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    pino

    @pipipi729729
    五夏

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    pino

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    傑お誕生日お祝い小説【後編】
    生存if/教師×教師
    高専の生徒たちみんなでお祝いするよ!
    付箋のメッセージから始まる謎解き風のサプライズ!傑は辿り付けるかな??

    傑お誕生日お祝い小説【完結】さて、女子生徒につるんと身包みを剥がされた私はその30分後、ピカピカのタキシードに身を包み、髪をサイドで緩くお団子に纏められていた。長年ロングヘアスタイルでいるが、こんな風にアレンジされたのは生まれて初めてだ。

    「流石あたし。完璧ね。」

    ふう、と満足気に息を吐いた野薔薇がスマホのカメラを向け、パシャリと1枚撮る。

    「夏油せんせ、肌綺麗だし化粧映えしそうなツラよね。五条先生までいくとやる気が失せるけど。今度やらせてくんない?」
    「え、遠慮しておくよ。」

    えーっと野薔薇が不満気な顔をしていると、足元にふと彼女とは別の呪力を感じた。
    (あぁ、また来たな。)
    次から次へと忙しいものだと、思わず苦笑する。こんなにたくさんの生徒を巻き込んでしまって、嬉しいやら申し訳ないやら、後で企画者であろう悟にひとこと言ってやりたい気持ちだ。

    「伏黒。出ておいで。」

    呼び掛けると、床に大きくて深い闇が出現した。闇はまるで水面のように波打ってとぷんと揺れる。伏黒の影だ。

    「っす。」
    「来たわね!あとは任せた、わ……?」
    「……ん?」

    影の中からにゅっと顔を出したのは確かに伏黒だった。伏黒だったが、出てきたのは見慣れたウニのようなツンツン頭ではなく、ピンク色をしたウサギの着ぐるみだった。遊園地などで良く見かけるアレだ。しかもちょっと怖いタイプのアレだ。

    「ぶは!なにその格好!可愛いじゃない!」
    「…あの人に無理やり。」

    その一言で全てを察した。
    何だかんだで素直なところがある伏黒は唯我独尊天上天下のアホ教師に逆らえなかったのだろう。ご愁傷様だ。

    「とりあえず、ついて来て下さい。」

    ピンクウサギ姿の伏黒に案内されて外に出ると、高専の車が停車していた。なるほど、次は車で移動するらしい。伏黒がふかふかの着ぐるみの手でドアを開け、エスコートするように私を後部座席へ促した。続いて伏黒も乗り込もうとするが、もこもこと着膨れた姿で中に入るのに苦戦している。

    「大丈夫ですか?ふしぐ、ウサギさん。」

    運転席席から心配気に顔を出すのは…茶色いクマの着ぐるみを着た伊地知だった。あまりにもシュールな光景に思わずぶふっと吹き出す。

    「いじ、クマさん。大丈夫なので出して下さい。シートベルトはまあ…なんとかします。早くしないとどやされますよ。」

    あの人、本当めんどくさいんで。と伏黒がうんざりしたように言う。どうでもいいが、全く意味のない変装と不思議な設定は守らなければいけないらしい。
    数時間前、伊地知が私に任務の中止と帰宅を促したのはこの為だったのか。合点がいった。どうやら伊地知も悟の思いつきに巻き込まれてしまったらしい。

    「二人とも、すまないね。忙しいだろうにこんなお遊びに付き合わせてしまって。」

    自分の誕生日なんて大したものではない。生きていれば、どうせこの先何度も訪れる。たとえ訪れなくても、それでもそこまで価値のある日に思えない。優しい彼らが悟の我儘を聞いてやっているのだろうと思うと何だか申し訳なかった。
    後部座席で肩を竦めると、伏黒と伊地知が着ぐるみ姿のまま揃ってグルリとこちらを見たので思わずびくっとしてしまう。伊地知は運転中なので前を向いて欲しい。

    「な、なんだい?」
    「すみません、そういうつもりで言ったんじゃないです。」
    「そう?気を遣わせてごめんね?」
    「いや、本当に……。これ、言い出しっぺは五条先生じゃないですよ。あの人、放っておくと夏油先生独り占めしちゃうんで。」

