「愛の奴隷よ、目をさませ」② あのホテルの一件から一週間。若王寺は人生の頂点と奈落を同時に味わった気分だった。
思い出しても身体が熱くなるような一夜。文字通りのワンナイトに、この一週間頭のリソースを取られっぱなしなのだ。
あれから桜木清右衛門について社内で探りを入れた結果手にした噂話。
誰が告白しても、「忘れられない人が居るから」と振られるという話だ。
その人は何でも絶世の美女だったとか。何でも有名俳優だとか。何でもどこかの国のお姫様だったとか。
尾ひれ背びれのついた噂に、若王寺は思わずため息をつく。
忘れられない恋人だなんて。そんな人間に自分は勝てるのか。
ゲイでもバイでも構わないが、あの一夜が彼にとっての過ちだったとしたら。もしストレートだった場合、そもそも対象から外れている可能性もある。
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