火傷「あつっ」
戮の隣で短い悲鳴をあげたのは芭琉。スープが熱かった様で唇を指で押さえている。
「わ、芭琉くん大丈夫?」
ちょっと待ってて、と奥へ走っていく。ヒリヒリと痛む芭琉の唇は、息がかかるだけでも少し痛みを感じた。
「(お腹空いてたから、がっつきすぎたかな…)」
眉を寄せて唇を、辛うじて少し冷えた指で挟んで待っていると、戮が戻ってくる。保冷剤をガーゼで包んだものを作っていたらしい。
「はい。これなら冷たすぎないと思う」
「ありがとう、助かるよ」
それを受け取って唇にあてる。ガーゼ越しのひんやりと冷たい感触が心地よかった。戮は芭琉のそんな姿から目を離さなかった。
「ちょっと腫れてる…?」
「うーん、分からないけど触ると痛いかも」
芭琉は唇をふに、と触りながら答える。
「そっか…」
「…じゃあ、ちょっとの間、キスできないね」
戮は、しゅんと落ち込んだような声と姿をした。芭琉は「それ大事だったんだ」と胸の内で思った。
「キス以外でもできるでしょ?」
「でもそういう気分の時もあるの」
芭琉の隣に寄りかかりながら、その右腕に自身の両腕を絡める。心から愛おしく思う暖かさに目を閉じる。
「じゃあ治るまで我慢できる?」
「芭琉くんが痛いなら我慢する」
冷やしたおかげで少し痛みが引いて、これなら1日で治りそうだと感じた。いつまで我慢できるか、様子見てみようかな、と呑気に考える芭琉だった。