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    岩藤美流

    @vialif13

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    岩藤美流

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    アズイデワンライお題「バースデー」

    徒然なるままに、付き合うどころか自覚する前のアズを見守る双子のお話。小説というよりアウトプットになりました。

    ##ワンライ

    元々、出会った頃から色々な意味で『面白い』と思っていたけれど、近頃のアズールの変化は彼らウツボの兄弟にとって大変興味深いものだった。
     まずもって、アズール・アーシェングロットという人魚は他人に興味を持っていない。いや、興味はあったのだろうけれど、それは個人の技術や才能、そしてそれをどう絡め捕ってどう利用するか、という類のものだと思う。少なくとも相手に好意を抱くといったことは無かったのだ。それは異性でも同性でも同じことで、双子と呼ばれるウツボ達であっても変わらない。もっとも、アズールにその自覚が無いだけで、双子達は彼にとって自分達が特殊な存在であろうとは思っている。
     話がそれた。
     それはそれとして、アズールは契約と対価を重んじる。己が対価として何を要求されるかわからないから、彼が人に助けを求めることは無い。同じように、相手へ一方的に貸しを作って対価を巻き上げるということもしないのだ。そうしたほうが早いこともあるのだけれど、彼は頑なに契約関係を結ぶことに拘った。あくまで、相手が助けを求めるから契約を結び、何かを与え対価を得るのだ。例外であるのは家族と、恐らくだが双子ぐらいだろう。
     アズールは、双子の前では深海でそうしていたように、砕けた話し方をすることもある。主に機嫌が悪い時だけれど。そして双子からの誕生日プレゼントを律義に受け取った。それは毎回、アズールを驚かせて時に困らせるような内容だったのだけれど、それでも彼は双子との関係を拒絶はしなかったし、毎年彼らの誕生日には何かしら、『双子が喜びそうな』プレゼントを用意したものだ。
     アズールも双子も『欲しいものは手に入れられる』環境だった。わざわざ互いにプレゼントを交換することに大した意味は無い。しかし彼らは契約関係ではなく、そして貸し借りを極端に嫌うアズールが双子からのプレゼントを拒むこともない。それがある種の特別感を伴っていて、双子はいつもにこにこ笑って顔を見合わせ、アズールに絡みついたものだ。彼はむすりとした顔をしていることが殆どだった。



    「イデアさんが、ボードゲームを手に入れてくれたそうです。僕の好みのものだから、手合わせするのがとても楽しみで」
     バースデーボーイとして祝われても、贈り物は一切受け取らず。代わりにモストロ・ラウンジでお食事を、と、自分の誕生日さえ商売に利用する男の言葉がそれだ。ラウンジは開店前。支配人室でくつろいでいた双子は顔を見合わせて、それから「それはそれは」とジェイドのほうが微笑む。
    「楽しい時間になることでしょうね」
    「ええ、イデアさんを打ち負かせて、あの人が悔しがる顔をたんと拝むのが待ち遠しいです。バースデーの間はそうもいきませんが、終わって時間が取れ次第――」
     その明るい声音。表情。どれもこれも嬉しそうで。そんなに喜びを露にするのは決算書を見ている時ぐらいなものだ。
    「アズール、ホタルイカ先輩のこと、好きだもんねぇ~」
     フロイドもまた目を細めると、アズールは怪訝な顔をした。それこそ、本当に理解できない、といった表情だった。
    「フロイド、何を言ってるんです? 僕とイデアさんは部活が同じなだけです。彼の技術や才能については評価していますが――」
    「はーい、そうだねえ~」
     アズールが反論を口にしている間に、フロイドはニヤニヤしたままそう言って会話を打ち切ってしまった。アズールはますます眉を寄せて不愉快そうにしている。それも含めて全てがおかしくて、ジェイドは「ふふ」と思わず笑った。
    「なんです、ジェイドも何か言うつもりですか」
    「いえいえ。イデアさんもアズールのためにボードゲームを手配したのでしょうから、一緒に堪能できることを喜ぶと思いますよ」
    「ええ、そうでしょう。僕の誕生日に、わざわざ僕に負けるだろうボードゲームを用意してくれるだなんて。僕は慈悲深い男ですから、彼の期待に応えてあげるんです」
     得意げに笑みを浮かべたアズールを、双子はまた顔を見合わせて、ニコニコと見守るのだった。



     仕事柄、情報には通じている。イデアの決してバレてはいけない秘密の写真も手に入れているぐらいなのだから、アズールが彼の誕生日に何を贈ったのか、ぐらい、双子もわかっている。それはアズールの趣味そのものの、高級ブランドの青い色をしたカップだったらしい。イデア本人は紅茶を飲むけれど、そんな洒落たものに淹れたりしない。清潔な入れものならなんでもいいと、実験用のビーカーでさえ飲むというのだから。イデアが望んだ贈り物ではなかったことは明らかだ。
     アズールは、契約関係を重んじる。相手が望んでいないことを押し付けて契約を迫ることは無いのだ。それを双子達は知っている。だからこそ、わかる。アズールの行動が異常だと。
     アズールはイデアが望んでいないカップを、誕生日に贈った。おまけに、アズールの趣味のモノを。双子には、双子の好きなものを贈っているのだ。彼らが喜びそうなものを。だのに、イデアには自分の好みのカップを。
     そして、本人はそうは言っていないものの。イデアからアズールへの贈り物を、彼は拒まない。



