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    jupi420gab

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    jupi420gab

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    ※中の人
    ※ちまたでうわさの探偵&助手さんのお話です。
    ※パスワードは英字3つ

    爪を切った助手さんと、同じく爪を切ってた探偵さんの話。
    直接的なシーンはないですが、一応R18

    爪痕(探偵事務所パロ) 同居するようになってから数か月。
     当初はアパートが見つかるまでの、短い期間だけのつもりだった。
     長居する気はまったくなかったのだが、いつの間にか二人での生活に慣れてしまった。相変わらず〝彼〟は明るくて奔放、いついかなるときも目を輝かせては愛を語って聞かせようとする。
     それを上手くあしらえることも増えてきたし、彼の言葉を「まあいいか」と受け止める余裕も多少は増えた。恥も外聞もなく〝好き〟を伝えられまくることに辟易しないではないし、勝率でいえば彼のほうが勝っているのだが。
     同棲生活なんて窮屈だろうと思っていた。しかも彼の家で、なんて。
     でも、意外なことに今の暮らしはそう悪くなかった。彼と一緒にいると、笑ったり怒ったりすることが格段に増えた。感情がめまぐるしく動き、疲れるし、ひどく苦しくなることもある。
     でも、これが自分には欠けていたのだ、と思うくらい毎日が楽しい。心地よく手たまらない。彼といっしょじゃない暮らしなんて、もう考えられないくらいに。

    「あれ、爪切ったの?」
    「ああ、昨日の夜に。……ちょっと、なんだよ。離せ」
     朝の忙しい時間に構っている暇はない。そう言って振りほどいた手を有無を言わせず握られる。
     軽く握っているように見えるのに、どこに力を入れているのかと言いたくなるほど強い。腕を引いてもびくともしないし、無理強いすればますますむきになるのは分かっている。ここは好きにさせるのが得策だというのを、この数か月――いや、知り合ってからの経験で理解していた。
    「ふうん、なるほど」
    「もういいだろ。離してくれ」
    「もうちょっとだけ。ねえ、これ、僕のため? だよね?」
    「何のこと言ってるのか全然わからない」
     本気でそう答えると「ほら」と彼の両手を見せつけられた。
     見ると、彼の爪もきれいに切りそろえられている。少し前に見たときより短くなっていて、切ったばかりなのに丸く整えられているのは、やすりをかけたからだろう。意外に丁寧にしているのだなと思っていると、彼が笑う気配がした。
    「ね、同じだろ。きみがそれほど僕のことを考えてくれていたとはね」
    「だから、なんのことだ?」
    「え? 傷がつかないように切ってくれたんじゃないの? ほら、きみがおととい残した爪痕、まだ残ってるんだよ」
    「脱がなくていいって! あ、……」
     おもむろにシャツを脱いだ彼に背中を見せつけられて、ぐっと口をつぐむ。鍛えられた肉体に残った悲惨な爪痕は、自分がつけてしまったものだ。両脇から強くえぐられた数本の傷はまだ薄赤く、痛々しい。
    「シャワー浴びるときまだ痛むんだよね。シャツも擦れて痛いし。ほんとに覚えてない?」
    「そ、それは……覚えてる、けど。その、謝っただろう。だいたいそんなことになったのは僕だけのせいじゃないし……」
    「うんうん、僕のせいだねえ。僕と熱い夜を過ごして、セッ」
    「うるさい!」
     思わず口を押さえつけると、くぐもった声で名前を呼ばれた。口元を押さえつけられているというのに、彼は嬉しそうに目を細めて笑っている。
     ――まただ。また、引っかかってしまった。
     職場の上司、同僚、腐れ縁の友人。さまざまな呼び方ができるが、この男に煽られ、誘われ、どうしてか抗えずにベッドを共にするようになって随分経った。
     ただの性欲発散と呼ぶには心地よいし、無理強いされているとも言いたくない。かといって自らこの関係を楽しんでいると認めてしまえるほどは、まだ気持ちは追いついていない。
     セックスをしているときだけは、この感情が何なのか考えないで済んだ。痺れるほどの快感に呻き、盛大に声をあげて肉欲に走る。ここ数年は付き合う相手も、一夜だけの相手もおらず、自慰だけで済ましていたこともあって、あっという間に溺れてしまった――溺れさせられたのだ。口説いてきたのも、誘ったのも、「しよう」と甘くキスをしてきたのも、自分じゃない。
     だから、背中に爪痕を立てたくらい、なんだっていうのだ。そのために爪を切ったわけでは――断じてない。
    「えー、じゃあ偶然? そうかあ、僕と同じだと思ったのになあ」
    「同じってなんだよ」
    「そりゃあ、爪が長いといろいろ大変だろう、きみが。整えるのはマナーみたいなものだと思ってね。きみのことはどこもかしこも傷つけたくない。心はもちろん、体も大切だよ。外側も、もちろん熱くて柔らかい内側も……」
    「あのな……!」
    「うん、なに? 何か思い出した?」
     次に何を言われるのか目を輝かせている彼に、振り上げた拳を下ろすしかなかった。むきになって感情を爆発させたところで受け流されるか、さらに煽られて恥ずかしい思いをさせられるだけだ。
     手を引きはがすと鞄をつかんで玄関へ向かう。
    「もう、いい。僕は先に行くから」
    「えー、いっしょに行こうよ」
    「裸のくせに何言ってる。一緒になんて誰が行くもんか。ぜったいに、い や だ !」
     子どもじみた返し方をしながら、扉をバタンと閉めた。
     少し待ってみたが追いかけてくる足音は聞こえない。それをどこか、さびしい、と思いながら――思ってしまったバカらしさに首を振る。
     ほだされるのも、ほどほどにしないと。

     爪を切ったのは、罪悪感からだ。
     おとといの夜。彼とのセックスは今までにないくらい気持ちよかった。よすぎて、どこかにつかまりたくて、でも離してもらえなくて仕方なく背中にしがみついた。彼の背中に爪を立てて、彼が顔をしかめると、どうしてか嬉しかった。いつも自分ばかりが声をあげさせられ、快感に溺れさせられ、少々痛い思いばかりしているから。でも、あのときばかりは彼から反応を引き出せた。
    「痛いよ」と笑う汗に濡れた彼の顔。あの表情を引き出せたのは自分だと思うと楽しかったし、痕跡をこれでもかと残したことも満足感を覚えた。
     とはいえ終わったあとは悪かったと反省したのだ。しなやかで美しい背中に傷が残る――それ自体はいい。でも、やっぱりよくなかったと、そう思ったのだ。
     だから爪を切った。もう傷つけない。その代わり、もっと別の方法で彼から表情を引き出してみせる、と。
    「――なにが、同じなんだよ。いつもいつも……」
     丸く整えられた彼の爪を思い出した瞬間、顔が赤くなる。
     あの大きな手が下半身に伸び、長い指が入り込む――抜き差しされるときの音までが思い返されてしまったから。いつも気遣ってくれるから痛みはほとんどない。でも、太く長い指が入り込む瞬間の違和感と、それに伴う圧倒的な期待感は格別だ。想像するだけで腰が疼いてしまう
     事務所に着くまでに、何とかしないと。それに、どうせいくらもしない内に彼が追いかけてくるに違いない。赤くなった顔を見られて、また何か言われるのはごめんだ。
     その会話をきっと楽しんでしまう自分を、予想できてしまうから。
    「ああ、もう。ほんと、なんでこうなったんだ?」
     答えはわかりきっている。でも、わからないふりをしていたい。少なくとも今だけは。彼が――「待ってよ」と追いかけてくるまでは。
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