きみに花束を贈れたらいいのに なあなあ、ここの新作食ったことある? そう言って差し出されたスマートフォンの画面には、何度か丸井くんと二人で行ったことのある喫茶店のホームページが映っていた。
「ううん、食べたことない」
どんなの? と聞く前に、丸井くんは画面を二回ほどタップして、新作のメニューが載っているページを表示した。たっぷりの生クリームが添えられた、バニラアイスと苺の乗ったパンケーキの写真が大きく映し出され、見ただけで少しお腹が空いてくる。値段の横に載っている、きらきらと装飾された季節限定の文字が目を引く。
「じゃあさ、今から行こうぜ」
言いながら、丸井くんは微笑んで俺の顔を覗き込む。一瞬どきりと心臓が高鳴った。大丈夫、ばれてない。俺は友達だから、ちょっと顔が近いくらいでどきどきしちゃいけない。
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