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    岩藤美流

    @vialif13

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    岩藤美流

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    14ちゃんイマジナリー ネギおじさんの話

    ただのさんからもらった1枚絵を元にお話を書く企画。ただのさんの持ちキャラの一人、ネギおじさんの話です。せっかくなのでうちのラリエレゼンのベリルと絡めてみました。

    ##14ちゃん

    「あれ?」
     ポワロ・アリウムは目を覚まして、首を傾げた。目を開けたものの、視界に映るのは淡いクリーム色の世界だけだ。ゆらゆらと黒い影が揺れているのぐらいは見えなくもないが、一般に「見えている」と呼ばれる状態とは程遠いだろう。
     ポワロはぼんやりと辺りを見回したけれど、どちらを向いても明るいと感じる。ということは、今は日中。ポワロは、はて、と腕を組んで考え込み、自分がどういう状況に置かれているのか思い出した。
    「ああ、寝落ちしちゃったんですね」
     確か自分は、未知の採取場を探して東部森林にやって来た。採取場の噂を頼りに探したけれど、それらしいものは見つからない。夜に見つかると言われる植物を、素直にその時間まで待とうと、大木の下に座り込んで、さてそれからの記憶が無い。きっと待ちくたびれて眠ってしまったのだろう。疲れていたのか、深夜などとうに過ぎて、朝になっているようだ。
    「さて、まあそれは残念ですけど、しかし、うーん、これは困りましたねえ」
     ポワロは顎に手を当てて、眉を寄せた。
    「眼鏡、何処に行ったんでしょう?」
     ポワロは生来、目が見えない。裸眼で認識できるのは明るさだけで、淡いクリーム色の世界に生きていた。若い頃、エーテルの流れを視認できるという特殊な眼鏡を手に入れた時、世界が変わった。その時の事は今でも鮮明に思い出せる。あの、世界に色彩が現れた瞬間! 香りを愛していた植物の形は、手で触れた通りの姿だったけれど、あの色。鮮やかな緑、赤、紫、黄、それに青。世界の美しさ、多彩さを感じたあの日の感動を、ポワロは忘れられなかったし、より一層植物のことを愛するようになったものだ。
     そんな眼鏡が、何処にも無いのだ。手探りで近くを触っても指先にあたるのは土や草ばかりで、荷物を紐解いてもそれらしきものが見つからない。さて困った。ポワロは一通り探し終えた後で、腕を組んで大樹にもたれる。
     困りはしているけれど、焦っても悲観しても仕方ない。ここは東部森林、いたずらな森の妖精が取って行ったとも考えられるし、暇を持て余したモーグリ族が隠したというのもあり得る。もしくは野生動物が……いやこちらは流石に、匂いに敏感なポワロが気付かないわけがない。いずれにせよ、眼鏡の無い状態で探し物をするなど至難の業である。眼鏡のことはいったん諦めて、テレポで街に行けば親切な人の一人ぐらいはいそうなものだし、リテイナーやリンクシェルで繋がっているシュエットなどに頼めば手助けもしてくれるような気がする。気がするだけだが。
    「うーん、まあとりあえず、街に戻りますか……グリダニアに飛べば……」
    「あ」
    「ん?」
     近くで人の声がして、ポワロはそちらを見た。つもりだ。見えないのだから正確な方向も微妙なところだし、光の無い瞳が相手を怖がらせてもいけないと、ポワロは目を閉じる。足音が近づいてきて、その人物は「あ~」と気の抜けた声を出した。
    「やっぱり、ネギのおじさんでしたぁ」
    「おや? その声は、ベリル君ですか?」
     気の抜けたような、ねっとりしたような独特の喋り方に聞き覚えが有った。確か、グリダニアで薬草を売買しているエレゼン族の若者だ。同じ植物を愛する者として何度か取引もしている。もっとも、ベリルのほうは単に植物を愛しているというより、その効能のほうを好んでいるらしく、彼はいつも何かに酔っているように揺らめいていたのを覚えている。
    「ネギのおじさんも、トリリウムを採取しに来たんですかあ?」
    「ああ、実はそうなんです。あの花、とても綺麗でしょう? 白いカーテンがかかったみたいに見えて、近くで見るとうっとりしてしまって」
     白いカーテンがかかっているのは今も同じなのだけれど。そんなことを考えながら、答えると、ベリルも「そうですねえ」とのんびり頷いた。
    「お花もとってもきれいですけど、球根はお薬にもなるから素晴らしいですよねぇ。まあ、飲みすぎたら大変なことになっちゃうんですけど……ふふふ」
     やはりベリルは効能のほうが気になるようだ。ポワロはしかしそれを気にはしなかった。同じ植物を愛する仲間で、着目する点が違うのは個性というものだろう。ひと回り近く年の離れたこの若者が、興味本位で毒草を口にして死なないことを祈るのみだ。
    「ちょうどあのあたりに生えているってウワサですよぉ。一緒に取りにいきませんかあ?」
    「ああ、そうしたいのはやまやまなんですが、実は眼鏡を無くしてしまいまして」
    「眼鏡ですかぁ?」
    「そうです、恥ずかしながら私、あれがないと前が見えなくて……」
     ベリルは形容しがたい不思議そうな声を出してから、言った。
    「その、頭の上のやつじゃなくて、ですかぁ?」
     そう言われて頭の上に手をやると、ちょこんと乗った眼鏡に手が当たる。まさかこんな、古典的な、初歩的な見落としをするなんて。
    「おやおや、これは……これはこれは、お恥ずかしい」
     ポワロは苦笑しながら眼鏡を手に取って、改めてかける。一瞬で世界は色付いた。それが健常な者達の見ている世界と同じなのか、ポワロは知らないし、知る必要も無い。彼には彼の世界が見えているし、ベリルにはベリルの世界が見えている。それでまあ、齟齬が無ければそれでいいのだ。
     すぐ傍に、ベリルという名にふさわしい濃い緑の髪をした青年が立っている。相変わらず不健康そうなクマを浮かべて、何かに酔っているのかトロンとした顔をした彼は、にへ、とポワロに笑ってみせた。
    「ほら、あそこ、いっぱい生えてますよぉ」
     見れば、ここに来た時には緑一色だった草の中に、白い花が揺れている。可憐で慎ましやかな白は、風に揺れて不思議と眩しいほどだった。ポワロは微笑んで、「では早速、少し採取するとしましょうか」と立ち上がった。
     今日も、世界は色鮮やかだ。
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    h‘|ッЛ