    その言葉にきょとんとした。それって、つまりどういうことだろうか。
    これ以上突っ込むのは野暮な気がして、そわそわと窓の外を見る。あまり深く考えると顔がにやけてしまいそうだ。私はじわじわと熱くなる耳を誤魔化すように擦った。

    「着きました。」

    伏黒の声に顔を上げる。
    車で通り過ぎてゆく見慣れた景色に途中から分かっていたことだが、色んなメッセージやヒントを得て漸く辿り着いた先は、十数年見慣れた呪術高専の校舎だった。

    車から降りると、二人の少女が校門の前で迎えるように立っていた。彼女たちは、昔とある村で迫害を受けていたところを偶然見つけて保護した双子、美々子と奈々子だ。今は児童養護施設で生活をし、高専生として私が直接指導している可愛い生徒である。二人は私によく懐いてくれていた。

    「夏油様!」
    「夏油様!」

    美々子と奈々子が笑顔で駆けて来て、こちらも思わず笑みが溢れる。

    「夏油様、これを受け取って欲しいの。」
    「夏油様、これも頭にのせて。」

    美々子が差し出したのは1本の白い薔薇、奈々子が差し出したのは花冠だった。

    「これは…随分と可愛らしいね。どうもありがとう。」

    成人男性に花冠は似合わないのではないかと思ったが、せっかく二人が私のために用意してくれたものだ。妙に照れ臭い気持ちになりながら微笑んだ。

    「夏油様、こっち!」

    二人に片方ずつ手を引かれて校舎の中へ入る。
    そのまま1年生のクラスがある2階へと案内され、階段をのぼり廊下へ出たところでパチリと目を瞬いた。

    「……え?!」

    目に飛び込んできた光景にぽかんと口を開ける。
    見慣れた筈の古びた木造校舎の廊下は白や水色のパステルカラーの風船で溢れていて、まるで別世界のようだった。廊下と教室を隔てる壁と窓には白い布が被せてあり、教室内が見えないようになっている。また天井からはお洒落で可愛らしいガーランドがいくつも掛かっていた。そしてその廊下にずらりと並んでいるのは、私をここまで導いた真希、乙骨、パンダ、悠仁、野薔薇、伏黒、伊地知だ。驚くことに、奥には灰原に七海、硝子、夜蛾までいる。

    「え、みんな、どうしてここに?」

    困惑してその場から動けずにいると、真希やパンダから声が掛かった。

    「傑!いいからこっち来いよ。みんな待ってんぞ!」
    「傑〜。主役が来ないと始まらないぞ〜。」

    よく見ると、みんな頭にパーティー用の三角帽子を被っている。伊地知と伏黒は首から下が着ぐるみのままだ。

    「夏油様、みんなが待っている方に歩いて行って下さい。」

    美々子から声が掛かる。奈々子はその隣でうんうんと頷いていた。みんながいる方へ進めばいいのだろうか。私は胸がドキドキと高鳴るのを抑え、口許をむずむずとさせながらゆっくりと前へ踏み出した。
    その時だった。
    パンッ!パンッ!とクラッカーが弾ける賑やかな破裂音とともに、カラフルな紙テープや紙吹雪が舞う。

    「「夏油先生、お誕生日おめでとう〜!!」」

    祝福の言葉とともに、みんなが温かい笑顔で私を迎えてくれている。キラキラと輝く生徒たちの顔は、私にあの日の青春の輝きを呼び戻してくれるようだった。まるで学生の頃に戻ったような高揚感に、胸がきゅうと熱くなった。

    「みんな……、ありがとう。」

    あまりの嬉しさに言葉が詰まってしまって、それ以上に何と口にしたら良いのか分からなくなってしまった。

    「しゃけ。」

    パシャリ。というシャッター音とともに突然背後から現れたのは棘だった。そういえば、今日はまだ姿を見ていなかったことに気付く。

    「ツナマヨ、昆布!」

    私のことを指差し、次に棘自身がピースをして見せる。写真を撮るからピースしろ、ということらしい。素直に従うと、立派な一眼レフを構えた棘がフラッシュとともに数枚シャッターを切った。

