両思いとわかるまで7年にわたる片思いが終わった。
俺の恋の相手はNBA選手としてアメリカで活躍している流川だ。
何故この恋が終わったのかと言うと、流川が出ていたアメリカの番組で好きな人がいると発言していたからだ。もちろん俺は英語は全く分からないから日本の流川ファンが翻訳したものをみた。
その番組では毎週ゲストを呼んでのトークがメインみたいだった。いつも通り口数が少ないがMCが上手く流れるように会話が進んでいく。
そんな流川をみながら変わらねーなと頬を緩めたのもつかの間MCは「楓はパートナーや好きな人はいないの?」と俺にとってはかなり冷や汗の出る質問をした。MCの問にゆっくりと流川の薄い唇が動いた。「好きな人はいる」と。
その言葉を聞いた瞬間心ってここにあるのかと分かるぐらい胸が締め付けられた。俺の気持ちとは別に画面から目が離せず会話は進んでいく。「どんな人かきいてもいいかな?」「綺麗で芯があって尊敬してる人」あの流川が少し口角を上げながらそう答えた。そこから先はみていない、と言うかみれなかった。
それが2週間前の話だ。
そして昨日から流川が俺の家に泊まっている。
話が飛んだように思うだろうが1ヶ月前から決まっていたことだ。
流川とはたまに連絡をとっている。日本に帰った時は必ず会うくらいには良好な仲だ。今回帰ることも事前にきいていた。
話しているとどうも実家には産後の姉が帰っているらしくホテルに泊まる予定だと言っていたため、金もかかるし2週間くらい俺の家に泊まれよと言った。
正直下心もりもりだ。その時は流川と2週間も同じ家で過ごせるなんてラッキーとテンションが上がっていた。
だが流川に好きな人がいて失恋を自覚した今、同じ屋根下にいるのはかなりきついものがある。あの番組を見てから考えまいと仕事三昧で流川が帰る日まで過ごしていたが、本人を前にするとどうしてもあの時の愛おしそうに話す流川の顔が思い浮かぶ。まだ1日しか経っていないのに心はどっと疲れている。そして流川は今日、日本での仕事があるらしく明日の朝にしか帰らないと言っていた。幸い明日は俺も仕事が休みだ。
気分を帰るためにもお酒を飲んでずっと大切に育ててきたこの思いお別れして、今日は楽しい気持ちになって寝よう!ダメな大人の代表みたいになるけど仕方ない。
1人飲みを始めて3時間はたっただろうか元々お酒は強くなく普段からアルコールは避けている。飲み始めてかなり泣いた。今は目の前の空いた空き缶が何本あるのかすら数えられないくらい頭がふわふわしている。
「るかわの、ばーかぁ」
「誰が馬鹿なの」
声のする方をみると流川がみえる。今日は帰らないって言ってなかったか?
「何この量の空き缶。一人で飲んだの?」
俺の横で机の上を見ている。流川?居るはずがないのになんで?俺の幻想?それとも夢なのか?隣に立つ流川の腰に手を回す。
「うわっ。な、何?」
触れてる。着痩せするタイプだけどしっかりと筋肉がついている。想像通りだ。想像通りと言うか俺の夢だから当たり前か。
「るかわ〜」
目の前のお腹に頭を埋める。ずっと触れてみたかった。1度でもいいから抱きしめて欲しかった。流川の手を取りほっぺたに当てる。
「んっ。お前の手冷たくてきもちいい」
「っっ。センパイ、かなり酔ってるでしょ。目真っ赤だし。水持ってくるから離して」
「やだ」
離れそうな流川の服を必死に掴む。夢の中くらい好きにさせて欲しい。どうせ叶わない恋なんだ。
「センパイ、酔うといつも他の人の前でもこうなの?飲み会参加禁止ね」
ボソボソと何か言っているけど俺の耳には理解ができない。流川を引っ張って向かい合うように強制的に座らせた。顔が少し赤い気がする。暑いのか外で飲んできたのか?俺の夢なのにリアルだな。不思議そうな顔でみつめられている。それが面白くて笑ってしまう。見つめ合ってるだけでさっきまでの心の締め付けが無くなって温かくなる。
この綺麗な薄い唇にキスしたいな。夢だし許されるよな。チュッと触れるだけのキスをした。恥ずかしくて目を瞑る。うわー!夢とは言えしてしまった。恥ずかしい。もう目が覚めても流川の顔を合わせられないな。俺が慌てているとチュッとさっきと同じ暖かくて柔らかい物が当たる。びっくりして目を開けた。
「え?」
「センパイからしてきたことだから」
そう言い流川はまた顔を近ずける。
「まっ、んぁ、・・・、ぁ、やッ」
口の中に舌が入ってくる。頭の後ろを抑えられ逃げられないようにされている。息が苦しい。顔が離れる。
「はぁ、はぁ、くるッ、しぃ」
夢なのにとてもリアルだ。
顔を向けると再びキスされる。
「ゃあ、ッん、・・・ッ、あぁ」
気持ちいい。ふわふわとした頭が酸欠で更に何も考えられる無くなる。切れ長な目がギラギラと獲物を狙っうように俺をみつめている。
俺の着ていたシャツを上げ胸や腹にチクッとする感覚のキスをされる。
「明日目が覚めたら忘れてそうだから。不誠実なのは嫌だから。明日またちゃんと言うけど、ずっと前からセンパイの事が好きだった。付き合って」
ふわふわした頭では何を言われているのか理解が出来ない。俺のことが好き?笑いが出る。なんて都合のいい夢なんだろうか。
「おれも、るかわのことがすき」
次の日ズキズキと頭の痛さで目が覚めた。ベッドの隣には流川が寝ている。痛む頭で昨日のことを考えた。一人で飲んでなんでベッドにいるんだ?流川が連れてきてくれたのか?風呂も入らず寝てしまったのか。シャワーを浴びようと風呂場に向かった俺が見たのは身体中につく無数の赤い跡。
待て待て待て昨日のってまさか夢じゃない?
風呂場で大声を上げた俺を心配して流川がみにくるまで数秒。
両思いとわかるまで後数分。