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    岩藤美流

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    岩藤美流

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    14ちゃんイマジナリー ネギおじさんの話

    ただのさんからもらった1枚絵を元にお話を書く企画。ただのさんの持ちキャラの一人、ネギおじさんの話です。せっかくなのでうちのラリエレゼンのベリルと絡めてみました。

    ##14ちゃん

    「あれ?」
     ポワロ・アリウムは目を覚まして、首を傾げた。目を開けたものの、視界に映るのは淡いクリーム色の世界だけだ。ゆらゆらと黒い影が揺れているのぐらいは見えなくもないが、一般に「見えている」と呼ばれる状態とは程遠いだろう。
     ポワロはぼんやりと辺りを見回したけれど、どちらを向いても明るいと感じる。ということは、今は日中。ポワロは、はて、と腕を組んで考え込み、自分がどういう状況に置かれているのか思い出した。
    「ああ、寝落ちしちゃったんですね」
     確か自分は、未知の採取場を探して東部森林にやって来た。採取場の噂を頼りに探したけれど、それらしいものは見つからない。夜に見つかると言われる植物を、素直にその時間まで待とうと、大木の下に座り込んで、さてそれからの記憶が無い。きっと待ちくたびれて眠ってしまったのだろう。疲れていたのか、深夜などとうに過ぎて、朝になっているようだ。
    「さて、まあそれは残念ですけど、しかし、うーん、これは困りましたねえ」
     ポワロは顎に手を当てて、眉を寄せた。
    「眼鏡、何処に行ったんでしょう?」
     ポワロは生来、目が見えない。裸眼で認識できるのは明るさだけで、淡いクリーム色の世界に生きていた。若い頃、エーテルの流れを視認できるという特殊な眼鏡を手に入れた時、世界が変わった。その時の事は今でも鮮明に思い出せる。あの、世界に色彩が現れた瞬間! 香りを愛していた植物の形は、手で触れた通りの姿だったけれど、あの色。鮮やかな緑、赤、紫、黄、それに青。世界の美しさ、多彩さを感じたあの日の感動を、ポワロは忘れられなかったし、より一層植物のことを愛するようになったものだ。
     そんな眼鏡が、何処にも無いのだ。手探りで近くを触っても指先にあたるのは土や草ばかりで、荷物を紐解いてもそれらしきものが見つからない。さて困った。ポワロは一通り探し終えた後で、腕を組んで大樹にもたれる。
     困りはしているけれど、焦っても悲観しても仕方ない。ここは東部森林、いたずらな森の妖精が取って行ったとも考えられるし、暇を持て余したモーグリ族が隠したというのもあり得る。もしくは野生動物が……いやこちらは流石に、匂いに敏感なポワロが気付かないわけがない。いずれにせよ、眼鏡の無い状態で探し物をするなど至難の業である。眼鏡のことはいったん諦めて、テレポで街に行けば親切な人の一人ぐらいはいそうなものだし、リテイナーやリンクシェルで繋がっているシュエットなどに頼めば手助けもしてくれるような気がする。気がするだけだが。
    「うーん、まあとりあえず、街に戻りますか……グリダニアに飛べば……」
    「あ」
    「ん?」
     近くで人の声がして、ポワロはそちらを見た。つもりだ。見えないのだから正確な方向も微妙なところだし、光の無い瞳が相手を怖がらせてもいけないと、ポワロは目を閉じる。足音が近づいてきて、その人物は「あ~」と気の抜けた声を出した。
    「やっぱり、ネギのおじさんでしたぁ」
    「おや? その声は、ベリル君ですか?」
     気の抜けたような、ねっとりしたような独特の喋り方に聞き覚えが有った。確か、グリダニアで薬草を売買しているエレゼン族の若者だ。同じ植物を愛する者として何度か取引もしている。もっとも、ベリルのほうは単に植物を愛しているというより、その効能のほうを好んでいるらしく、彼はいつも何かに酔っているように揺らめいていたのを覚えている。
    「ネギのおじさんも、トリリウムを採取しに来たんですかあ?」
    「ああ、実はそうなんです。あの花、とても綺麗でしょう? 白いカーテンがかかったみたいに見えて、近くで見るとうっとりしてしまって」
     白いカーテンがかかっているのは今も同じなのだけれど。そんなことを考えながら、答えると、ベリルも「そうですねえ」とのんびり頷いた。
    「お花もとってもきれいですけど、球根はお薬にもなるから素晴らしいですよねぇ。まあ、飲みすぎたら大変なことになっちゃうんですけど……ふふふ」
     やはりベリルは効能のほうが気になるようだ。ポワロはしかしそれを気にはしなかった。同じ植物を愛する仲間で、着目する点が違うのは個性というものだろう。ひと回り近く年の離れたこの若者が、興味本位で毒草を口にして死なないことを祈るのみだ。
    「ちょうどあのあたりに生えているってウワサですよぉ。一緒に取りにいきませんかあ?」
    「ああ、そうしたいのはやまやまなんですが、実は眼鏡を無くしてしまいまして」
    「眼鏡ですかぁ?」
    「そうです、恥ずかしながら私、あれがないと前が見えなくて……」
     ベリルは形容しがたい不思議そうな声を出してから、言った。
    「その、頭の上のやつじゃなくて、ですかぁ?」
     そう言われて頭の上に手をやると、ちょこんと乗った眼鏡に手が当たる。まさかこんな、古典的な、初歩的な見落としをするなんて。
    「おやおや、これは……これはこれは、お恥ずかしい」
     ポワロは苦笑しながら眼鏡を手に取って、改めてかける。一瞬で世界は色付いた。それが健常な者達の見ている世界と同じなのか、ポワロは知らないし、知る必要も無い。彼には彼の世界が見えているし、ベリルにはベリルの世界が見えている。それでまあ、齟齬が無ければそれでいいのだ。
     すぐ傍に、ベリルという名にふさわしい濃い緑の髪をした青年が立っている。相変わらず不健康そうなクマを浮かべて、何かに酔っているのかトロンとした顔をした彼は、にへ、とポワロに笑ってみせた。
    「ほら、あそこ、いっぱい生えてますよぉ」
     見れば、ここに来た時には緑一色だった草の中に、白い花が揺れている。可憐で慎ましやかな白は、風に揺れて不思議と眩しいほどだった。ポワロは微笑んで、「では早速、少し採取するとしましょうか」と立ち上がった。
     今日も、世界は色鮮やかだ。
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    岩藤美流