    「棘くんは、みんなが夏油さんを迎えに行っている間に装飾を頑張ってくれていたんですよ。」
    「しゃけ!」

    伊地知が横から補足する。
    なんと、この可愛らしい装飾は女子たちではなく棘のセンスだったらしい。驚いて棘を見るとカメラを持ち上げて満足そうに笑った。
    改めて飾り付けられた廊下を見ると、私と悟の学生時代の写真が至る所に貼り付けられていることに気付き目を見開いた。硝子と悟の三人で撮ったものや、夜蛾と写っている写真、最近生徒たちと撮った入学式の写真などもあった。

    「すごい……。」
    「あのさ、夏油先生。喜んでくれてんの、マジですっげー嬉しいんだけどさ……。」
    「大事な存在、忘れてるわよ。拗ねたら面倒なんだから、とりあえず前に進みなさいよ!」

    悠仁と野薔薇に促されてハッとする。すっかり頭の中から抜け落ちていた。
    まだまだこの空間に浸っていたいが、みんなが並ぶ廊下を少しずつ進む。すると、真希や乙骨、パンダが「おめでとう」と声を掛けて白い薔薇を1本ずつこちらに差し出した。次いで、虎杖、野薔薇、伏黒も「いつもありがとう」「頼りにしています」と口々に述べて白い薔薇を手渡す。廊下を進むたびに一人ずつから薔薇の花を受け取って、少しずつ花束になっていく。教室の入り口近くには硝子、灰原、七海が立っていた。

    「夏油、五条の手綱をしっかり引けよ。」
    「夏油さんっ!これからもよろしくお願いします!」
    「あまり、無茶はしないで下さい。」

    旧知の三人に声を掛けてもらい、遠い昔のいつかの日にもこうしてみんなにお祝いして貰ったことを思い出す。確かあの時も学校でお祝いをして貰ったのではなかったか。朧げだった記憶が少しずつ鮮明に思い出されて、自分にも誇らしく輝かしい学生時代があったことに気付かされた。

    「傑。」
    「夜蛾学長。」

    廊下に並ぶ最後のひとり。教室の前に立っていたのは夜蛾だった。いつからかトレードマークになったサングラスも、今は外されている。

    「誕生日おめでとう。立派になったな。」
    「ありがとうございます。」
    「お前はみんなに愛されている。くれぐれも忘れないで欲しい。」
    「……はい。」

    夜蛾から渡された白い薔薇を大切に受け取る。手の中で、14本分の薔薇の重みを感じた。

    「さぁ、教室に進め。お待ちかねだぞ。」

    扉の向こう側に誰がいるかなんて、一目瞭然だ。先ほどからずっと愛しい気配を感じている。
    ゆっくりと引き戸を開け中に入る。意外にも、教室の中に廊下のような賑やかな装飾はなかった。ただ黒板に赤や白、黄色のチョークで『傑、誕生日おめでとう』と悟の字で書かれた文字を見て、過去の光景がフラッシュバックする。
    悟や硝子はせっせと教室を飾り付けるような、そんな柄ではない。そうだ。あの日だって、黒板に悟の殴り書きのメッセージがあるだけの、実にシンプルなものだった。

    「悟。」

    愛しい恋人の名を呼ぶ。
    悟は私と同じように黒いタキシードに身を包み、窓際の席に座って頬杖を付いていた。古びた教室に、正装の彼はひどく不釣り合いだった。
    ──あの席は学生時代の悟の席だ。
    悟に倣い、私も隣の席の椅子を引いて、かつての自分の席へと座る。

    「ふふ、この席に並んで座るの懐かしいね。」
    「うん。」
    「悟が企画してくれたの?」
    「……本当は二人っきりでやろうと思ったけど、双子と野薔薇がみんなでやろうって言うから。」
    「そうだったんだ。」

    そうか、あのこたちが。
    心が温かい気持ちになり、ほくほくと微笑む。
    いつの間にか教室には西日が差し込みはじめ、少しずつ影を濃くしていた。悟の白い髪がうっすらと赤く染まる。
    悟はじっと前を向いたまま口を開いた。

