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    kurage_honmaru

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    kurage_honmaru

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    ※アカウント再作成のため再掲
    ついったとしぶに上げたものをこちらにも。

    ・FGO2部7章 ナウイ・ミクトランのネタバレを含みます。
    ・カマソッソとカーン王国の民の話。諸々妄想。
    ・件の「炉」はなんだったのか?という疑問から始まった、妄想と飛躍の産物。
    ・暗い話かつひどい話です。細かい描写全部置き去りですまない。本編と食い違う点も流してほしい。

    we will never Lost your name.「何を今更。オレの民その総て、地底にあっても損なわれぬ、輝ける星だ」

     慈しみと決意がこもる柔らかな友の声を聴き、その時初めて自らの内に存在し続けた熱の名を理解する。
     これは怒りだ。


     * * *


     カーン王国・王都。その端に位置する王家直轄の研究施設。石造りでありながら表面に施された塗装には奇怪な紋様が蠢き、そこで行われる研究から所員と施設を守っている。
     中でも一際巨大な空間に据えられた炉と、それを臨む部屋。特殊な鉱石がはめられた窓越しに、眼下の炉をひとり見下ろす白衣の技師へ、背後から聞き慣れた声が投げられる。

    「オマエ、このようなところに居てよいのか。部下の技師たちから、親父殿が病の床にあると耳にしたぞ」
     その声に振り返った技師は、人影が一つであることに眉をひそめた。
    「おや、お見えでしたか王よ。いくらお強いとはいえ、護衛の者くらいおつけになってはいかがです」
    「要らぬ。他の時、他の場ならばいざ知らず、今この場に伴は不要だ」
     それにオマエの言う通り、オレは強いからな。そう返し得意げに笑う王に、技師はいつものように深く溜息を吐くと炉に目を戻す。
    「左様でございますか。ところで、そちらこそ政務はよろしいのですか。あまり王妃様や側近方を困らせるものではありませんよ、皆様お忙しいのですから」
    「ふふ、不遜。なれど愉快。オマエは昔からその調子だな、変わらぬものよ」
     技師の答えとその声色が落ち着いていることに柔らかく笑むと、王は窓辺に歩み寄る。幾重にも連なる精緻な紋が縫い込まれた衣が、ふわりと翻る。傍目にはそれとわからないが、紋の一つ一つが王の身を守る機能を備えた一級品である。
     かすかな衣擦れの音と共に技師の隣に立った王は、炉に目を落としたまま続ける。
    「コイツの具合はどのようになっている。順調か」
    「はい、安定しております。建造が想定より早く完了し、実証実験が前倒しになったことも功を奏しました。あと数年程の検証は必要となりますが、時さえかければ、必ずや」
    「そうか。――――オマエの両親はよい仕事をしたな」
    「はい」
     沈黙が降りる。隣から窺うような視線を感じた技師は、炉から視線を外し努めて平静に王へ笑いかける。
    「そのような顔をなさいませぬよう。もう別れはとうに済ませて参りました。
     最後までいると何度も言ったというのに、『お前は自分の仕事を果たしてこい。所長が不在の研究所があるか』だとか。一度言い出すと聞かぬ上に見栄っ張りな父でした。子が隣にいてはいつまでも発てなかろうと、気を回した次第です」