    DONE #しん風版深夜の60分一本勝負
    お題「放課後」

    遅刻!ワンライ+20分!

    何度書いてもくっつく話は良いよねぇ...
    しん風しか勝たん...マジで...

    ※誤字に気づいて途中修正入るかもかもです。

    ⚠️アテンション
    高校生未来パロ。
    同じ学校通ってる。
    最初付き合ってない。

    3 2 1 どぞ
    しん風ワンライ『放課後の告白』

    ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

    西陽の射す窓。教室から溢れ出る紅に染る廊下。笑い声や掛け声が重なり心地よく耳を掠めていく。
    一般生徒の最終下校のチャイムまであとわずか。

    委員会の集まりが長引き、担当教員に頼まれて資料室に資料を置きに行った。ついでに整理まで行った所までは予定通りだった。そこから更に社会科教師に捕まり、今日提出だった課題を社会科教室前の箱から持ってくることを頼まれ、更にそれを名簿に纏めあげた。あろうことか最後に教頭に捕まって長話に付き合わされてしまった。

    今日もしんのすけと帰る予定だった。社会科教師に捕まった時点でしんのすけには先に帰っていいと連絡した。本当はしんのすけと帰れたのに。きっとしんのすけはモテるから、そこらのJKに絡まれて流されて一緒に帰ってしまったんだろう。

    アイツの隣は僕のものなのに――

    鞄は教室に置いてきた。しんのすけとは教室で待ち合わせていた。明日アイツに彼女が出来てたら、僕はどんな顔をするだろう。泣くか怒るかそれとも笑うか。こんな思いをするなら先に帰っていいなんて言わなきゃ良かったんだ。僕の心はなんて狭く 2725