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    岩藤美流

    @vialif13

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    岩藤美流

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    フロイデ試作品1

    お題で頂いたフロイデのすけbになるやつですが、前置きがすごく長くなっていってます! 愛は無いけど有ります!(?)

    ##フロイデ

    「な、なんで、何でこんなことになってんの……!」
     自室のベッドの上。壁際に追い詰められて、イデアは涙目で零した。彼を追い詰めている大きな影は、ゆるりと首を傾げて、にたりと笑う。
    「オレにもよくわかんねぇけど、ホタルイカ先輩のせいじゃね?」
    「どう考えてもフロイド氏のせいです、本当にありがとうございました! アーーーッ! 助けて、助けてアズール氏、お宅の子が拙者に乱暴しようとして……」
     ぴゃあーっ、と叫んでいると、ドン、と壁に手が置かれてイデアは飛び上がって黙った。青褪めるイデアの顔を覗き込んで、フロイドは低い声で問う。
    「なんで今、アズールの名前呼ぶの?」
     何でって言われてもそりゃ救援要請ってやつでしょいやオルトでも良かったかなでもオルトは今自動更新中だから再起動しないし……。イデアの頭の中で言葉がグルグルと駆け回るけれど、口にできたのは「スイマセン……」という小さな謝罪のみだった。それを聞いて、フロイドがまたゆっくりと微笑む。
    「じゃあじゃあ~、ヤろっかあ~」
     だから! どうして! そうなるの! イデアは心の中だけで叫んだ。



     そもそもの始まりまで遡ると、それは2カ月ほど前のことになる。
     変身薬を飲んで人間の姿になり生活をしている人魚達は、定期的に薬を飲み続けなければならない。日課をこなす為に朝起きたフロイドは、いつもの薬を飲もうとしてそこに何も無いことに気付いた。
     そういや、昨日で全部飲みきったからアズールに新しい奴をもらわなきゃだったっけ。忘れてたあ。
     ジェイドの分をもらおうかと思ったけれど、彼はもう部屋に姿が無くて、おまけに変身薬も無いらしい。フロイドはしばらく考えて、「ジェイドの分ももらってきてやろ~、オレってやさしー」と上機嫌にアズールの部屋に向かった。
     アズールも授業に向かったのか部屋はもぬけの殻で、フロイドは鍵をぶち壊して中に入った。優しい人間のすることではない。いつもアズールが薬を入れている棚を漁ると、様々な薬瓶が並んでいる。同じようなものばかりで、蓋を開けて匂いを嗅いでも違いが良くわからない。まあ、変身薬だろうし、とフロイドは適当にそのうちの一本を飲み干した。
     さて、ジェイドの分と自分の分を部屋に持って行こう、と思っていたところ、フロイドの身体に異変が起こった。眩暈のような感覚、呼吸ができず体が動かない。まるで人魚から人間の姿になる時のようだ。あれ、間違えて解除薬でも飲んだかな、と眉を寄せ、その奔流に身を任せて床に倒れ込む。しばらくグルグルと体内を何かが駆け巡るような異常な感覚に耐えていると、やがてそれが落ち着いた。ふう、と一つ溜息を吐いて目を開けると、フワフワが目に入った。
     ふわふわ?
     フロイドが顔を上げると、自分の身体はフワフワのもちゅもちゅになっていた。