    「きっと、今頃は」
    「――――そうか」

    笑んだまま、技師は声を重ねてゆく。
    「日頃より、母の元へゆくときは手土産にできる話を持っていきたいと語っておりました。先立つ以前の母とは、それで勤めに励むのならいいことじゃないかと笑ったもので。
     あちらについたら、まずは仕事の報告をしているのではないでしょうか。母も手厳しい人でしたから、辛口の評になりそうではありますが」
     誰に問われたわけでもない言葉が、部屋に落ちる。語ることがその存在の証明であるかのように。気心の知れた仲とはいえ、王の御前でいつまでも不敬ではないか。そう己を諫めようとする技師は、その眼からこぼれるものを止める術を持たない。
     そこに一つの名が響く。去りし者の名。否、これは。
    「花の名をしていただろう。魔力の精錬集約放射炉などという厳ついものを手掛けている割に、随分と愛嬌のある名をしていることよと、可笑しく思ったことを覚えている。後ほど手配させよう。御母堂にも届くよう、盛大に送ってやるといい」
     御母堂の時は道行きを照らす灯りで送ったな。あの時は、御母堂を慕う者たちの灯火で大層明るかったものだ。懐かしむように目を細める王の声を聴き、技師は涙を拭う。
    「驚いた。父が名乗ったのも母の葬儀も昔の話ですのに、よく覚えておいでですね」
    「オレという王にその知と技を捧げた民だ。当然、覚えていようさ」
    「その割に『新しい理論が提唱される度、実用化や御披露目を待たず王宮を抜け出るのはお控えください』という、側近方のお小言はすぐお忘れになるようですが?」
     唐突に向けられた嫌味に、うぐ、と言葉を詰まらせ王はあらぬ方を見遣る。いちいち要らぬことを言うでないわ、と小さくこぼし一呼吸を置いてから、些かの早口が始まる。
    「あれは……あれは、仕方があるまい? 視察の刻だ、必要の刻だ。我が民たちの研鑽を自ら知ろうともせず、王は名乗れまいよ。
     故に責務、否、むしろ政務であると言ってもよい。そうとも、これならば何の問題もない。何せ務めを果たしているのだからな、うむ。きちんと忍んだ格好もしていることだしな」
     誰に申し開きをしているのだろうか。そう言わんばかりの意地の悪い眼差しを受け、うむうむと頷いていた王は口を尖らせ技師を睨め付ける。その手は、何かを捏ねるように虚空を泳ぎ始める。
    「むう。なんだその眼は。そもそも、王宮の抜け道探しはオマエの得手だったではないか。
     気晴らしを求めたのは幼き日のオレとはいえ、その度に大人たちの目を掻い潜り外へ抜け出す手際を長く傍で見ていれば、オレにも悪い手癖がつくというものよ。
     ……不服、まさに不服。悪癖を与えし友に悪癖を咎められる。即ち理不尽。オレのみが小言を喰らうは得心がゆかぬ。次はオマエも道連れだ、よいな」
     拗ねる子供を思わせるその姿と言い分に、堪えきれずに技師は声を上げて笑い出す。
     きょとんとした顔を浮かべた後、ようやく目にできた屈託のない友の笑みに、王は安堵の息を吐く。
    「うむ。そのように笑えるのならば、親父殿も安心することだろうさ。オレへの八つ当たりくらい、なんということもない」
    「おや、バレていましたか」
     そう笑い、涙の跡を強く拭うと技師は王へ深々と頭を下げる。
    「王よ。非礼をお許しください。そして此度の父とかつての母の弔いに心を寄せて頂き、ありがたき幸せにございます。父母に代わり御礼を申し上げます。我が一族、これからも王が統べるカーンを支えて参ります」
     その感謝と決意に返るものは、しかし。 
    「――――礼、など」 
     先程までの饒舌と愛嬌、民へ向ける穏やかさが嘘のような、虚のごとき眼だった。
     それを技師が口にするより早く、王は自らを戒めるように頭を振る。そして炉へと戻された眼差しに、もはや空虚は見られなかった。
    「検証を終え、稼働するまで数年と言ったな。先の楽しみが増えた。今後も励めよ、期待しておる」
     明らかに話を切り替えた王は、返答を待つこともなく炉を臨む部屋を後にする。
     禍いを退ける機能と願いが込められた衣をはためかせながら遠のいていくその背中を、技師は見送ることしかできなかった。