    「傑と、この教室で初めて出会ってさ。たくさん喧嘩して、一緒に悪いことして、馬鹿なことも数え切れないほどして。」

    ぽつりぽつりと悟が語りはじめる。
    私はそれを隣で黙って聞いていた。

    「最初は友だちなんてつくっても意味ないって思ってた。くだらないって。……でも違った。」

    楽しかったんだよね、すごく。
    悟が懐かしむように目を細めるのを見て、なんだか少し切なくなった。悟の横顔は大人びていて、「守る側」の人間なのだと思わされる。呪術師として、五条家の当主として、そして教育者として。たくさんの責任を背負った大人の顔がそこにはあった。

    「好きだな。」

    それは、無意識のうちに自分の口から溢れた言葉だった。悟がびっくりしたような顔でこちらを見る。次いで、ぶはっと破損した。

    「ちょっと。先に言わないでよ傑。いま大事なところなんだから。」

    文句を言いながらもその顔は酷く幸せそうで、私を見詰める美しいアーモンドアイは蜂蜜を溶かしたように甘い。直視してしまって、胸焼けしそうだ。

    「傑、机の中見てみて。」

    言われて机の中に手を突っ込んでみると、何か固い物に指先が触れた。どうやら掌サイズらしいそれを掴んで取り出す。
    現れたのは、艶やかな光沢を放つ青いリボンに包まれた白いリングケースだった。

    もしかして、もしかしなくても。

    「……あけても、いいの?」
    「もちろん。」

    リボンを解いてしまうのがもったいなくて、手の上の箱をじっと見つめる。すると横から悟の手が伸びてきて、するすると紐を解いてしまった。悟の白く長く、少し骨張った綺麗な指先がリングケースの箱を開けると、一粒のダイヤモンドが輝くシルバーリングが現れる。

    「僕はこの先ずっと、一生、死んでも死んだあとも生まれ変わっても、ずっと傑と一緒にいたい。」

    煌めくダイヤモンドの向こう側には、どんな宝石よりも美しい、大好きな青い瞳がきらきらと光っている。吸い込まれそうな色彩に息を吸うことすら忘れそうだ。

    「僕と、結婚して下さい。」

    悟の真剣な表情とぶつかり、はっと息をのむ。
    君の隣は私がいいと、ずっと願ってきた。一生、二人で最強でいたいと、そればかり考えてひたすらに走り抜けてきた。

    ──だけど、本当に、私でいいのだろうか。

    ほんの一瞬。不安が頭をよぎり言葉に詰まってしまった私に、悟の瞳が揺れる。
    その時だった。

    「ちょっと、押さないでよ!見えないでしょ!」
    「ごめん野薔薇!」
    「おかか!おかか!」
    「しーっ!お前ら、聞こえんぞ。悟の一世一代の大勝負なんだからな!」
    「み、みなさん、お邪魔しちゃいますから。扉から少し離れて下さい!」

    外から漏れ聞こえてきた声に、私と悟の動きがピタリと静止する。見られている。めっちゃ見られている。
    悟がはーっとため息をついて、ガシガシと頭をかき回した。

    「ちょっと外野ぁ!うるさいんですけどぉ?!」

    悟が叫んで人差し指をぴっと弾くと、スパン!と教室の扉が開いた。その瞬間に、どどどどっと雪崩れ込むように生徒たちが倒れ込む。その中には子どもたちに混じって硝子や灰原の姿もあった。

    「……硝子たちまで何やってんの。」
    「こんな、この先一生ネタに出来るようなことも早々ないだろう。」

    硝子が1ミリも悪びれずにケロリと宣う。灰原は元気に「あの五条さんが何て言って夏油さんにプロポーズするのか気になりました!」と答えている。その背後で七海は額に手を当てて溜息をついていた。

    「おーまーえーらー!あとでマジビンタ!絶対!」

    青筋を立てて喚く悟に、「私たちはまだ認めてないからな五条悟!!」と美々子と奈々子まで入ってきて、一気にその場が騒がしくなる。先ほどまでの真剣なムードはものの見事に霧散しカオス状態だ。
    わーわーと揉める悟と生徒たちを見て、私はついに耐えられなくなった。

