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    だんり

    獪善沼

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    だんり

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    お団子現パロ獪善🍡

    皆既月食とある日の午後6時頃。学校から帰宅している途中、秋が近付き暗がりかけている空の地平線の近くに、俺はぽっかりと浮いた大きな真円を見つけた。
    夕陽に照らされているせいか、どこか赤くて幻想的なそれに俺は心浮き立って、体をくるりと翻して歩いてきた道を引き返し、お気に入りの和菓子屋さんに急いだ。



    「...で、突然こんなもんを用意した訳か」

    深夜、縁側でこっそりお月見デートでもしないかとお誘いをした俺は、溜息をつきながらも来てくれた獪岳の前に、用意しておいたお団子を並べた。

    「ひひ、たまにはこういう趣のあるものも良いでしょ、甘いもの我慢してる爺ちゃんには内緒ね」
    「お前が趣を語るのかよ」

    しーっと指を口に当てて笑うと、獪岳は外にぶらぶらと脚を放り出して座る俺の隣にドカッと胡座をかく。良かった、機嫌は悪くないみたいだ。

    「はい、どーぞ。いつもの店のだから美味しいよ」

    俺が用意したのは4つの真ん丸な餅が一纏めに串に刺さった定番のみたらし団子。定番といえどこの店こだわりの甘めのタレが好きで、昔からお小遣いが貯まる度に1本だけ、1本だけ、とよく買い食いをしていた。

    獪岳が受け取ったのを確認して、自分の分の1つ目を口に含む。口を閉じていてももっちゅもっちゅと音が聞こえてしまうくらいに弾力があって、やはり美味しい。



    ...そんな善逸の様子を見て、リスみてぇだなと思った。たったひとつしか口に含んでいないのに、まるまると頬を膨らせて必死に餅を噛む姿はさながら赤ん坊の横顔のようだ。もうすぐ成人する生意気な男子高校生に何を思ってるのかと正気になりかけたが、団子の美味さとこの雰囲気に呑まれる事で持ち堪えた。

    「あっ!獪岳見て、凄い!今日って皆既月食だったの!!?」

    突然空を見上げてわっと驚く善逸を見て嘲笑う。前々からニュースで何度も流れていたのに、こいつそれも知らずに誘っていたのか。ただ月が綺麗で団子を食べたいからデートをしよう、と。なんと馬鹿らしい事か。

    それなのに、気付けば月や団子なんかより善逸ばかりを見てしまっていた。一際大きい月の光にぼんやりと薄く照らされた金糸の髪は、どうしてかいつもより眩しく見えて。
    だから、隠してやろうと思ったんだ。

    「わーー!!もう半分以上消えちゃってるよ、ほら見て、かいが、く.........」

    持っていた団子置いて、都合良くこちらを向いた善逸に唇を重ねる。唇やその端に残った蜜が甘くて美味しくて、何度も何度も角度を変えて食べてやった。

    満足して口を離せば、善逸はぷはっ、と音を立てて呼吸をする。どこか恨めしそうな顔をしているが、ストロベリームーンと呼ばれている今日の月に負けじと赤く染った頬にはなんの説得力も無い。

    「皆既月食、終わっちゃったじゃん」
    「...また次見ればいいだろ」
    「それ、って、」

    まぁ、次の周期くらいまでは離れないでいてやるよ。
    敢えて耳元に近付いてそう答えてやれば、善逸はどこもかしこも真っ赤にして、にへっと顔を崩して笑った。


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