     * * *


     そして滅びは訪れる。

     地の奥底に眠る宙の怪物が再始動の時を迎えたこと、その出力が絶望的な規格外というより他ないこと、このまま目覚めと蹂躙を許せば地底世界そのものが終焉へ至ること。
     それらを受け、国中の者が知恵と検証と議論を重ねた果て、カーンの民は一つの策を選んだ。それが策などと呼べないむごい道であると、誰もが解っていた。


     * * *


     王の御姿が見えない。
     側近たちが囁き交わす慌てた声を聴くや、部下を捕まえて指示を残し、抜け道へと脚を走らせる。王宮で受け取っていた炉の改造と調整の報告、各地からの状況報告を得た上での新たな指示の発出。それらは一時的に部下に預けることとなったが、信頼の置ける部下たちだ。自分が戻るまでの間、務めを果たしてくれるだろう。
     王宮の抜け道探しは自分の得手だ。そして王がどこへ向かったか、見当はついていた。
     息を切らし、走る、走る、走る。研究ばかりで走り慣れていない身体の弱音に腹立たしさを覚えながら、たどり着いたそこに、王は居た。
     王都の奥、王の墓所。生を終えた歴代の王が、朽ちゆくその髑髏を整然と並べる場。
    「息が上がっておるぞ。やはり技師や研究者であれど、日頃の鍛錬は重要というものだな」
     墓所の最奥にて髑髏の壁に跪く王は、こちらに背を向けたまま、しかし誰が追いついてくるか予想していたのだろう。揶揄い混じりの声を投げる。
     それに気の利いた言葉を返すこともできないまま呼吸を整えていると、乾いた声がぽつり、ぽつりと、墓所にこぼれ始める。
    「オマエの父母が死んだ時のことだ」

    「オレは嘆くことができなかったのだ。友のために弔いをするものだとはわかった、それが人というものだと読み物で学んだ。故にそのように行った。
     だが、ソイツらが居なくなったことへの嘆きはオレの内になかった。
     そのことに我ながら失望した。なんと不出来な王かと。礼など寄せるに値しない。
     オマエの御母堂や親父殿に限った話ではない。
     オレを愛してくれた父母の時も、小言を言いながら支えた側近たちの時も、世話になった老学者の時も、勝利を残した戦士たちの時も、声と花を寄越してくれた街の幼子の時も。
     死を嘆くことができぬ。悼むことができぬ。喪われる悲しみがわからぬ。
     それは即ち、その者の生を、命を、軽んじていたことになりはすまいか。
     そんな者が王なのか。そんな者は、人間なのか」

    「アイツを、亡くしたときですら」

     その時、自分と王が思い浮かべていたのは、同じ方だったろう。しゃらしゃらと、美しい鈴が風に鳴るような澄んだ笑い声の方だった。
     そして王は立ち上がりこちらを振り返る。ひどくゆっくりと、古びた機械人形が軋む胴体を無理に動かすように。
    「教えてくれ、友よ。オレは、オマエたちが命を捧げる程の王なのか。カーンは、家族を捧げる程の国なのか」
     その表情に、その虚に、肩で息をしていたことも忘れ、声は叫びとなって飛び出した。
    「何を今更!!」
     駆け出したい衝動をなんとか堪え、迷い子のように背を丸めた王へと脚は向かう。煮えるような頭に再びよぎった記憶は、王妃の涙だった。

      王妃から打ち明けられたことがある。
      王は死を悼むことがないと。誰が死のうと眉一つ動かさず、落涙はもとより声が震えることすらないと。
      されど王自身が、苦しめないことを罪に感じているのだと。
      人の哀切が解らぬ者が人の上に立つなど、なんと冷たく愚かなことかと己を責めている。
      人間になりたいと、そう嘆いていたことすらあるのだと。

      それはあまりに痛ましいことではないか、あの方はいつでも民を何よりに考えているのにと、涙を零した王妃と声が重なったことを覚えている。
      そしてその時、王のために泣いてくれるこの方が妃で本当によかったと、心から感謝したことを覚えている。

