晩夏の熱「ね、獪岳、こんなの見つけたんだけど」
夏の暮れ、もう少しで学校が始まるということでぐっちゃぐちゃのままの部屋の掃除をしろと命じて1時間したくらいに、部屋からひょっこり顔を出した善逸がリビングで本を読む俺に何か話しかけてきた。
くだらないものだったら殺すぞ、と脅せばあーヤダヤダすぐそんなこと言うんだからなんて軽口を叩いて、ぱさりと手に持っているものを目の前の机に置いた。
それは袋の印刷もブレブレの、小さな古い家庭用花火セット。昔行った夏祭りの景品で貰ったものが今更出てきたらしい。
花火を一瞥し、その隣にニヤニヤと仁王立ちする善逸の顔を見れば、このカスの言いたいことは嫌でもわかる。
「...........掃除、俺が納得出来るくらい綺麗に出来たらな。」
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