    「あは、あはははは!」

    突然響いた私の笑い声に、その場にいた全員が驚いたようにこちらを振り向く。

    「ご、ごめん夏油先生!俺たち、こんな邪魔するつもりじゃなかったんだけど……っ!」

    悠仁が慌ててように手をぶんぶんと振った。伊地知は顔を真っ青にして震えている。野次馬根性丸出しで扉の最前線を陣取っていた野薔薇たちも、気まずげな表現を浮かべていた。悟に至ってはプロポーズに失敗したと思ってか、あからさまに悄気た顔をして全身から悲しみのオーラを出している。
    そんな素直な彼らを見て、またくすくすと笑った。

    「ふふ、ごめん。いや、いいんだ。なんというか、むしろ吹っ切れたよ。」

    悟も、生徒たちに愛されているな。
    大好きな人たちが笑い合う姿を見て、こんな風に穏やかで平和な日常がこの先ずっと続けば良いと思った。そして。
    (やっぱり、君の隣は私じゃなきゃ嫌だって思ったよ。)
    もう、手放してなどやるものか。

    「ありがとう、みんな。こんなに幸せな誕生日を迎えたのは生まれて初めてだよ。」

    幸せで、幸せで、どうにかなってしまいそうなくらい。
    いまの私はきっとへんな表情をしているに違いない。泣きたいような、叫びたいような気持ちを抑え込むために顔に変な力が入ってるし、目尻が下がって、頬もゆるゆるに緩みきっている。

    「すぐる…!」

    悟が感極まったように私に勢い良く抱きついてきた。巨体がぶつかる衝撃に何とか耐えると、ぽんぽんとその背中を撫でる。

    「もう、もう……!なにお前、可愛いすぎるんですけど……っ!」

    うりうりと首筋に額を擦り付ける悟が愛おしくて、ふわふわの白い髪の毛にそっとキスを落とした。

    「おい傑!珍しく浮かれてんじゃん!」

    真希に指摘されて慌てて悟を引き剥がした。突然べりっと離された悟は不満そうだ。

    「ひゅーひゅー!お熱いねぇ!ご婚約、おめでとうございまーす!」
    「しゃけ!高菜!」

    2年たちが囃し立てる。

    「はぁー?ちょっと待って、お前らのせいでまだ」
    「みんな、ありがとう。私たち結婚するよ。」

    悟の文句を遮って伝えたその言葉に。
    わあっ!と灰原や生徒たちが拍手し、夜蛾が袖で涙を拭った。硝子、七海もやれやれといった表情でこちらを見ているが、その目は温かい。そして悟はといえば、目を見開きポカンと口をあけて呆然とした顔をしていた。

    「く、ふふ…!悟、イケメンが台無しだよ。」

    わなわなと震え出した悟の目には涙が浮かんでいる。

    「泣くなよ先生!」
    「悟―!しっかりしろー!」
    「う、うるさい!もう!君たち気を利かせて傑と二人っきりにしてくんない?!」

    悟が吠え、みんなは楽しそうに笑っている。
    その後は伊地知が用意してくれていたケーキをみんなで食べ、ロウソクを吹き消し、それぞれが用意してくれたプレゼントを開けて存分に誕生日を楽しんだ。この歳になって、こんなにも心躍る誕生日が来るなんて夢にも思わなかった。

    いつの間にかとっぷりと日が暮れ、生徒たちは寮に帰した。残った大人たちは後片付けである。伊地知は主役に手伝わせるわけにはいかないと言っていたが、こんなに沢山のものを貰ってしまったのだ。片付けぐらいしないと私の気が済まなかった。
    悟と並んで風船を撤去していると、悟がやや落ち込んだ様子で言った。

    「僕、もっと格好良くプロポーズしたかったのに。」
    「そう?十分格好良かったよ。」
    「……それに、もっとちゃんと、返事貰いたかった。」

    その言葉にぱちりと目を瞬く。
    悟は私から目を逸らし唇を尖らせていた。
    そうか、それでずっと拗ねていたのだ。私は目の前の恋人が心底愛おしくて、くすっと笑った。
    そして、するりと悟の腕に自信の腕を絡め、内緒話をするようにそっと形の良い耳に唇を寄せる。

    「ねぇ、悟。」
    「なに。」
    「私たちの家に帰って、二人きりになったら──」


    ベッドの上で、プロポーズの続きをしよう。




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