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    takana

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    takana

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    アルカヴェSS
    2人+〆ラックが記念撮影する話(誕祭イベ後)

    記念写真「そうだ! 写真を撮ろう、アルハイゼン!」
     花神誕祭のパレードが無事に幕を下ろし、皆と別れた後――自宅のリビングでは、打ち上げ二次会と題した飲み会が開催されていた。
     そこで不意に上がった提案に、アルハイゼンは手にしたワインのボトルから視線を移す。頬が赤く、とろんとした表情のカーヴェと目が合った。
     どうやら2、3杯ですっかりできあがってしまったらしい。連日に及んだ計画の準備、直近の徹夜といった諸々が響いたのだろう。
    「つい先ほど、その撮った写真についての話をしていたと思うが」
     パレードの後の記念撮影について「いい写真が撮れた」等と楽しげに語っていたばかりである。カーヴェはこちらの指摘に、皆とはそうだけど、と前置きをして続ける。
    「これは僕ら個人としてのだ。こういう機会じゃないとなかなか撮らないだろう?」
     カーヴェはいそいそと写真機を持ち出し、ファインダーを覗き込んでいる。
     好きにさせておこう、と動向の行く末を目で追いつつ、アルハイゼンはグラスを傾ける。
     今度は三脚を運んできて、この場で準備するかと思いきや。うーんと首を傾げ、そして玄関へ向かおうとする後ろ姿を呼び止めた。
    「待て、何故わざわざ外に?」
    「家の中だと特別感が薄いかなって。それにほら、ちょっと散らかってるし……」
     振り返ったカーヴェは部屋を見渡し、きまりが悪そうに頬を掻く。打ち上げ中のテーブルの上は言うまでもなく、室内のそこらに本や論文、模型の材料やらが放ったままになっている。根を詰めて計画に打ち込んでいた結果がよく表れた空間だ。
    「いいんじゃないか? この方が記録としては正確だ」
    「僕が撮りたいのは記録じゃなくて記念なんだよ。ほら、座ってないで来るんだ!」
     強引に促され、仕方なしに立ち上がる。
    「メラックも、こっちこっち!」
     呼びかける声に、軽やかな機械音が応答した。

    「なんだか、夜になってもお祭の空気感があるな」
     カーヴェは玄関から数歩、軽くステップを踏むようにして歩き出すと、笑いながらそう言った。
     アルハイゼンはその後ろに続いて外に出る。街灯が照す華やかな装飾が目に入ったが、さすがに夜更けの街にはいつも通りの静けさが戻っていると感じる。
     微かな夜風は酔っ払いの熱を冷ますには至らず、三脚を立てる手つきは覚束ない。見ていられなくなり、写真機のセットを手伝ってやった。

    「アルハイゼン、もう少し前に……。メラックは――そうそう、大体そのあたりかな」
     カーヴェはファインダー越しに画角を確認し、色々と指示を出している。
    「……」
     家の前に立ちながら、アルハイゼンはふと浮かんだ疑問点について考えていた。
    「ええと、これをこうして……よし!」
     カーヴェはタイマーをセットすると、小走りでこちらへ向かう。
    「ところでカーヴェ」
     彼が隣に収まったところで、先ほどの疑問を伝えるべく声をかけた。
    「あの写真機にフラッシュ機能はついているのか?」
    「えっ?」
     ぱちぱちと瞬きをし、遅れて問いの意味を理解したカーヴェが慌て出す。この暗さでは恐らくまともに映らない。
    「な、なんでもっと早く言わないんだ! ライトなんて持ってないぞ――」
     慌てる声をよそに、写真機がシャッターを切ろうという瞬間のことだ。ビカッと眩いばかりの光が背後から放たれ、予想外のことに2人して動きが止まる。そして――
     カシャ、とまるでその閃光を捉えるかの如く、タイミング良く写真機が鳴った。
     暗闇が戻ったと同時に光源を振り返る。宙に浮く四角い機体が、ピピ、と音を発した。
    「メ、メラック! そんなに体を張らなくたっていいのに……!」
     うう、と呻きながらその場に膝をつくカーヴェを、メラックが不思議そうに見つめている。それを横目に、アルハイゼンは映し出された写真を手に取った。
    「カーヴェ、これ」
     そして感涙に咽ぶカーヴェの目の前に、それを差し出す。
    「ん?」
    「メラックの献身の結果だ」
    「これが……」
     神妙な顔で写真をじっと見つめること数秒、カーヴェは堪え切れないように笑い出した。
    「――ふ、ふふ……っ、なかなかの出来だな……!」
     逆光で影絵のようになっている2人の姿と、鮮やかな緑色の閃光が異様な雰囲気を作り上げている。
    「記念撮影にしては、些か前衛的だといえる」
    「よせ、追い打ちをかけるな……!」
     感動のあまり崩れ落ちていた彼は、今度は笑いによって立ち上がれなくなっている。放っておけばいつまでもそのままでいそうなため、震える体を持ち上げて家の中へ連行することにした。
     そうして出来上がった記念写真は一旦リビングに飾られたものの、翌朝には正気を取り戻した当人によって回収された。
      
     また、教令院の学生の間で謎の発光体の出現がにわかに噂されたが、それはこちらの預かり知らぬところだ。
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