     墓所の床を腹立たしく踏み締めながら王の眼前まで歩み寄り、その頭を両手で挟み、無理矢理に目を合わせる。ほとんど睨みつけていると言っていい。
     だが不敬も礼儀も、今はどうでもいい。知ったことではない。私はこの人に伝えなければいけないことがある。腹に力を込め、言葉を紡ぐ。
    「そう考える貴方だから、私は支えてきたのです。
     民の死に嘆けないと、それは民に申し訳の立たないことだと、そう嘆くことができるから、貴方は王なのです。
     そんな貴方の民だから、私たちは戦うのです。
     貴方が私たちの死に寄り添おうとするように、私たちも貴方の生を慈しんでいるのです。
     そのことが何故わからないのですか。
     何故愛されていることから逃げるのですか」
    「それは、慈しんだが故に生を捨てるということではないのか。
     愛することさえやめれば、民は苦しむ前に、滅ぼされる前に、穏やかな眠りを選べるのではないか。
     慈しみ愛したがために民が死ぬというのならば、それは慈愛が民を殺したも同然ではないのか。
     宙の化け蜘蛛は何故今目覚めたのだ。何故、オマエたちがこのような不条理を飲み込まねばならぬのだ」
     間髪入れずに返された答えに、叫び出しそうになる。王よ気付いていますか。貴方はずっと、民の痛苦ばかり嘆いている。総てを背負うことになるのは、貴方だというのに。
    「慈愛が故に生を捨てる。えぇ、そうかもしれません。ですが、私たちは選んだ。自分たちで選びました。貴方に選ばされたわけではない。
     むごい方法です。こんなやり方、断じて礼賛されてはならない。誰もやりたかったわけではない。
     それでも選びました。貴方と私たちが生きたこの歴史の幕引きを、あんな化け物に怯えて追い落とされる憐れなものにしたくない。私たちの歩みには、憐れみではないものだってたくさんあふれていた。それを私たちが憐憫で塗り潰したくない」
     言葉が止まらない。腹も、喉も、頭も、火のように熱い。こぼれる涙までもが熱い。
     王の瞳が揺れる。この澄んだ青色は、昔から本当に美しい。それを曇らせる怪物に更に腹が立つ。

    「宙の化け蜘蛛が何故今目覚めたか? 何故私たちがこんな目に遭わなくてはいけないのか? えぇ、私だって何度もそれを考えて、考えてやっと解りました。
     ただ運が無かった。ただそれだけのことです。たかがその程度のことです。
     だから、戦うのです。不運などに私たちの幕を引かせて堪るものか。
     貴方がその研鑽を、その暮らしをずっと目にしてきた民です。
     いつもと同じです。貴方が率い、皆で戦って勝つ。どうか信じてください」
     手が震える。声と脚までもが震えることのないよう気を張っているが、それも長続きはしないだろう。
     本当は怖い、怖くて仕方ない。不運などという言葉でこの不条理を納得できるものか。もっと穏やかに幕を引きたかった。炉に照らされた地下世界を、私たちの故郷を、この目で見たかった。
     悔いなど、あるに決まっている。
     それでも。それでもあんな怪物に奪われることを、受け容れることはできない。
     友と自分を踏み躙る怪物に、くれてやるものは何もない。
    「我が王。必ずや、貴方に勝利を」
     その言葉を最後に王から手を放し、震える声と身体のまま、地を踏み締め腕を組み胸を張る。あの時のように涙を拭う余裕もない、ただの痩せ我慢で笑う。

    「どうです、貴方の民は格好いいでしょう」

     それを見た王の目から、一筋の雫が落ちる。そして王は、私の友は、いつものように笑う。
    「何を今更。オレの民その総て、地底にあっても損なわれぬ、輝ける星だ」
     慈しみと決意がこもる柔らかな友の声を聴き、その時初めて自らの内に存在し続けた熱の名を理解する。
     これは怒りだ。
     私は、私の一族はずっと、怒っていたのだ。