     要するにフロイドは子猫に変身してしまったのであるが、その後アズールを探して学園を彷徨っているうちに偶然にもねこあつめをしていたイデアに見つかり、ねこたんかわいいねこたん、いい子だね、こんなに小さいのに大変だねと保護され、パーカーの中でぬくぬく温められた。その後なんとかしてイデアの保護から逃れ、アズールの元へとたどり着いたフロイドは彼に散々文句を言われつつも元の姿に戻れ、正座して説教をされながらぼんやりとイデアのことを考えることになった。
     可愛い子猫たんだと信じているイデアはフロイドを大変に溺愛した。もふもふなでなでされるのは何故だかとても気持ち良かったし、腹をくすぐられるのも、すりすりと顔を寄せられるのさえどうしてたか心地良かった。それはジェイドやアズールと一緒にいる時の感覚とはまた違っていて、フロイドはまたそうしてイデアによくされたいと思ったのだ。
     ところがイデアのほうはあの子猫がフロイドだったなんて知らないわけである。
     突然「ホタルイカせんぱぁい」と懐いてきた巨漢に怯え逃げまどった。アズールに「僕なんかしちゃった!?」と聞いても、アズールだって詳しい事情は知らないんだから「いつもの気まぐれでしょう、放っておけばそのうち収まります」と答えてしまう。そんなことは無いのでフロイドの接触は止まらなかった。
     イデアを見つければ、ホタルイカ先輩と名前を呼んで追いかけてくる。逃げてもボドゲ部までやってきて、何してんのぉ? と顔を覗き込んでくる。フロイドにしてみれば「ねえねえ遊んでよ」と子猫の時と同じノリで甘えているわけだが、イデアから見れば身長190cm越えの大男、おまけに学内でも有名なヤクザに言われるのだから、「お金ならあげますから!」と泣いて土下座する以外に選択肢が無い。困ったすれ違いが起こっていたけれど、事情が誰にもわからないから解決もしようがない状態が続いた。
     そして先日、イデアの誕生日にお祝いの言葉をかけたフロイドがそのままの流れで言ったのだ。
    「ねえホタルイカ先輩、オレぇ、プレゼント渡したいんだけど、先輩の部屋に遊びに行っていい?」
    「えっ、い、いや、だめ……」
    「?」
    「ひぃーーーっ、す、少しだけ、なら……」
    「あはぁ、ありがと。じゃあ、週末に行くねえ」
     しゅうまつ、という発音を終末に変換しながら、イデアはブルブル震えて頷いた。
     その約束の日が、今日である。
     イデアはあらゆる防衛魔法とセキュリティをもってフロイドが来るのを物理的にご遠慮願おうとした。しかし相手は同じ天才肌である。イデアが頭脳と結びついた天才なら、フロイドは肉体と結びついた天才だろう。防衛魔法の類は予感という名の異質感知でことごとく回避され、セキュリティも「うぜ~」といいつつぽちぽちボタンを押せば突破される。
     怖すぎる。きっと逆向きのこうした天才肌が、設計者の想定もしていなかったようなことをしてバグを発見したりするんだろうな……とイデアは震え上がった。
     悪い事にはオルトは突然このタイミングでシステムチェックに入ってしまい、こうなると数時間は再起動しない。運命まで天才に味方する、と怯えているとやがて部屋がトントンとノックされた。
    「ひぃっ」
    「ホタルイカ先輩、遊びに来たよぉ」
     あけてぇ。声は優しいからまだマシではあったけれど、イデアは色んなホラー映画のワンシーンを思い出す羽目になっていた。意図もわからない巨大なサイコパスが、自室の扉の前にいる。開けても地獄、開けなくても地獄。イデアは天を仰いで、そっと扉を開けた。すぐにその隙間へ足がねじ込まれて悲鳴を上げる。完全にヤクザの動作だ。
    「おじゃましまあす」
    「アッあ、い、いらっしゃ、い……」
     のすのすと大股に部屋の中に入ってきたフロイドに小声で返す。脚の長いフロイドにはこの部屋が狭そうな気がした。いつも散らかっている部屋は少しだけ片付けているけれど、所詮は汚部屋一歩手前なのだから、片付けても散らかっているのだ。その感じが自分の部屋のようにでも思えたのか、フロイドはそこを気に入ったらしい。促してもいないのにベッドにどっかりと腰かけた。反動でベッドの上の物が、怯えるイデアのように飛び上がった。
