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    岩藤美流

    @vialif13

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    岩藤美流

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    アズイデワンライお題「薬」
    付き合ってない二人、とんでもないことがバレてしまってることに気付いてないあずにゃんを添えて

    ##ワンライ

    ついに、ついにその時がきた!
     イデアは勝利の喜びに思わず椅子から立ち上がり、「っしゃあ!」と彼らしくもない声を出した。急に健康そうになったイデアをよそに、机に向かったままのアズールは苦虫を嚙み潰したような顔をしている。
    「まさかこの僕が、このゲームで負けるなんて……!」
     そう、今まで二人が戦っていたボードゲームは、アズールが得意とするマネー系のボードゲームだ。アズールがイデアに負けたのはやり方を覚えるまでの数回で、後はやる度にアズールが勝利していたものだから、しまいにイデアはそのゲームを提案しなくなるほどだった。
     しかし先日、イデアが言った。
    『罰ゲーム有りでボドゲ勝負しない? お互い指定したゲームを順番にプレイして、先に2勝したほうの言うことをなんでも聞くってルールで』
     それに対してアズールは『なんでも、は少し範囲が広すぎますね。その時その場で完結することを条件とするなら乗ります』と言った。そして勝負の約束はなされ、今日に至る。一戦目はイデアの得意とするすごろく系ゲームで勝ち、二戦目、予想通りアズールは大の得意であるそのボードゲームを指定してきた。
     そしてイデアの大勝利、つまり先に2勝したわけだから、罰ゲームを指定できるのだ。
    「拙者が本気を出せば、頭脳系のボドゲでもアズール氏にも負けないってことですわ、フヒヒッ、どんな気持ちですかあ? 自分の得意なゲームで負けたのって~」
    「それを聞くのが罰ゲームですか?」
     おっと、そんなことを聞くためにこの賭けを始めたわけではない。イデアは「違いますし!」とすぐに話を切り替えて、懐から小瓶を取り出す。
     市販されているエナジードリンクのラベルを剥がしたもので、中には液体が入っているようだが、茶色い瓶だから外見では何かわからない。それをアズールの前で揺らしながら「これを飲んでもらいます!」とイデアは笑った。
    「それ、何です?」
    「それは秘密」
     アズールが怪訝な顔をして瓶とイデアを交互に見つめている。心底嫌そうな顔に、イデアは胸がドキドキしてくるのを感じた。
    「この部屋の中で効果が完結するものなんでしょうね」
    「勿論! 拙者、約束は守る性分なので!」
     大きく頷いて、瓶を差し出す。「さささ、ぐいっと。一息に呑んだ方が楽ですぞ」と言って渡すと、アズールは不愉快そうに眉を寄せて瓶の蓋を開け、匂いを嗅いでますます顔をしかめた。
     イデアも事前に飲んだけれど、結構なヤバい匂いがしたし、味も最悪だった。罰ゲームにしても大丈夫かシミュレーションまでしてやったのだから、アズールには感謝してもらいたい。もっとも、口が裂けても言えないが。
    「……はあ、全く。……では」
     アズールは一つ大きな溜息を吐いて、その瓶の中身を呷った。それを見て、イデアは思わず顔を赤らめた。
     イデアが飲ませたもの、それは惚れ薬である。飲んだ時に目の前にいる人に惚れて、デレデレになってしまうのだ。条件により効かない場合も有るが、殆どの場合効果は抜群、しかしその効能は短く、ものの数分。
     そう、イデアはアズールに恋愛感情を抱いていた。けれど告白する勇気が無い彼は、アズールになんとか理由をつけて惚れ薬を飲ませて、一時でもいいから幸せを噛み締めたいと思っていたのだ。それが惚れ薬による作用でもいい、アズールに「イデアさん、好き……」と少女漫画のように謎のほわほわを飛ばしながら言われただけで良かった。それを支えに生きていける気がした。
     そして効果が切れたら「アズール氏が拙者にメロメロになるクソダサい姿を見れて面白かったですぞwww」とでも煽っておけばいい。そうすれば、アズールもこれがただの性格の悪い罰ゲームだったと思ってくれるだろう。
     嘘でもいいからアズールに好きだと言ってほしかった、それだけでこの恋を諦められると思ってのことだった。こんな陰キャの男にアズールが惚れるなんてことは、99%あり得ないのだから。
     さあさあ、拙者の胸に飛び込んで、目を潤ませて好きだと言ってくるがいい。イデアはドキドキしながらアズールを見守った。
     アズールは瓶の中身を飲み干して、机に置き。そして、涙の滲んだ瞳をイデアに向けて。
    「……くっそまずい!」
     と叫んだ。
    「……へ?」
    「なんですかこれ!? 尋常じゃない不味さですね!? これが罰ゲームですか、本当に酷い味だ……!」
     アズールはイデアを見ても何も変わりなく、瓶に向かって悪態をついている。そんな様子をポカンをして見ながら、イデアは情報を整理していた。
     効いてない。効いてないわこれ。
     効かない場合。効かないのは何故か。
     ――対象に既に惚れている場合には、効果は出ない――。
    「……ファッ!?」
     ボッ、と音を立てて、顔はおろか髪まで真っ赤に染まったイデアに、アズールは怪訝な顔をした。
    「なんです、変な声を出して。おまけに見たこと無いぐらい赤くなってますけど」
    「ひゃ、な、なんでも、ない……えっ、マジで? そんな、えっ、そんなことってある……1%を神引きしたとかそんな、嘘だろ……えっ」
    「何をブツブツ言ってるんです? そんなことより、このゲームで僕が負け越しなんて許せない、もう一戦――」
     床を見て独り言を漏らしていると、アズールが手を伸ばして触れたものだから、イデアは「ピャアアーーッ!」とまた奇声を発する羽目になった。
     