    DONE歌詞から着想を得て書くシリーズ①であり、ワンライの「さようなら、出会い」お題作品の続きです。参考にした歌は「A Love Suicide」です。和訳歌詞から色々考えてたんですけど、どうも予想通りタイトルは和訳すると心中だったようですが、あずいでちゃんはきっと心中とかする関係性じゃないし、どっちもヤンヤンだからなんとかなりそうだよな、と思ったらハッピーエンドの神様がゴリ押しました。イグニハイド寮は彼そのものの内面のように、薄暗く深い。青い炎の照らしだす世界は静かで、深海や、その片隅の岩陰に置かれた蛸壺の中にも少し似ている気がした。冥府をモチーフとしたなら、太陽の明かりも遠く海流も淀んだあの海底に近いのも当然かもしれない。どちらも時が止まり、死が寄り添っていることに変わりはないのだから。
     さて、ここに来るのは初めてだからどうしたものか。寮まで来たものの、人通りが無い。以前イデアが、うちの寮生は皆拙者みたいなもんでござるよ、と呟いていた。特別な用でもなければ出歩くこともないのかもしれない。さて、寮長の部屋といえばもっとも奥まっている場所か、高い場所か、あるいは入口かもしれないが、捜し歩くには広い。どうしたものかと考えていると、「あれっ」と甲高い声がかけられた。
     見れば、イデアの『弟』である、オルトの姿が有る。
    「アズール・アーシェングロットさん! こんばんは! こんな時間にどうしたの?」
     その言葉にアズールは、はたと現在の時刻について考えた。ここまで来るのに頭がいっぱいだったし、この建物が酷く暗いから失念していたけれど、夜も更けているのではないだろうか。
    「こ 5991

    れんこん

    DONE第二回ベスティ♡ワンライ用
    フェイビリ/ビリフェイ
    お題「HELIOS∞CHANNEL」
    何度も何度も震えるスマホ、画面も何度も光って、最早充電も尽きかけてしまっている。
    鳴り止まなくなって電源ごと落としてしまうのも日常茶飯事ではあるけれど、今回は規模が違う。
    ……今朝おチビちゃんが撮ってエリチャンにアップロードした写真がバズっている。
    その写真は新しく4人の体制となったウエストセクターで撮ったもので……それだけでも話題性があるのは確かだけれど、それよりもっとややこしいことでバズってしまった。

    『フェイスくん、この首の赤いのどうしたの!?』
    『これってキスマーク……。』
    『本当に!?どこの女がこんなこと、』

    「はぁ〜……。」

    止まらない文字の洪水に、思わず元凶である自分の首を撫でさする。
    タグ付けをされたことによる拡散の通知に混じって、彼女たちからの講義の連絡も合わさって、スマホは混乱するようにひっきりなしに泣き喚いてる。
    いつもはなるべく気をつけているからこんなこと滅多にない。……ただ、昨夜共に過ごした女の子とはまだ出会ったばかり……信じて寝入っている間にやられてしまったらしい。
    今日はタワーから出るつもりがないから別にそのマークを晒していてもわざわざ突っ込んでくる 2313

    affett0_MF

    TRAININGぐだマンワンドロワンライ
    お題「天使の囁き/ダイヤモンドダスト」
    はぁ、と吐き出した息が白く凍っていく。黒い癖毛を揺らしながら雪を踏みしめ歩く少年が鼻先を赤く染めながらもう一度大きく息を吐いた。はぁ。唇から放たれた熱が白く煙り、大気へと散らばっていく。その様子を数歩離れたところから眺めていた思慮深げな曇り空色の瞳をした青年が、口元に手をやり大きく息を吸い込んだかと思うと、
    「なぁマスター、あんまり深追いすると危ねぇっすよ」
    と声を上げた。
     マスターと呼ばれた癖毛の少年は素直にくるりと振り返ると、「そうだね」と笑みと共に返し、ブーツの足首を雪に埋めながら青年の元へと帰ってきた。
     ここは真冬の北欧。生命が眠る森。少年たちは微小な特異点を観測し、それを消滅させるべくやってきたのであった。
    「サーヴァントも息、白くなるんだね」
     曇空色の瞳の青年の元へと戻った少年が鼻の頭を赤くしたまま、悪戯っぽく微笑んだ。そこではたと気が付いたように自分の口元に手をやった青年が、「確かに」と短く呟く。エーテルによって編み上げられた仮の肉体であるその身について、青年は深く考えたことはなかった。剣――というよりも木刀だが――を握り、盾を持ち、己の主人であるマスターのために戦 2803