     * * *


     炉が唸りを上げて稼働を始めている。かつて王と何度も言葉を交わした管制室から、私はそれを見下ろす。順調に動いている。
     母が知をもち理を組み立て、父が技をもち器を築き上げ、己と部下の研鑽を重ねて磨き上げた炉。魔力の精錬集約放射炉。その産声を聴きながら、苦笑する。
     本当はもっと穏やかな使い方だったのだ。集約した熱を魔力へと精製し、地へ合わせた出力へ変換したのち放出し、命育む光となすもの。

     十万の昔に消えしもの、記録と記憶の果てに去りし、人智及ばぬもの。
     十万の後に創りしもの、知と技と時の果てに得たる、人智至りしもの。
     【太陽】と名付けることを許された、大切な炉だったのだけれど。

     炉を臨む管制室、その窓にはまる透明な鉱石に自らの姿が反射する。橙の髪、金の瞳。
     『あの花の名が相応しいのはオマエの方ではないか』、幼き日の王にそう言われたことを思い出す。私だってそう思っていますよ、王よ。
     目の前で言われた父さんは、困ったように笑っていたっけ。母さんはなんなら今から名前を変えてもいいんだよ、なんて冗談を言って笑っていた。
     遠い過去の記憶に一つ笑いを浮かべ、綻ぶ口の端はそのまま、炉を見据える。
     我らが王にどうか生きる力を与えてください。災厄を退けた先に羽ばたく翼を。
     そこまで考えたところで、準備が整ったと部下より報が届く。限界まで待ってくれていたのだろう。私が伝えられるものは全て彼らに伝えた。ならば、太陽を求めた一族最後の者として、果たさねばならない役割がある。最後に部下たちへ深く頭を下げ、外へと向かう。

     回廊を歩みながら思う。私はどこへゆくのだろうか。幼子ではない。戦士でもない。子を産むこともなく、病や悪行とも幸いなことに無縁だった。この魂はどこへゆくのだろうか。
     しかし、ぼんやりとした考えを頭を振って追い払う。決まっている。そんなものは決まっている。望むところへこれからゆくのではないか。
     外――――祭壇と名付けられた場への扉を開く。大勢の民がそこにひしめいていた。恐怖と熱狂と混乱がそこにあった。誰もが光を求めていた。
     墓所を後にするとき、王に願った。私たちが生きていた、ただそのことだけを覚えていてくれと。私たちの生を、一つ一つ背負わなくてよいと。死を嘆けない貴方は罪人ではなく、私たちの選択は私たちのものだと。覚えていくのは、貴方に全てを背負わせ去りゆく私たちの方だと。
     いつかきっと来るいつか。災厄を退けた先の地を訪れる客人に、胸のすくような大勝利の物語を聞かせられたならば。その時、貴方には笑っていてほしい。それが友へ向ける私の最後の望みだった。

     祭壇の淵に立つ。民は水を打ったように静まり返っている。
     足元を見下ろすと、まるで地より沸き出す溶岩のような、耳を塞いだ時のみ聴こえる血潮のような、低い低い響きが足を通じて身体に届く。
     王の瞳のように、王の兜を彩る宝石のように、澄んだ青色を放つ鮮やかな光。
    「今、お側に」
     その言葉を最後に、祭壇を蹴る。落ちる間際、ほんの微かに花の香りがかすめていった。



     * * *


     ザマを見ろ、彼方よりの来訪者。
     ザマを見ろ、愛を限る星の意志。

     光を与えられずとも、星を喰われようとも、私たちの太陽はそこにいる。
     暗き地より歩み出で、己が手で空を照らす、太陽戴く星の民。
     我らが王。そして、私の旧き友よ。
     私たちは、貴方の名を決して失くさない。

     それが、私たちの物語。喪われることのない、物語。






     〈了〉
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