     二人がお互いに好意を伝え合うまでには、まだもう少し時間がかかる。
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    岩藤美流

    DONE歌詞から着想を得て書くシリーズ①であり、ワンライの「さようなら、出会い」お題作品の続きです。参考にした歌は「A Love Suicide」です。和訳歌詞から色々考えてたんですけど、どうも予想通りタイトルは和訳すると心中だったようですが、あずいでちゃんはきっと心中とかする関係性じゃないし、どっちもヤンヤンだからなんとかなりそうだよな、と思ったらハッピーエンドの神様がゴリ押しました。イグニハイド寮は彼そのものの内面のように、薄暗く深い。青い炎の照らしだす世界は静かで、深海や、その片隅の岩陰に置かれた蛸壺の中にも少し似ている気がした。冥府をモチーフとしたなら、太陽の明かりも遠く海流も淀んだあの海底に近いのも当然かもしれない。どちらも時が止まり、死が寄り添っていることに変わりはないのだから。
     さて、ここに来るのは初めてだからどうしたものか。寮まで来たものの、人通りが無い。以前イデアが、うちの寮生は皆拙者みたいなもんでござるよ、と呟いていた。特別な用でもなければ出歩くこともないのかもしれない。さて、寮長の部屋といえばもっとも奥まっている場所か、高い場所か、あるいは入口かもしれないが、捜し歩くには広い。どうしたものかと考えていると、「あれっ」と甲高い声がかけられた。
     見れば、イデアの『弟』である、オルトの姿が有る。
    「アズール・アーシェングロットさん! こんばんは! こんな時間にどうしたの?」
     その言葉にアズールは、はたと現在の時刻について考えた。ここまで来るのに頭がいっぱいだったし、この建物が酷く暗いから失念していたけれど、夜も更けているのではないだろうか。
    「こ 5991

    れんこん

    DONE第二回ベスティ♡ワンライ
    カプ無しベスティ小話
    お題「同級生」
    「はぁ……。」
    「んんん? DJどうしたの?なんだかお疲れじゃない?」