    「あの調子じゃあ、なかなか気付きそうにないよなあ~」
     ラウンジでアズールが上機嫌に接客をしているのを見ながら、フロイドは呟く。隣にいたジェイドも、「そうですね」と笑顔で頷いた。
    「ですが、とても楽しみです。”あの”アズールが、これからどう変わっていくのか」
    「あは。でもどうすんの? アズールの片思いだったら」
    「それは心配いらないでしょう。こちらには、例の情報もあるわけですし」
    「そっかあ、じゃあ……どーすっかな。オレらのほうでもつついてみる? その方が早く進むんじゃね?」
    「さて、それは彼らの”ゲーム”が膠着した時でいいかもしれません。なにしろこちらには決定的なカードがあるわけですから」
     そう言ってジェイドが自分の端末を見る。ま、それもそっかあ、とフロイドが頷いていると、遠くからアズールの声が聞こえる。サボっていないで、のようなことを言っているから、二人は笑顔で従い、仕事へと戻っていった。


     イデアの端末に保存された、アズールの隠し撮りと思わしき写真。それが大切にロックされているのを知っているのは、今のところこの世に三人だけだ。
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    れんこん

    DONE第二回ベスティ♡ワンライ
    カプ無しベスティ小話
    お題「同級生」
    「はぁ……。」
    「んんん? DJどうしたの?なんだかお疲れじゃない?」

    いつもの談話室でいつも以上に気怠そうにしている色男と出会う。その装いは私服で、この深夜帯……多分つい先ほどまで遊び歩いていたんだろう。その点を揶揄うように指摘すると、自分も同じようなもんでしょ、とため息をつかれて、さすがベスティ!とお決まりのような合言葉を返す。
    今日は情報収集は少し早めに切り上げて帰ってきたつもりが、日付の変わる頃になってしまった。
    別に目の前のベスティと同じ時間帯に鉢合わせるように狙ったつもりは特に無かったけれど、こういう風にタイミングがかち合うのは実は結構昔からのこと。

    「うわ、なんだかお酒くさい?」
    「……やっぱり解る?目の前で女の子達が喧嘩しちゃって……。」
    「それでお酒ひっかけられちゃったの?災難だったネ〜。」

    本当に。迷惑だよね、なんて心底面倒そうに言う男は、実は自分がそのもっともな元凶になる行動や発言をしてしまっているというのに気づいてるのかいないのか。気怠げな風でいて、いつ見ても端正なその容姿と思わせぶりな態度はいつだって人を惹きつけてしまう。
    どうも、愚痴のようにこぼされる 2767

    h‘|ッЛ

    DONE #しん風版深夜の60分一本勝負
    お題「放課後」

    遅刻!ワンライ+20分!

    何度書いてもくっつく話は良いよねぇ...
    しん風しか勝たん...マジで...

    ※誤字に気づいて途中修正入るかもかもです。

    ⚠️アテンション
    高校生未来パロ。
    同じ学校通ってる。
    最初付き合ってない。

    3 2 1 どぞ
    しん風ワンライ『放課後の告白』

    ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

    西陽の射す窓。教室から溢れ出る紅に染る廊下。笑い声や掛け声が重なり心地よく耳を掠めていく。
    一般生徒の最終下校のチャイムまであとわずか。

    委員会の集まりが長引き、担当教員に頼まれて資料室に資料を置きに行った。ついでに整理まで行った所までは予定通りだった。そこから更に社会科教師に捕まり、今日提出だった課題を社会科教室前の箱から持ってくることを頼まれ、更にそれを名簿に纏めあげた。あろうことか最後に教頭に捕まって長話に付き合わされてしまった。

    今日もしんのすけと帰る予定だった。社会科教師に捕まった時点でしんのすけには先に帰っていいと連絡した。本当はしんのすけと帰れたのに。きっとしんのすけはモテるから、そこらのJKに絡まれて流されて一緒に帰ってしまったんだろう。

    アイツの隣は僕のものなのに――

    鞄は教室に置いてきた。しんのすけとは教室で待ち合わせていた。明日アイツに彼女が出来てたら、僕はどんな顔をするだろう。泣くか怒るかそれとも笑うか。こんな思いをするなら先に帰っていいなんて言わなきゃ良かったんだ。僕の心はなんて狭く 2725

    YOI_heys

    DONE第1回 ヴィク勇版ワンドロワンライ『ひまわり』で書かせていただきました!
    ひっさびさに本気出して挑んでみましたが、急いだ分かなりしっちゃかめっちゃかな文章になっていて、読みづらくて申し訳ないです💦これが私の限界…😇ちなみにこちらhttps://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17839801#5 の時間軸の二人です。よかったら合わせてご覧下さい✨
    第1回 ヴィク勇版ワンドロワンライ『ひまわり』※支部に投稿してあるツイログまとめ内の『トイレットペーパーを買う』と同じ時間軸の二人です。
    日常ネタがお好きな方は、よかったらそちらもご覧ください!(どさくさに紛れて宣伝)



    第1回ヴィク勇ワンドロワンライ『ひまわり』


    「タダイマー」
    「おかえり! って……わっ、どうしたのそれ?」

    帰ってきたヴィクトルの腕の中には、小ぶりなひまわりの花束があった。

    「角の花屋の奥さんが、持ってイキナ~ってくれたんだ」

    角の花屋とは、僕たちが住んでいるマンションの近くにある交差点の、まさしく角にある個人経営の花屋さんのことだ。ヴィクトルはそこでよく花を買っていて、店長とその奥さんとは世間話も交わす、馴染みだったりする。

    ヴィクトルは流石ロシア男という感じで、何かにつけて日常的に花を買ってきては、僕にプレゼントしてくれる。日本の男が花を贈るといったら、母の日や誕生日ぐらいが関の山だけど、ヴィクトルはまるで息をするかのごとく自然に花を買い求め、愛の言葉と共に僕に手渡してくれるのだ。
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