実際にそんなことはない。目には見えない。でも、私ははっきりと終わりがあると理解していた。そんなのは嫌だ。なぜ嫌なのだろうか。
いつからだろう、七瀬さんに独占欲のようなモノがわいてきたのは。嫌だな、いやだ。こんな気持ちはIDOLiSH7にいらない。私が余計な存在になっている。アイドルというのは、皆に平等な存在でいなければならない。七瀬さんは皆に平等に全力を振り撒くのだ。
七瀬さんが倒れた。持病が悪化してきているそうだ。きっと無理なスケジュールを組んでしまっていたのだろう。嫌だ。私は七瀬さんを苦しめたくない。でも七瀬さんは歌いたい、踊りたいと言う。どうすればいいのだろう。
命に別状は無いそうだけれど、とても苦しそうだ。まるで何人もの苦しみを背負っているかのように。
そうだ、七瀬さんは沢山の人の苦しみを背負っているのではないだろうか。
期待、落胆、感動、淋しさ
アイドルはファンの気持ちと真剣に向き合ってステージの上に立っている。けれども、少しずつ、これも平等に手を抜いていかないと自身がもたない。
七瀬さんにとっては、厳しい事だろう。というか、無理だろう。きっと全力になってしまう。
やめてヤメテヤダヤダヤダやだ嫌嫌嫌イヤ
私にも私だけの七瀬さんが欲しい
七瀬さんが好きだ……
なんて愚かなのだろうか。諦めてしまおう。早く、速く、だか、ら、好きとか、そんなものは、捨てて、はやく、さっさと、諦めてしまえ、好きだ好きだ七瀬さんが好きで堪らない貴方の声も姿も誰にもミセタクナイ
今ベットで弱っている七瀬さんは、私しか見ることができないんだ。やった、私だけの七瀬さんだ!
あれ、今嬉しいな、七瀬さんは苦しんでいるのにね。
「はは、…最低。」