    いつもの談話室でいつも以上に気怠そうにしている色男と出会う。その装いは私服で、この深夜帯……多分つい先ほどまで遊び歩いていたんだろう。その点を揶揄うように指摘すると、自分も同じようなもんでしょ、とため息をつかれて、さすがベスティ!とお決まりのような合言葉を返す。
    今日は情報収集は少し早めに切り上げて帰ってきたつもりが、日付の変わる頃になってしまった。
    別に目の前のベスティと同じ時間帯に鉢合わせるように狙ったつもりは特に無かったけれど、こういう風にタイミングがかち合うのは実は結構昔からのこと。

    「うわ、なんだかお酒くさい?」
    「……やっぱり解る?目の前で女の子達が喧嘩しちゃって……。」
    「それでお酒ひっかけられちゃったの?災難だったネ〜。」

    本当に。迷惑だよね、なんて心底面倒そうに言う男は、実は自分がそのもっともな元凶になる行動や発言をしてしまっているというのに気づいてるのかいないのか。気怠げな風でいて、いつ見ても端正なその容姿と思わせぶりな態度はいつだって人を惹きつけてしまう。
    どうも、愚痴のようにこぼされる 2767

    れんこん

    DONE第二回ベスティ♡ワンライ用
    フェイビリ/ビリフェイ
    お題「HELIOS∞CHANNEL」
    何度も何度も震えるスマホ、画面も何度も光って、最早充電も尽きかけてしまっている。
    鳴り止まなくなって電源ごと落としてしまうのも日常茶飯事ではあるけれど、今回は規模が違う。
    ……今朝おチビちゃんが撮ってエリチャンにアップロードした写真がバズっている。
    その写真は新しく4人の体制となったウエストセクターで撮ったもので……それだけでも話題性があるのは確かだけれど、それよりもっとややこしいことでバズってしまった。

    『フェイスくん、この首の赤いのどうしたの!?』
    『これってキスマーク……。』
    『本当に!?どこの女がこんなこと、』

    「はぁ〜……。」

    止まらない文字の洪水に、思わず元凶である自分の首を撫でさする。
    タグ付けをされたことによる拡散の通知に混じって、彼女たちからの講義の連絡も合わさって、スマホは混乱するようにひっきりなしに泣き喚いてる。
    いつもはなるべく気をつけているからこんなこと滅多にない。……ただ、昨夜共に過ごした女の子とはまだ出会ったばかり……信じて寝入っている間にやられてしまったらしい。
    今日はタワーから出るつもりがないから別にそのマークを晒していてもわざわざ突っ込んでくる 2313

    affett0_MF

    TRAININGぐだマンワンドロワンライ
    お題「天使の囁き/ダイヤモンドダスト」
    はぁ、と吐き出した息が白く凍っていく。黒い癖毛を揺らしながら雪を踏みしめ歩く少年が鼻先を赤く染めながらもう一度大きく息を吐いた。はぁ。唇から放たれた熱が白く煙り、大気へと散らばっていく。その様子を数歩離れたところから眺めていた思慮深げな曇り空色の瞳をした青年が、口元に手をやり大きく息を吸い込んだかと思うと、
    「なぁマスター、あんまり深追いすると危ねぇっすよ」
    と声を上げた。
     マスターと呼ばれた癖毛の少年は素直にくるりと振り返ると、「そうだね」と笑みと共に返し、ブーツの足首を雪に埋めながら青年の元へと帰ってきた。
     ここは真冬の北欧。生命が眠る森。少年たちは微小な特異点を観測し、それを消滅させるべくやってきたのであった。
    「サーヴァントも息、白くなるんだね」
     曇空色の瞳の青年の元へと戻った少年が鼻の頭を赤くしたまま、悪戯っぽく微笑んだ。そこではたと気が付いたように自分の口元に手をやった青年が、「確かに」と短く呟く。エーテルによって編み上げられた仮の肉体であるその身について、青年は深く考えたことはなかった。剣――というよりも木刀だが――を握り、盾を持ち、己の主人であるマスターのために戦 2803