    「え、えっと、お茶、お茶でも、ドウゾ……」
     カタカタと震えながらカップに紅茶を淹れて出す。アズール氏にもらったカップが有って良かった、と思っていると、フロイドは嬉しそうにカップを受け取った。
    「あは、なぁんかアズールみてぇなカップ」
    「そ、そう、アズール氏が、くれた、から……」
    「アズールがくれたの? ……へ~……」
     フロイドはしばらくそのカップをまじまじと見つめていたけれど、お茶菓子どうぞとベッドに置かれた駄菓子を見て、「あ」と思い出した。
    「そーだ。誕生日プレゼントあんの」
    「ひっ、お、おおおお構いなく……」
    「はい、コレ~」
    「……ひぇ!?」
     フロイドの懐から出されたものに、イデアは悲鳴を上げた。それは古のトレーディングカードゲームのスターターキットだった。
    「えっ、これ、マ? ウソでしょ、本物!?」
     イデアは手渡すように見せてくるソレを手に取れないまま目を白黒させている。それは発売当初人気が出ず、殆ど販売されないまま市場から消えてしまったものだ。子供向けだったこともあり、未開封や状態の良いものが現存していない。その後、当時は知られていなかったものの有名絵師がカードデザインを手掛け、またゲームバランスも絶妙に優れた名作ゲームだとわかってからはプレミアものになってしまったのだ。手にいれたくても中古でさえ市場に上がって来ないレアものである。
     それが、極めて状態のいい姿で、目の前に有る。
    「本物だ~って言ってたあ」
    「嘘だろ、こんなの手に入れようと思ったらいくら払うことになるか……ふ、フロイド氏、これ、どうやって……?!」
    「ん~? 別にぃ、なんか叩いたらもらえたぁ」
    「ヒィッ!? 暴力的なルート!?」
     そんなもの受け取れないよぉっ、と悲鳴を上げると、フロイドは笑顔を浮かべる。
    「暴力なんて振ってねぇよ? これは~、ちょーだい、って言ったら快く渡してくれた奴。ホタルイカ先輩、こーいうの好きかな~と思って、持って来たんだけど、ヤだった?」
    「や、っていうか、……え、本当に、あかんルートのものではなく……?」
    「ふつーにもらったんだってば。いらねーならいいけど」
    「い、いやいやいや、いらないわけでは」
    「じゃ、お誕生日おめでとー」
     ぎゅ、っと手の中にカードゲームを押し付けられて、イデアはドキドキしながらそれをまじまじ見つめる。信じられない。あの激レアカードゲームが手の中に有るなんて。
     フロイドの言ったことは嘘ではない。カリムに頼まれて太鼓を叩いたお礼にもらった品のいくつかが例によってとんでもないもので、それと引き換えにこれをと公正に取引して得たものだ。あちらだって他の物と交換できるのだから本当に好きだったわけではなくただのコレクションにしていたのだろう。それならこういったものを愛しているイデアの手に渡った方がよいというものだ。
     イデアの表情は最初こそ信じがたいものを見ている眼をしていたのだけれど、次第に実感が湧いてきたらしく、喜びと興奮で綻んでいった。その様を見てフロイドは上機嫌になった。
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    今日は情報収集は少し早めに切り上げて帰ってきたつもりが、日付の変わる頃になってしまった。
    別に目の前のベスティと同じ時間帯に鉢合わせるように狙ったつもりは特に無かったけれど、こういう風にタイミングがかち合うのは実は結構昔からのこと。

    「うわ、なんだかお酒くさい?」
    「……やっぱり解る?目の前で女の子達が喧嘩しちゃって……。」
    「それでお酒ひっかけられちゃったの?災難だったネ〜。」

    本当に。迷惑だよね、なんて心底面倒そうに言う男は、実は自分がそのもっともな元凶になる行動や発言をしてしまっているというのに気づいてるのかいないのか。気怠げな風でいて、いつ見ても端正なその容姿と思わせぶりな態度はいつだって人を惹きつけてしまう。
    どうも、愚痴のようにこぼされる 2767